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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第三章 攻略対象三人目 第二王子は曲者です。取扱い注意。
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第二王子とラムドの手紙

第二王子です。


第二王子とラムドはお友達。

ラムドを頼りにしています。

そして真似っこするほど尊敬しています。

留学先である帝国の学院に国元から一通の書状が届きました。

これは急遽帰国の命令書。


内容が知らされぬまま帰国とは、余程の一大事でしょうか。

いや、これは王位継承に関することでしょう。

そう予想しました。


ですが早急に帰ることはせずに信頼できる者からの情報を待つことにしました。

私は国元にいる彼からの便りを心待ちにしながら帰国の準備を始めました。

帰れと言って直ぐに戻れるわけではありませんよ。父上。

半ば呆れながら書状を眺める。


ーーーふん。こんな召喚命令あるものか。知ったことか。忌々しい。


おっと、ちょっと黒い私が顔を見せました。

いけませんいけません。

被り物をしなければ。これではラムドに笑われます。フフ。




 ――――――――


「殿下、手紙が届きました」


おや。意外に早いではないでしょうか。

どれどれ‥‥‥。


‥‥‥はっ?

見間違いでしょうか?

それともラムドがふざけたのでしょうか。

いえ彼がこんな面白いことを私に内緒でするはずがありません。

これは彼も知らなかったのでしょう。きっと。

いや、知っていた。そうでしょうね。

知っていて今頃私に伝えたのでしょう。

‥…ちょっと口惜しい。


しかしラムドも容赦がありません。

我が兄を塵屑とは‥…。まあそれに関しては同意見です。

話の分かる彼は得難い友です。

何々…アホ‥‥間違えました。兄です。そうです。

兄は婚約を解消され高額慰謝料等の請求をされて廃嫡。おまけに不能。

返す言葉が見つかりません。

一体何をやらかしたのでしょう。

ふむふむ‥‥ラムド辛辣です。

女に誑かされて犯罪に加担。安い罠に嵌った愚鈍な王子って。

愚鈍には同意見です。やはり分かっていますねラムドは。


さて女ですか?

王家に手を出すとは、恐れを知らぬ強者か。いえ痴れ者でしょう。

それにしてもあのレティエルに思いを抱いていた兄とは到底思えません。

何があったのでしょう?

とここで思案しても私も数年彼等と会っていませんから。

年若き男女の仲など如何様にも変わるのでしょう。

私は経験がありません。聞いた話です。




ああとてもとても残念です。

私はなぜいま帝国にいるのでしょう。

これほど滑稽で愚かな兄の醜態を見逃すなんて。

私は己の不運に嘆きます。

恨めしい我が身。

ラムドは見たのですか? 見たのでしょうね。

きっと特等席‥‥いえ参加したのでしょう。

羨ましい。


ラムド、幾ら私達の書簡が暗号化しているとは言えこの歯に着せぬ物言い不敬になりますよ。クスクス。これが彼の持ち味ですので大目に見ますが。


成程、父上からの書状はこのことを伝えるためだったのでしょう。

それかもしや‥…。

父上の考えそうなことではあります。

それであれば急遽帰国の意味合いが変わります。

情報が欲しいです。切実に。もう少し引き延ばしてみましょうか。


しかしそろそろ戻りませんと父上も痺れを切らすでしょう。

それに戻れば兄が刑に処されるところを見れるかも知れません。

どうでしょう。際どいかも知れません。

戻った時は兄は刑に処された後かも知れません。

見極めが難しです。この私を悩ませるとは兄も中々やりますね。

もう勝負が出来ないとは寂しくなります。


ーーーざまあみろ! 無様に泣き喚け! ハハハ。所詮お前は負け犬だ!


コホン。黒い黒い私は引っ込みなさいな。




 ―――――――




さてさて帰国の準備が整ったようです。皇帝陛下との謁見も無事に済みました。いざ我が国へ、ですね。これでもう帝国には戻れないでしょう。残念です。まだ暫くは滞在したかったのですが。こればかりは私の我儘を通すことは出来ません。しがない第二王子ですから。




「殿下、手紙がまたもや」


またですか?

これもおそらくラムドでしょう。分かります。友の勘です。


ええーと何々?

‥…レティエルが?

こうしてはおれません。即出立です!


皆さん一刻を争います。

至急公爵夫人に連絡を!

国元に早馬を!


宜しいですか、頼みましたよ。

後の者達は滞りなく帰国の準備を。



‥‥しかしラムド。

これは貴方らしくありません。

貴方、私を謀るつもりですか? 騙されませんよ?

本当に彼女の身に何かあればこうも呑気な文など出せないでしょう。


ーーーおい。私を舐めているのか。幾ら友でも舐めた真似は許せん。どうしてくれよう。


ああいけません。またまた黒い私が‥…

私の尊敬する友に失礼でした。これはこれは未熟者な私。反省しきりです。



手紙はまどろっこしいです。やはり直接の話し合いが必要でしょう。

王都ではなくザックバイヤーグラヤス公爵家領地に赴べきでしょう。

父上に許可を頂かなくては。まあ、私の読みが正しければ許されるでしょう。そうですね。お土産は何にしましょう。


さてさて。

父上に連絡をお願いします。

大至急で。



ああ、それと帝国名物のお菓子もお願いします。

クスクス。私は抜かりありません。


お友達との秘密の文通。

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