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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十五章 ミスリード

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噓も方便?②´ーライムフォード視点

2026年も、よろしくお願いいたします。



いきなり目覚めたライムフォードの視界に入ったのは、ポカンと間の抜けた顔のレティエルと、冷酷な視線の(ランバード)だった。


この場にいるはずのない、いてはいけない人物を目の当たりにしても、驚かず、矛盾すら感じることなく受け入れられたのは、言ってしまえば、盛られた自白剤の影響。思考の鈍化、その上、頭に木霊していた懐かしい声が、緊張と警戒心を解し、あまつさえ安堵が取れたわけだが、その事実にライムフォードは思い至らない。

夢現に聴こえた懐かしい声の正体を友と認識した事で、日常的に共に過ごした留学時代の記憶と混じり、誤認させていた。


そう、自分の傍に控えているのが当たり前だと。お陰で混乱もせず、醜態を晒すこともなく、彼らとの会話は滞りなく進んだ。こうして、ライムフォードの王族としての面目が立つとは、皮肉だろう。




報告を聞き、思い浮かぶのは、意識を失う直前の記憶。凶刃を振るう護衛騎士の姿だった。思い出した頃にはもう呆けた頭はクリアに。流石に不法侵入の友を見て、公爵の奸策ではと疑念が湧く。


・・・この場にいるのを、当たり前の様に受け入れていましたが、王族所有の建物に不法侵入した挙句、我が物顔でのさばるとは。ラムドらしいと言えば、まあ、そうなのですが、しかし、どうしたものでしょうね。利用価値の高い(ラムド)を問い詰める事で、反意を持たれてしまうのは、本末転倒です。ここは、目を瞑るのが得策でしょう。


打算が冴える。


ライムフォードは、些かの疑惑は残るものの、一切を不問にと自分に言い聞かした。これからを思うとその方が都合が良いからだ。不問は、不法侵入の件だけではない。襲撃に関与した可能性も含めて。疑わしき者は、罰するのが正しいとされる中、敢えてその逆を選んだ。勿論、判断基準は友情・・・ではなく、利害の天秤が利に傾いたから。利用価値の高いザックバイヤーグラヤス公爵家の協力を得る為ならばと。どこまでも利を狙うライムフォード。


とは言え、彼が抱く懸念は深刻なのも事実。

何せ、自分が王位に就かねば王国は、野心塗れのヴァンダイグフ老の手中に堕ちるは待ったなしの状態。陛下を堕落の沼に嵌め、傀儡にと、奴の魔の手が伸びる、否、既に陥落したも同然なのだ。一刻も早くヴァンダイグフ老を失脚させねば、国が荒れると義憤が燃える。若い使命感に追い立てられ、焦燥感に駆られる。


今は感情が揺さぶられて、思考が散漫なライムフォード。

非常事態の今、邸内の制圧を行い視察一行の安全を確保すべき。そう頭では理解していても、何故か意識はヴァンダイグフ家に及ぶ。余計な感情に振り回されては、要らぬ隙を作るのに。ままならない感情を、持て余していた。まさかそれが、自白を強いられた名残とも知らず。


普段のライムフォードであれば、ちょっとした違和感を、見逃すことはない。

亡命を画策したレティエルとランバードが、未だ王国内に留まり、公爵の危機に駆け付けた。守られる側の者がだ。その姿は、裏に生きる手駒の如し。それに、戦闘能力の高い公爵夫人を、起こさないのも不自然。加えて、レティエルの祖父オルレアンの使節団参加も、偶然の一言で済ませるには、出来過ぎ感が強い。王族の研究施設に、ザックバイヤーグラヤス家とファーレン家の者が揃った説明を求める考えが浮かばない。自白剤は、注意力も鈍らせていた。


そんな二人と公爵を前にして、ライムフォードの胸中に去来したのは、ヴァンダイグフ老の言葉だった。


・・・ヴァンダイグフ老は、エリックを攫ったのが、前公爵当主だと、息巻いていましたから。


ヴァンダイグフ家の言い掛かりとも言える主張は、現ヴァンダイグフ伯爵家嫡男エリック誘拐事件は、ザックバイヤーグラヤス前当主の仕業である。被害者のエリックが、勇気を奮い、公爵の外患誘致を告発したと。証拠のない主張は、陛下と三公爵の否定的な態度で黙殺された。


・・・報復なのでしょうか。公爵夫人(カレンシア)が、非常に頭が痛くなる話をしていましたね。夫人の側近(グレイン)が殺されたのは、ご老人の差し金だとか。事実はどうであれ、帝国の高位貴族の殺害とあって、その調査に帝国が乗り出したのは、本当に頭の痛い事です。これなら公爵が暴れてくれた方が、まだましです。それにしても、どうして静観しているのでしょうか。少し揺さぶりをかけて?


両家の確執を利用できればと頭を回す。


公爵の肚は読めなくとも、苛烈で冷酷なランバードならば、公爵家を裏切ったエリックを見逃さないと読む。とは言え、それだけでは弱いかと、再び頭を捻る。


・・・そうですね、どうせなら、この際、父上も一緒に退いてもらいましょう。ふふ、あの件がありましたね。溺愛するレティエル嬢の身に、危険が迫ると知れば、協力は惜しまないでしょう。


そっとレティエルを盗み見た。


父親(陛下)が一人の貴族令嬢(レティエル)を、単なる魔力供給源と見做し、利用するために、守護神のご神託を用いた。


・・・それも遅すぎでしょう。彼女は故人です。王命で召喚もできないではありませんか。やはり、後ろ暗い企みをお持ちのようですね。


積極的に彼女を捕えないのは、恐らく帝国の動きを気にしての事。そう読んだ。だが、帝国に亡命させないよう足止めしたのは、きっと陛下に違いない。思い当たることがあった。


――公爵夫妻の自宅謹慎処分。ランバードの収監。


・・・あれも、エリックが端を発して、そうなりました。結局は、ヴァンダイグフと父上が裏で企んでいたのですね。


ならばとライムフォードの心は非情に動く。


・・・敵の敵は、利用しない手はありません。


腹が決まったことで、心に余裕が生まれた。

余裕が気を晴らす。

彼らの懐に飛び込むのも一興だが、交渉で乗り切るのも別の面白みがある。そう思いつく頃には、すっかりライムフォードの気分は上がっていた。





・・・ですが、この顔ぶれ、何でしょうね、何か引っ掛かります。



お読み下さりありがとうございます。

更新が遅くて申し訳ございません。

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