噂の元
怖い専属達の意識をエリックから引き離して。
現在の諜報部員の動きを聞いた。
義兄専属は動けるが公爵家の影の半数は捕縛されている。
任務でいなかった者が逃げ果せ、彼女達と合流したようだ。
ここのセーフティハウスをエリックは知らない。
いつから義兄たちはエリックを疑っていたんだろうか。
これは聞いちゃダメなやつだ。俺には分かる。今は胸の内に閉まっておこう。そうしよう。
それより活動中の諜報員さんとの連絡は?
普通は早馬を使うんだよ。
でも専属は皆、魔力持ちだろう? 魔法とか魔術具とか無いの?
あっでも魔封じ着けてたら無理か。
「我らに枷を着けようなどとは王国のくそ共め! 許すまじ蛮行! あのような反吐の出る魔術具など! 万死に値する蛮行ぞ! くそ王国め!」
この言葉を吐いたのは可憐な顔で守ってあげたくなる風貌の専属ちゃんの名はマリア。庇護欲擽る感じなのだが中々の毒舌ではないだろうか。
ミリヤとはマブダチだそうだ。
「お嬢様。我らには魔封じなどという悍ましき道具は着けてはおりません。アレは元は罪人用です」
「はぁ? ですがこの国の入国では義務ではないの?」
「お嬢様。抜け道は如何様にでも」
とウインクをして見せたのは一番お姉さんのハイデさんだ。
そうか。王国はザルだったんだ。
だから他国の兵士が偽装して入って来たんじゃないの。
話が逸れたな。
で、連絡手段はあるの?
「ございます。魔力を込めて描いた魔法陣の用紙を飛伝させます。これは持ち主の魔力を辿って届く魔術具です。試してみましょうか」
ミリヤとマリアが実演をかって出た。
目の前で魔法陣の描かれた用紙の裏にメッセージを書いて折り畳んだ。そうして呪文?のような言葉を掛けたと思えば、一瞬光って蝶になった。それがヒラヒラ飛んで相手に届いた。
おおーーーーーーファンタジー!
この世界に転生して初めて魔法を見た気がする!
俺のアレは魔法じゃないね。ファンタジー感が無いからね!
テンション上がるーーーーーーー!
メッセージの量によって形を変えれるからこれは諜報員の必需品だそうだ。
消費魔力も少なくて済むんだって。エコなんだ。
あ、でもこれでは母さんと連絡は取れないか‥‥。
俺はシュンとしちゃった。
「奥様付きの影と交換していたのですが、届かなかったのです。飛ぶのは飛ぶのですが行き場を辿れずその場をグルグル回るだけでした。死亡であれば飛びません。ですので魔力が辿れない場所にいるのだろうと思ってはおりました」
「まさかあやつがお嬢様と入れ替わっただなんて‥‥」
「えっ?」
「お嬢様からグレイン達のことを聞かされ確証いたしました。あやつも特殊魔法の使い手です。その能力を買われたのでしょうね。バカな子だ」
そう言って悲し気な表情をしたのはハイデさんだ。
彼女を可愛がって目を掛けていたんだって。
ああ、そうか。
‥‥でも許さないよ。悪いけど。
ちょっとしんみりしたが彼女達は魔法が使えるとわかって良かった。
魔法が使えるのなら何かしら出来るだろう。
気を取り直して報告を続けてもらおう。
ところでここにいるメンバーは皆騎士なの? 文官さんいない?
あっ、一人いた。文官ではないけど文官のような仕事もしていたって。
まっいいか。
じゃあ、君にお仕事だ。
名前はクレア。今までの情報を時系列にまとめるのと相関図を作製して欲しい。王国のマップがあればいいんだけど‥‥。
いろいろと指示をしてから解散した。
◇
翌日。
俺の目の前に。
見事な相関図と畳四畳ほどの大きさで戦国ドラマに出てきそうな戦略マップが出来上がっていた。
これはジオラマではないだろうか?
うん。まごうことなきジオラマだ。
それにしてもデカくない? それと凝り過ぎでしょ?
シレっと王城と領城の模型を置かないの。ワクワクしちゃうでしょ。
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