表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第四章 新たな攻略対象者 隠れたままでいて欲しかった。
48/284

入れ替わり

ちょっと長めです。


「えっ? そ、その姿は‥‥!」


目の前に俺にそっくりな侍女ちゃんが立っていたから驚いた。

俺がここに連れて来られた時に来ていた服を着て。おまけにご丁寧に魔封じのチョーカーまで着けて。


ええ―、なにこれ‥‥


最初鏡かと見間違えた。それほど似ていたのだ。

侍女ちゃんをここまで俺に似せる必要があるのか?

どうにも俺の疑問は膨れ上がるばかりだ。いい加減説明して欲しい。



「驚かれましたかお嬢様。この者がお嬢様と入れ替わり(・・・・・)ます。そのために衣装をお借りいたしました。ああ、お顔ですか? お嬢様に似ていますでしょう? 髪色を変え、少し化粧を施して手を加えておりますが元々お嬢様に似た容姿でしたからね。出来栄えはこの通りです。」


驚きの余り言葉を失ったままだった。


侍女ちゃん。思い返せばどこか面影はあった気がする。年頃の女の子の顔をじっくり見るの、恥ずかしくて勇気がいるからそれほど見ていなかったんだ。それに拉致犯の検討をつけるのに色々頭使ったし‥‥。変な言い訳しちゃうけど。


いやいやそれより‥…


「この侍女がわたくしの身代わりを? 何故ここまでする必要があるの? グレイン、貴女知っていること全て教えてちょうだい!」


二人が視線を交わし軽く顎を引いた。


「お嬢様。先程も申し上げましたがわたくしはご指示に従うだけでございます。これもただの目眩ませだとしか聞いておりません」


「そう。それはわたくしに何も知らせないよう命令されているということね」


「ご理解いただけて何よりです。さあご出立いたしましょう」


くそ。取り付く島もない。




ーーーーーーーーー


外に出ると家紋なしの馬車が二台。

見知らぬ御者とエリックがいた。


…‥これはよろしくない状況だよな。



グレインと俺に扮した侍女ちゃんが一緒の馬車に。俺はエリックと。

 

俺の乗った馬車は外が見えないよう窓枠が黒板で覆われていた。

見るからに怪しそう。

エリックと二人きりかよ。俺はどうあがいても逃げれないと悟った。


車内は重い沈黙‥‥。居た堪れないわ。

どうせ聞いても教えてくれないだろうが沈黙に堪えれないので質問することにした。無視したら泣くぞ。


「あの二人はどこに? わたくしの身代わり…‥いや違う。入れ替わりって」言いながらもう一つの可能性に気が付いた。



あまりにも非現実的でバカバカしいから選択肢から除外していた。

レティエルの立場と入れ替わるつもりなのかと思いついてしまった。ははまさかな。そんなアホなことはできないだろう。‥‥だけど否定しきれない自分がいる。


多分俺の顔色は真っ青だったんじゃないか。

エリックが殊更残酷な笑顔で、気が付きましたかと。

なんだよそれ。シャレにならない。


「ふ、貴女はその可能性に思い至りましたか。流石あの公爵の娘だ。そうですね少しは貴女の疑問に答えてあげてもいいでしょうか」


エリックは馬鹿にした物言いで俺に笑いかけた。くそっ、ムカつく奴だ。



「グレインと共謀してお父様達を騙すおつもりですか。まさかそれが通るとでも? 愚かにも程があります。悪事は直ぐに露顕するでしょう。今ならまだ間に合います。お止めなさい」


エリックは何がおかしいのか笑った。


「はは。確かにあいつらはね。そのつもりで行動しているが俺は違う。あいつらと手を組んだのはここまでだ。これから先は違う」


「えっ?」


「貴女にわかるかな? 言い当てたら教えてやるよ」


こ、こいつ何言って? グレインと思惑が違う? いや待て。それよりグレインだ。あれでは殺されに行くようなものだ。止めなきゃ。


「待って! グレインを止めなきゃ。あれでは処分されてしまう。引き返して! 公爵家に行って! エリック!」


エリックの顔から表情が抜け落ちた。


「‥…何故、俺の名を知っている」


しまった! 焦ってつい口走ってしまった。彼から只ならぬ空気が。怖い、俺を殺す気か。


「俺は貴女を過少評価していたようだ。おい、自分の心配をしたらどうだ。あいつらは主家の者に手を出した。殺されるのは当たり前だ。だがなその心配はどうだろう。公爵家の主一家は王都の邸宅で監禁中だ。どうせ後でわかるから教えてやろう。ランバードは罪人として王城に収監された。公爵領の本邸は処分が決まるまで封鎖中だ。どうだこれが今の公爵家だ。そうそう、あいつ等はこの国を出て行くそうだ。お前と入れ替わるのはこの国ではない」



俺の呼吸が浅く忙しなくなる。落ち着かそうとするがダメだ。

頭が追い付かない。今、こいつ何を言った?

はあ? 俺の家族がなんだって?

ダメだ今の情報を処理できない。


「どうかしたか。想像もしなかったか。これだからお嬢様は…。さてそんなことより質問に答えてもらおうか。どこで俺の名を知った」


エリックの声が耳に入って来ない。

俺の呼吸はどんどん早く浅くなる。ああ苦しい。それに体中が熱く感じる。

苦しい、熱い。体中に熱が巡るのに反して頭は冷えてきた。

‥‥これ? あ、魔力だ。教えて貰ったからわかる。魔力が活性している。

そうか、魔封じしてなかったっけ。

ぼんやりそんなことを考えながら家族に会わなきゃと考える自分がいた。



…‥ここから、こいつから逃げる。

決めた瞬間、俺の魔力が弾けた。




いつもお読み下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ