義兄の専属
隠れ家に着いて早々、風呂に入れられ身綺麗にされて食事を摂らされた。
この場にいたメンバーはミリアから事情を聞いているのか俺に何も聞いては来なかった。
今日はゆっくりお休み下さいと早い時間から寝台に追いやられてしまった。
ええー。俺寝てばっかだよ。
お世話されるのもしっかり休むのも俺の仕事だと割り切って寝ることにした。
皆に心配かけちゃったからね。
でも寝る前にグレインのことは告げておいた。
あの女とエリックが組んで俺を攫ったと。
優秀な彼女達だ、きっとやらかしてくれるだろう。
◇
朝だ。朝が来た。おお久し振りの朝日が拝める。ありがたやありがたや。
横で見ていたミリアの蟀谷に青筋が隆起していて怖い。
鬼か?! 角生えてきそう。こわ。
ああ、俺が日の当たらない部屋で監禁されてたって言ったからか。ゴメンね。
朝食後に、隠れ家に集まった義兄の専属達を紹介された。
「お嬢様。我らは若様の専属ではありますが、お嬢様の護衛魔術騎士でございます」
はあ? えっ? 今なんて言ったの?
「我らはオルレアン様の命で派遣されましたオルレアン様の私兵です。元は帝国軍・魔術騎士隊所属でした。若様の留学時代に若様付きとなりそのままこの国に潜入いたしました。若様専属の立場を頂いておりますが我らはお嬢様の護衛のためにおります。今までは影としてお嬢様の御前に出ることは許されておりませんでしたが此度の件で若様からお嬢様の専属として仕えるようにと」
「‥‥‥‥。ええっと‥…貴女方は帝国の方でおじい様から派遣された騎士? お義兄様もご存じなのね。そう…ですか」
驚いたが何とか理解しようと呑み込んだ。
そう、オルレアンとは帝国のおじいちゃんのことだ。
俺を心配しておじいちゃんがつけてくれていたのか。知らんかった。
そういえばじいちゃん孫娘にデレデレでかなりの過保護だったな。
主に陰ながら俺の護衛をしていたそうだ。
護衛の任以外では義兄の専属侍女として控えていたって。
そういえば別荘で見た顔が‥‥。
他にも各所に潜り込んでいるの?
潜入調査員なのね。
王宮にも使用人として潜入済みで、義兄との連絡を担ってくれている。
‥‥義兄、こればれたらヤバくない?
間違いなくスパイ容疑が加算されるよね?
えっ? どこの国も諜報部員を飼ってるからお互い様ですよって。
そんなものなの?
諜報部員って結構いるんだ。そうか。
ところで、俺はどういう扱いをされてるの?
ここに来る前に馬車検めで王国騎士団が公爵家の縁付きを探してたよ。
アレは?
「その騎士は第二王子の手配ではないでしょうか。第二王子も公爵家の事情を把握されていたようです。エリックの動きを追っていたようですね。王子の影は優秀なのでしょう。悔しいですが我らではお嬢様の動きが掴めませんでした」
「お嬢様の名は表に出せませんからね。公爵家の縁の者として捜索していたのでしょう。騎士達も詳細を伏せられていたから曖昧な捜索だったのでは」
王子がエリックの動きを?
なぜだ? どうして王子はエリックに辿り着いた?
「第二王子は何故エリックの存在をご存じでいたのかしら。そもそも彼は何者なの?」
「お嬢様はエリックをご存じなのですか?」
一番お姉さんっぽい専属が不思議な顔で聞いてきた。彼女はエリックと俺の面識がないことを知っていたんだろう。
しまった。俺は知らないことになってたんだ。
そうだよな。ゲーム知識で知ってるだけで実際やつが誰の手下かなんて知らないんだ。
‥‥これはあいつに捕まっていた時に聞いたことにしよう。
「我らも詳しくは存じません。若様が帝国から戻られた後にご当主様から部下にと与えられたと聞き及んでいます。公爵家に引き取られる前は不明です。ご当主様も前当主様がお引き取りになられたのでそのまま育てたとのことです。当の本人も自身の出生を調べていたようですね。若様のご依頼でアレを調べた時にわかりました。母親には辿り着いたようですが既に亡くなっていまして父親は不明です。どうも高位な身分の方であったようですね。それ以上は掴んでいないと思います」
「そうですか。ではエリックはお義兄様の部下でしたのよね。何故裏切ったのかしら」
「‥…心の内は本人にしか」
「推測で申し上げると偏った見識をお持ちになる恐れがあります。推測の域でしかないので申し上げることは差し控えたい‥‥ですがお嬢様のお望みとあれば。叶えなくして専属の名を名乗ることは出来ません。こうなれば直に聞きましょう! まだ指は残しているはずですから!」
えっ?! ちょっちょっと待てーーーーーー!
それって肉体に聞くやつだよね?! ミリヤが嬉しそうだ!
お読み下さりありがとうございます。




