思わぬ再会
俺と母さんは今美味しいお茶とお菓子を堪能している。
母さんは葬儀は終わったけれど直ぐには帝国に行けないと言ってきた。
これから王都に行くって。陛下への謁見以外にもすることあるって。
そうなんだ。直ぐに帰らないのか。
俺、どうしよう? えっ? 暫くここにいたらいい?
えぇーマジか。どうすっかな。帝国行っちゃったらここに帰って来れないしな。そうだな母さんの言う通り暫く滞在しようかぁ‥‥
俺が了承すると母さんは笑顔で、来賓がいるので代わりに持て成しってって俺に仕事を振ってきた。
えっいいの? ってかなんで俺に? 義兄いるじゃん。彼奴使えば?
母さん、いいからいいからって含みのある笑顔で言われてもな。
俺めちゃくちゃ警戒するぞ?!
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そして今俺はめちゃくちゃ後悔している。
さっきしていた母さんとのやり取りを後悔している。
ああ、安請け合いは怪我のもとだよな。俺自分が恨めしい。
はあ。母さん騙し討ちだよ。
「…‥‥」俺は言葉が出ない。
「ああ、安心しました。お元気そうで何よりです。貴女の訃報を聞いた時は我が耳を疑いました。公爵家の至宝である貴女をそう易々と失うような愚かなことをザックバイヤーグラヤス公爵が許すとは思えませんでしたし。だが貴女をこの目で見るまでは穏やかに過ごせなくて。これで漸く安心出来ました。レティエル嬢」
「‥‥…」俺は口をパクパクさせるしかない。何と答えればいいのか。
下手すりゃ不敬どころか王侯貴族への詐欺になる。
これ、やばくないのか? 何故母さんはこいつと俺を合わせたんだ。
何企んでんの? 母さん!
俺の心臓が破裂するんじゃないかってぐらいにバクバクしている。
強心臓じゃあないんだぞ! くそっ!
「どうしました。久しく会わない間に私のことを忘れてしまいましたか」
クスリと上品な笑みを浮かべて嬉しそうに俺を見る。
こいつ、端から信じてない口だな。
俺は母さんとこいつの思惑が読めないが、一介の貴族である俺が挨拶をしないのはもうそれだけで不敬だ。仕方ない。
「これは失礼いたしました。お久しゅうございます。ライムフォード第二王子殿下。お目に罹れ光栄でございます」
くそー挨拶しづれー。ってか何でお前ここにいる?!
そう。今、俺の目の前に攻略対象者の第二王子がいやがる。
何でだ! 何故ここにいる? お前帝国じゃねえの?! 何フラッと人の領地に来てるんだよ! 家に帰れよ!
シレっと久し振りにあった旧友みたいな顔で茶を飲んでいるこいつ。
俺が義兄とセットで追い出した奴。
その奴が‥‥奴がここにいる。
ああ終わった。今度こそ終わった。何もかも俺の儚い夢よさらば。
ああ魔女っ娘。憧れだったのに‥…
俺は恨みがましい眼差しを思い切りぶつけてやった。わざとだよ!




