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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十四章 王が住まう場所
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想いをー③

誤字脱字報告ありがとうございます。m(__)m



よくあるお家騒動っぽい何かに、知らないうちに何故か巻き込まれたレティエル。

第一夫人の動機は『息子ちゃんを何とかして当主にしたい』だ。そのためにレティエルを悪役令嬢に仕立てて一芝居打つ。行き過ぎた母親の執着心を側妃に見透かされ金蔓として利用されたという。


ファーレン家の報告内容を聞いて、ちょっと理解に苦しんだ。

だってね、悪役令嬢ってあなたふざけてます? って話だよ。

どっからそんな話が出たのか、不思議で仕方ない。


愚息が真面目に当主教育を受けそれに見合うだけの行動をとっていれば、少なくとも次期当主の座、どころか廃嫡の憂き目にもあわなかった。不真面目で支持を得れないのは自業自得だよね。それをどうしてレティエルが当て馬にされなきゃなんないの? 馬鹿か?馬鹿なんだろうな。


・・・ホントナニコレって感じ。


「え・・・と、お義兄様。何故わたくしがファーレン家の次期当主の座を狙っていると思われたのでしょう、ね。しかも、悪役にだなんて。ライラの洗脳が解けず成り済ましでファーレン家に入っていたら、わたくしまたもや悪役令嬢の称号を得てしまったのね。はぁ、物語を読み過ぎではなくて? 頭おかしぃ、んん、想像力(被害妄想)豊かすぎましたのね。第一夫人は」


はた迷惑な、の言葉は呑み込んだ。

どうやら夫人の想い出のレティエルは相当な野心家に育ったのね。人畜無害なのに。むう、解せぬ。


「レティが悪役令嬢ねぇ」


だったら愚息は何役だと呆れていた。


もう、何で帝国に来てまで悪役令嬢なわけ? もしかして、第一夫人って転生者なの?! やだーマジで勘弁してー、メンドクサイ転生者はお断りだって。


「それね。内部分裂の陰りが日に日に増す中、そこへ義母上の唯一の娘が現れたら? 愚息を認めない家臣達にもっとひどい存在を宛がって期待を壊そうと一考したみたいだね。まあ、変な筋書きなのは夫人の頭がお粗末だからだろう」


知らなかったが伯父さん推しと母さん推しに二分しそうな勢いが家臣たちの中で燻っていたみたい。

領地経営や商いで才を発揮する伯父さんはどう見たって文官タイプ。武人ではない。片や高魔力持ちでバンバン焔を燃やし魔物を屠る母さんは暴ry・・・武人タイプ。野性味触れる美人妻。武闘派のむさいおっさんから絶大な支持を得ている。まぁお祖父ちゃんに仕えてた貴族がそのまま母さんに流れた感じ?

そう、レティエルは推しの()ってやつ。はぁ、母さんや、何やってんの?



「ライラとグレインが隷属ではなく記憶操作を施されたのはね、憎しみに囚われた悪役を演じさせれば必ず反感を持たれる。ふふ、面白い精神干渉の使い方だね、感心したよ。彼女達はザックバイヤーグラヤス家もファーレン家も敵討ちの相手だと復讐心の種を植え付けられた。これなら一々指示を出さなくとも復讐の芽は育つ。特筆すべきは、思い出を刻むのではなく強い感情を記憶に植え込んだことかな。復讐心に囚われた人が取る行動を彼女達は示した。グレインなど義母上に忠誠を捧げたにも関わらず、一人娘を害すのに躊躇わなかった。驚異的な能力だと思わないかい? 彼女の力が敵に渡ると思えば、軍がクレアを秘匿扱いで捜索するのも納得だよ」


ただ単に出来事を刻むのではなく感情を植え込むのが、どうやらクレアの真の力らしい。新事実を知った義兄が何となくウキウキしてるのは、気付かなかったことにしよう。


種が発芽し育つように感情も芽生え行動の指針となるべく育つ。その感情に支配され行動をとるのだから術の重ね掛けは不要だそうだ。だが、脅威を感じる能力でも、クレアの技術が未熟でしかも魔力差があったからか、干渉術のプロであるダルを前に術は解かれた。義兄曰く、潜入調査を行うダルは魔量も技量も高レベル。交換条件を飲まされても手を借りたい相手らしい。おおう。そうだったのね。


「夫人の失敗は第三者の横やりと干渉系のプロ(ダル)がいたことかな。まさか彼女達が、一人は殺され、もう一人は捕まり、施した記憶操作が解かれ自分に辿り着くとは思いもよらなかっただろう」


だよね。


「第三者、その人がグレインを殺したのね。・・・それってエリック・・・ああ、足の骨折られてたわ」

「ふふ、ミリアにしては上出来だと褒めてあげないとね。・・・グレインはね、レティの身元証明書や個人資産証明書を盗んでいたよ。それで成り代わりはレティの資産を二人が狙ったもの、彼女の死は仲間割れによる犯行と見做されエリックとライラも疑われたが、彼らにはアリバイがあったからね」


未だ犯人がわからない。


母さんがクレアを執拗に追いかけるのはグレインの無念を晴らしたいからだろう。慰めの言葉では喪失感は消せないか。母さんは大切な人の死を、その人の敵を討つことで乗り越えようとしている。それが分かるだけに・・・ああ、きっと親父も気持ちが分かるから自由にさせたのか。



それでね、と義兄が、お祖父ちゃんがレティエルを担ぎ出そうとしても今更だと教えてくれた。


何となくだけどお祖父ちゃんは、嫡男に対しレティエルをぶつけて骨肉の争いをさせようと考えてたんじゃないかなーって思うわけ。だって武闘派の元ボスザルだもん。テッペンとったれー!的な臭いするよね? 散々、罪悪感を掻き立てるような発言したでしょ? 王国寝返れもね。


だけどそれはもう、今更だって。


「お義祖父様の魂胆は、ふふふ。ジョージリアン当主様の方が一枚上手だったといえばいいのか。皇帝にしてやられたと嗤うべきか」

「え、それは・・・」


「兄と妹で二分しかけた名門家を、罪と温情で牛耳るとはね。国内で最も富と権力が集まるだろうファーレン家に、皇帝は食い込むのに成功した。契約したそうだよ。ふふ、次期当主の指名権は当主にあるでしょ? ジョージリアン当主様が指名した人物と皇子との婚約が決まってね。ああ、第二夫人の三女ね。彼女と皇子の間に産まれた子が次の当主だと、そういう契約をお義祖父様抜きで皇帝と当主が結んだ。まあ、見事にお義祖父様は蚊帳の外だった」


「ふぉ! ややや、いいのですの? お祖父様、ご存じありませんの?」


・・・にしても、楽しそうだな、お兄ちゃん。

君はじいじの嘆く姿を可哀そうだとは思わんのか? ああ、あれか、あれだわ、ちょっかい掛けてきたのを根に持ってたか。



ふむふむ、これはきっとこういうことなのだろう。

お祖父ちゃんには、王国堕として誠意みせろやこらあ、を。

伯父さんには、金になる製薬業を持参金代わりにつけたるさかい、自分とこの娘を次期当主にしてウチのボンボン婿入りな。勿論、産まれた子も当主に置けや。これ決定な、を。

母さんには、羽根っ帰りな姪っ子に邪魔されんのも困るわ。ちょいと亭主の国で暴れてきなはれ、を。

それぞれに喰いつく餌を鼻先にぶら下げられて、家族会議する間も与えず。

ぬおおお、なんてこったい。




「ふふ、これは私の推察だけれどね、皇帝にとって然したる旨味のない王国は、遊戯の一つぐらいの感覚なのだと思うよ。ふふ、防衛技術さえ手に入れば資源も人材も乏しい王国はお荷物にしかならないからね。所詮、手に入ったらそれでいい程度だと思うな。くくく、第七側妃の実子達に晴れやかな舞台を用意したのは、何も火種を落とすためだけではない、か。彼らの護衛は側妃の実家が誇る手練れだという。ふふ、守るべき対象が分散されてはたまらないよね。そのお陰か、捕縛された側妃側も当初予定していた程の抵抗もなく死者も少ないそうだよ。武闘派家臣達も名誉挽回とばかりに暴れただろうね」


ざまあみろーーーそんな副音声が聞こえた。気がした。




「それにしても、お義兄様は皇帝陛下のお考えをご存じでいらっしゃるのね、それ、どうしてですの?」


思わず地の底を這うような、お腹の底から力を込めて声を出した。これには義兄も何かを感じ取ったのだろう。すんなりゲロった。


「ああ、それはね、ほら、迂闊にもふらふら近付いてきた近衛(ギルガ)がいたでしょ? 胡散臭いから手元に置いて泳がせれば、案の定だったからね。気を利かせた部下が聞き出してくれたお陰で皇帝の動きが読めてね。まあ、私の推察もあるのだけれど・・・。レティ、これはさっき届いた報告だからね? 隠していたわけじゃないのを、わかってくれる?」


低姿勢!

どうやらさっき席を外したのは連絡が入ったためか。


「夫人も側妃達も事情聴取は終え彼女達は非公式に刑罰に処される。これでこの一件は幕引きとなり詮索は御法度となるだろうね。ジョージリアン当主様もこれで手打ちとなさった。グレインのことも捜査打ち切りになると思うよ。もう帝国では事件はなかったことになったからね」

「え?! まさかの揉み消し! うわぉ正しい権力のごり押しがここに」


驚きすぎて素が出ちゃったのを何とも言えない表情の義兄がスルーしてくれた。


「傷を負ってまで闇を暴きたい? 大事なのは今を生きる人々を守る事だからね」

「お義兄様。そうですわね。ファーレン家には守るべき家臣や領民がいますもの」


話をいい感じ風に終わらせる。のかと思いきや。一枚の洋紙を徐に取り出した義兄。目がすわっとる。

何か途轍もなく嫌な予感が。ぶるぶるぶる。


「お義兄様、これは?」

「今回の事件の全容・・・というより決定事項だね」


見れば、側妃との関りを全くないものとして、単なる後継者争いによる内部分裂(寸前)第一夫人と嫡男は領主一族の責務に対し過度の重圧を感じ心神喪失状態。回復の兆しなしとみて第一夫人と後継の座を返上。次位である第二夫人が正妻に。三女が後継に。後継者である三女と第十三皇子殿下との婚姻を以て、三女は公爵家当主に、第十三皇子殿下は公爵当主の伴侶となる。

製薬事業の総責任者にカレンシア・ファン・ファーレン、人口魔石事業総監督にジョージリアン・ファン・ファーレンが就任予定。

ティエル商会会長・魔道具技師ランバード・ファン・ファーレン、製作総責任者レティエル・ファン・ファーレン、共に死亡。両名の遺産をジョージリアン・ファン・ファーレンが相続。尚、ティエル商会新会長に同氏が就任。

ランバード技師の考案術式、調合製法は皇帝に献上。


と簡易に書かれていた。











「は?」

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