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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十五章 ミスリード

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嘘も方便?ー①


「私は良き臣下に恵まれました。君達のより一層の働きを期待します」


王子様から頂戴した言葉がこれ。俺は遠い目を。義兄はうっすい微笑みを浮かべ意味ありげに視線を送っていた。


・・・はぁ、もう、疲れちゃったよ。


疲労の原因は、少し遡って。

襲撃犯の尋問の結果も併せて、現状報告を行なってからのこと。


この襲撃事件の狙いが、単なる王子殺害ではないのではないか。そう皆が結論付けたのだ。理解できてないのは俺だけだが、まあ、わかった顔をしておこう。



王子様の御前で、片膝ついて臣下の礼をとる親父とハイデ達。

俺と義兄はちゃっかり椅子に座って、一緒に話を聞く側だ。王子様の許可済みなので無問題。


実は、お目目開けた王子様を直置きはまずいだろうと、気配りを見せたミリア。既に俺達は敷物の上だったが。確かに不敬だわとアワワする俺と違って、本気を見せたミリアは違った。

ガチな(身体強化)ミリアは凄かった。椅子四脚+丸テーブルをどこからか抱えて・・・うん、手の平に乗せてだね、もうその微妙なバランス感覚は、神。大道芸人っぽくてカッコイイ、おひねり要る? 

感嘆の声を漏らす俺の目の端に映り込んだ野郎どもの苦笑い(ライオネルとダル)の顔。手伝おうとしない君達、だから女性にモテないんだって。



ライムフォードのお裁きは、無論、お咎めなし。


・・・え? 何のって? もちろん、不法侵入を始め、その他もろもろ。あー良かった良かった。


俺達の罪を挙げれば、自分の側近達もただでは済まない。済ませない。理由はどうであれ、機転を利かせたハイデの睡眠薬散布に成す術もなく寝落ち。王子様と仲良くね。これでは護衛の意味がない。アレがガチな毒薬だったら永眠だって。おまけに、お誂え向きに現場には帝国使節団のご一行が。引率の王子暗殺とか、一気に国際問題に発展だ。開戦目的で帝国が仕掛けたとも、第三国の介入とも、何とでも言える。


・・・狼煙を上げられちゃ困るんだって。


無傷で無事なのを安堵したところで、所詮結果論だ。彼らは大失態を犯したと手厳しい指摘を甘んじて受け入れろ。そう義兄は目で語っていた。彼らは側近生命・・・どころか騎士生命が風前の灯同然。実家の権力次第で、この世からグッバイ・さよならな未来もありありなのだ。王子様だって悪戯に俺達を刺激してはまずいとわかっている。双方とも手打ちを望むのに、先に言わせたいのだ。


・・・見栄だね、見栄。



肝心の尋問結果には、誰もが顔を顰め不快感を露わにした。

結論を言うと、黒幕の情報を得るに至らず。自白剤が無駄の意味合いが想像を絶する。


・・・壊れたって。怖ぇーよ!

ㇵイデの名誉のために言っておくが、別に彼女が拷問の末、壊したわけじゃない。もう壊れちゃってたって。何がって? 精神がだよ!


五人が五人とも精神崩壊な状態で、会話どころか言語の理解もできていない。知能が残っているかも怪しいそうだ。もう恐怖しか勝たん。


最初から捨て駒として使い潰す気で、情報を与えなかった。いや、漏れを恐れ、彼らの精神を壊した。と疑問が飛び交う。危険な薬物の可能性を巡って問答が。


俺は自白剤を使用しての尋問は、楽に供述がとれると高を括っていた。皆も同じだろう。が、黒幕は、とんでもない方法で情報を守りやがった。そこに当人(実行犯)の意思があったとは、到底思えないが、結果的に黒幕を守った。それも最も下劣な方法で。


「回復は?」


痛ましい表情で王子様が尋ねる。何となく無理だってわかっていそうなのに。


「調合材料が判明しなければ、解毒も叶わないかと。この者は、ファーレンで学んだ調合薬師ですが、調合師独自の製法での薬物を、解毒するとなれば容易ではございません。先ず、材料の特定から始まり、同じ薬物の精製を行い、それが完成して、やっと、解毒薬の試作です。殿下、もうお分かりでしょう。解毒薬の試薬を完成させるまでに、どれほどの時間と労力を要するかと」


めっちゃ圧。パパンの静かなる圧は、王子相手でも容赦がない。


だが、相手は腐っても王子様。この手の圧に慣れているのか、怯むことなく平然としている。嫌な慣れだよ。どうやら可愛げのない王子様は、困ったちゃんで行くらしい。


「それは困りました。困りましたが・・・あぁ、ここには、優秀な貴公のご子息がいるではありませんか。彼の類まれなる頭脳であれば、多少時間は掛るでしょうが、できなくはないでしょう。折角の知恵と技術を持ち腐れさせては、気の毒というものです、公爵」


・・・小芝居かな?


矛先を向けられた義兄はうっすい、それこそ面の皮一枚分の、残念な表情を見せてはいた。誰が見たって本心からでないとわかる。親父も困った顔をして見せてはいるが。みんな顔芸が上手い。


「殿下、殿下がご留学中に、ファーレン家と懇意であったのは存じております。ランバードを重宝してくださったこともです。ですが、ランバードもレティエルも、今はファーレン家に連なる貴族です。帝国貴族の彼らに、我が国の問題を、関わらせるおつもりですか?」


・・・はい、嘘です。嘘っぱちですが、何か? 

俺達は死者にされ、築いた資産(商会)を巻き上げられ、ファーレンを追い出された被害者です。皇帝は王国の二番煎じ野郎です。でも、その新情報を王子様は知らない。はったりかますパパン、最高です。


親父が固辞したのは、この問題はライムフォードの領分だからだ。公爵当主として、無論、父親としても、王子に肩入れしない。そう示したのだ。


・・・ライムフォードは敵じゃないって、パパンに言えてないのがイタイなぁ。あ、陛下がクソってこともね。


情報共有する間がなかった。だから親父の意向を探りながら、話を合わさないといけない。王子様が胸襟を開いた相手が義兄だというが、これだけで相手が相当厄介でメンドクサイってのがわかる。


それに、親父の言葉にあったように、王子様のサポートは我が家もファーレン家も手厚く行ってきた実績がある。帰国後も王子の拍付けにだって尽力した。そう、人身売買の組織壊滅の件ね。あれで存在感のうっすい第二王子様が脚光を浴びることになった。彼も当時を思い出して余計に執着するのだと思う。


・・・えーと、味占めちゃった?


「耳の痛い話ですね。確かに王家が捜査すべきでしょう。ふふ、つい、何時ものように公爵に甘えてしまいました。・・・ところで、このような危険な薬物を、判った上で摂取したのでしょうか? 騎士が、自害ではなく、廃人を選ぶのも違和感があります」


王子様の問い掛けに、意識が切り替わる。


「もしかして、時間稼ぎかしら?」


気付いた事があれば、誰でも発言していいと王子様の許可は下りている。流石、物わかりが良い。


「姿を消した他の団員達も気になります。ザっと見回りましたが、無人の館のように人気がありません」


ライオネルの疑問は、王子様に驚きと緊迫感を齎した。邸は、自分達の護衛に就いた団員以外が、警備していた。常駐する管理人や使用人もいたのだ。その者達がごっそり消えてしまった。


不可解な謎がまた増え俺達を悩ます。


「薬物使用の観点から彼らの身体を調べました。はい、薬物の摂取経路です。外傷はなく、それらしき跡も見受けられません。恐らく、経皮吸収か経口摂取のどちらかだと思います」


自発的に服用していれば、飲むように仕向けた奴がいる。自供が取れない以上しかたがないが、まだこっちはマシと言えよう。もし、吸収だったら。ハイデと同じ手だったら? なら、どこでだって話。


ハイデの報告に、緊張感が高まった。俺は別の意味で慄いたが。


・・・だって、五人全員、真っ裸(マッパ)って!


身包み剥がして、ええ、真っ裸(マッパ)です。手順は簡単、錯乱状態の彼らを再び眠らせ身包み剝ぐ。鬼かよ。勿論、一人でではない。ライオネルとダルが参戦したそうだ。お疲れさまなこと。


「精神干渉は考えられませんか? 休憩時に薬を飲むよう指示を出せば、遠隔の地にいながら犯行を」


王子様は自分で言いながら、違和感を感じたのだろう。考え込んだ。


「狙いがはっきりしませんね。本当に殿下の殺害が目的でしょうか。薬物で正気を失った者です、標的の区別がついていたとは、思えませんね」


義兄は本人を前にして遠慮ないね。

言われた王子様と親父は、記憶を探り始めたようだ。


・・・でも、殺しにきた相手を冷静に見ないでしょ? わかるの?



事は王子暗殺などと単純な話ではなく、他に狙いがあって事件を起こしたのではないか――と結論付けた。後は、ハイデ達を信用していないわけではないが、義兄が再検分を行うことで一旦話はついた。




それと、邸の捜索も。完全掌握を最優先だと決定した。




お読み下さりありがとうございます。

やっと投稿できました。ちょこちょこと書いてはいたのですが、気付けば時間だけが過ぎてました。すみませんm(__)m


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