ミリア
ガリレシア嬢の両親は領地に数日滞在予定だ。
俺はその間ここに泊めてもらうことにした。
ありがたやありがたや。
誘拐犯が医者の所にいると告げ逮捕してもらおうかと思ったが、俺の存在が明るみに出るのは不味いので今はそのままだ。
下手に関わって彼女の家に迷惑かけるのは忍びない。
エリックについてはおいおい報復しよう。うん。そうしよう。
ガリレシア嬢が紹介したい人がいる。呼んでもいいかと聞かれ二つ返事で了承した。
今は彼女の善意で世話になっている身だ。なるべく彼女の意向に沿いたい。
「レティエルお嬢様」
部屋に入ってきたのは侍女だった。
この家に仕える人?
あれ、この人見覚えある‥‥。
確か‥‥。
「ご無事で何よりです。わたくしはミリアと申します。ランバード若様に仕えていた騎士でございます」
なんと、義兄んとこの護衛騎士だった。
そう言えば領地の別荘のメイドちゃん達に紛れていたよね?
あれは、俺の護衛を兼ねてたの。そうなんだ。
「驚きました。なぜ貴女はここに? それに公爵家に何があったの? 貴女の知っていること全て話して頂戴」
喉から手が出る程に情報を欲している俺。
些細なことでいいから。隠さず出して!
切羽詰まった俺の身を案じながらミリアは話してくれた。
「裏切り者のエリックの仕業です」
…‥やっぱあいつかー!
もちっと搾り取れば良かった! 仏心だすんじゃなかったわ!
「わたくしは若様の命を受け、秘密裏にあの男を調べておりました。不審な動きは以前からあったのですが然程脅威では無いとのご判断で泳がせておりました。
ですが数か月前に助力を得たようで、そちらも含め追っていたのですがあの男にしてやられました。若様からのご指示で証拠集めの最中、レティエルお嬢様が攫われました。一旦、証拠集めは中止で、お嬢様の捜索に注力とのことで我らが若様の元を離れた隙を突かれあの男は若様を嵌めたのです」
「何という‥‥卑劣ですね」
「はい。若様はお嬢様の身の安全を優先するよう指示を出されご本人は捕縛されてしまいました。あの男が若様に罪を認めればお嬢様を解放すると取り引きを持ち込んだようですがそもそも若様はあの男を信用しておりません。若様も黙秘を貫かれてらっしゃいます。恐らく、あの男は痺れを切らしたのでしょう。お嬢様が手中にあると証明出来れば若様が折れると踏んだんでしょうね」
マジっすかー!
「まさに飼い犬に手を噛まれたのですね。なんと‥‥。恩を仇で返すとは許せません。即刻血祭‥‥ごにょごにょ‥‥ではなく身を持って罪を償って頂きましょう。ええ、その身を差し出させましょう。ふふふ。報復ですわね」
「お嬢様! お任せください! 血祭サイコー! ああ腕が成ります。あの男と命を懸けた勝負を一度したかったのです! わたくし久し振りに暗殺術で息の根を止めとうございます! お嬢様の一言があれば今直ぐに赴きあやつの首根っこ刈り切って参りましょう!」
「えっ?」
「さあ、さあ、お嬢様。狩ってお終いとご命令を!」
…‥こ、こわいこの子。 やだよそんな命令するの。
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