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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第五章 もうゲームとは別物です。

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過去ー2

「あの頃、数人が罹患したのでその者達は十分な賃金を持たせ実家に帰らせました。公爵家で看取るわけには参りません。病が蔓延る可能性を考慮しての止む無き処置でございました。先代当主様のご指示でした」

当時を思い出したのか、じいやは心痛な表情だ。


罹患した者は殆ど命を落としたと聞く。その中で瀕死のカレンシアは助かったのだ。奇跡が起こったと天に感謝したのをアドルフは思い出していた。



ジオルドは、これがエリックの動機ではないかと訝しんだ。であるならば、エリックの育ての母親が公爵家に仕え罹患した。そう考えると彼が恨む気持ちも分かる。主家の奥方は助かったのに自分の母親は助からなかった。どう考えても逆恨みな気もするが、大切な人を失くした失望感、寂寥感は埋められなかったのだろう。甘い男だ。


ジオルドはエリックを思い出しながら内心で反吐の出る男だと蔑んだ。

同じ血を半分別けた弟だと思うと余計にそう思う。

思念に囚われ視野が狭い人物が王族に連なるのは不安要素を抱え込むものだ。

ジオルドは思案する。


果たしてエリックは己が守るべき人物かと。





過去の使用人名簿に公爵夫婦が結婚する直前に雇われ病が理由で退職した者を見つけた。紹介者は公爵家所縁の者ではない。だが先代当主の許可済で雇用されていた。今は取り潰された子爵家の二女だ。



「旦那様。この者は行き場がないから雇用したと先代様から聞かされておりました。ですが実家に戻らせてから亡くなるまでは丁重に看病されていたと記憶しております。それに未婚で子などおりませんでしたぞ」


乳母ではなかった。話が進まない。アドルフは苛立つ気持ちをお茶と一緒に飲み込んだ。





「病原菌見つけた」唐突にカレンシアが呟いた。


一同の視線を集めたカレンシアがクスっと笑みを見せ「ああ、ティが言った言葉なの。わたくしに魔力を流しながらね。言われた時は意味が分からなくて困ったわ。だけど暫くすると身体が楽になって、気が付けば完治していたわ」


「ああ、箝口令を敷いた」アドルフは深いた溜息と共に重い口を開けた。


その様子で聞かせたくない話だったことが伺える。だがカレンシアが打ち明けるに値すると判断したのだ。アドルフに否はない。あくまで奥さんファーストな男なのだ。


「ティの能力については不明な点が多いのよ。分かっているのは捕食系だったかしら? あの子は微グロって愚痴ってたけどね。魔力の扱いは上手いわよ。勿論、内緒にしてくれるわよねジオルド」

お道化て話すカレンシアをまるで眩しいものでも見る様に目を細めたジオルドが約束した。その上でジオルドは情報を齎す。


「カレンシア知っているかな。君達の娘は対外的には死者だけど実際生きているよね。非人道主義組織にはねぇ特殊魔力持ちのレティエルに似た帝国貴族の情報が流れているよ。それもレアな治療魔術だ。驚くよねぇ。情報源は不明だけど丁度、お嬢ちゃんの葬儀の後ぐらいに噂が流れ始めたよ」


「親である君達に伝えるのは酷だよね。だけど彼女にはプレミア価格が付けられた。元々、貴族子女は高値が付く。魔力持ちなら高額だ。希少価値がある者ほど値が上がるからね」何処かすまなそうにジオルドは言う。


公爵夫婦も既知の事か然したる驚きはない。

表情に出さなくとも、愛娘を商品と言い切る輩の存在に憤慨心を抑えているのが見て取れる。

抑圧された怒りが何倍にもなって()の組織に向けられると思えばジオルドは犯罪者と言えど哀れな彼等の未来を気の毒に思ったのだ。




――乳母の線は消えた。


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