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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十四章 王が住まう場所
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レティエルの魔力。義兄の魔力。


俺達は協力者の手引きで城内に上手く潜り込み、身を潜める。

晩餐会に招待された貴族が続々と登城している中、隠密に親父達の居場所を探索。といっても魔道具がね。


希望の偵察機は諸事情…主に軍絡みだけど…制作は時期尚早と判断して代替案(探知機)で手を打った。なあんてね。実は魔力と素材の不足が理由なんだけど。


出来上がった魔道具の性能は探知?になるのかな。

『与えられた魔力を辿る』『魔力の痕跡を表示する』これで対象に辿り着くって。


今回、母さんの魔石(魔力)で居場所を掴む予定だけど、多分、親父も一緒だと思う。ううん、一緒であって欲しい。親父では辿り着けないからね。頼むよ~。


GPSもない世界で居場所の特定できる魔道具を作っちゃった。といっても対象者の魔力頼りの探知機だけど。性能は発信機っぽい。



この魔道具、二つで一つ。対なの。

親機と子機といえばいいか。子機を飛ばして親機が足跡を表示する。レトロなレーダー探知機っぽくね?

まあ、それはいいけど。ところで、これ、手動操作できないのだ。何とも残念。作動させたら対象に向かって進むだけ。でも充分役立つから満足してる。ふふん。


親機を手にした義兄が皆に指示を出しているのが目に映った。その姿に嘗ての憧れ、ネズミに耳を齧られた青い猫型が重なった見える。おおう。そういえば四次げ…んんん空間収容の財布持ってたっけ。


何か気が抜けるね~。


手持無沙汰な俺は、いい感じに働いている魔道具の完成が間に合って良かったなとしみじみ思う。昨日はバタバタと慌ただしく落ち着かなかった。下手すれば未完で終わったぞ? はぁ~と思い出す。


いや~ホント、忙しかったよ。義兄が。


護衛が代わる代わる出入りするわ。巷で起こっている諍い事の経過報告だとか、ダルからの連絡とか。

まぁその間、俺は試運転と託けて遊んだけど。他にも作ってもらったモノも試しに飛んで楽しんだ。

ふふ、思いつきで作ったわりに素敵魔道具に出来上がったのは自慢したい。


うひひ、作っちゃった『踏み台』・・・あ、人生の、じゃないよ? 物理に踏み台だから。ただし、踏めば(人が)飛ぶ。ホップ・ステップ・ジャンプーってな。あくまでも飛行系魔道具だからね、身体強化すればかなり高めのジャンプができるはず。


要望とは違ったけど、これはこれで素晴らしい。もう大満足!


ただし、レティエルはお嬢様なので激しい動きは禁止。ちぇ。






手伝うことで調合の奥深さに触れ、俺には向いてないとはっきりわかった。

そう、細かすぎるしメンドクサイ。ぐるぐる素材と魔力を溶かす作業も、魔法陣に術式を組み込むのも大変だと思う。教えてもらった義兄の調合手法が特殊なこともあって、到底真似できない。


魔力を流して形を作るぐらいならいつでもやりたいけどねー。


義兄の用いる手法は『古い時代の形成魔法術』だって。


ーー人々が自由に魔力をぶっ放してブイブイいわせてた時代の手法に、ちょいアレンジを加えたもの。

作り方はいたって乱暴。魔力をガンガンぶっ込んで捏ねまくり呪文(術式)をねじ込む。

隠し味・・・もといカクシ配合に光魔力に闇ちょろちょろ。これで反発しあってた魔力が中和されいい感じになる。一手間も二手間も終始魔力のごり押し。やっと出来上がった物体が、魔力で形状変化できる魔合石と呼ばれるもの。


魔合石に適した素材は高魔力の魔物や植物。魔力系統が一つよりも複数の複合型であれば尚良し。そう属性が混じりっ気の多いと良いものができるとされている。

所謂、高級素材。

そしてあろうことか火、水、風、土の四系統魔力で素材をマゼマゼ、魔法陣(機能・起動などの術式)を加え、仕上げに光と闇をご所望と。非常に贅沢でお高い調合である。


高魔力の魔物っておしなべてツワモノな凶暴もの。退治するにも討伐隊を組んで準備万端で挑まないと返り討ちにされちゃう。それと基本、人海戦術だからね、必要経費が嵩張るのだ。


で、こっからが本番。


魔合石に特殊魔力(光と闇)を注ぎ込むと、あ~ら不思議。金緑色から金紫色に色調が変わり楕円形だったのがグニョンと形状の変化を誘う。


特殊魔力のさじ加減がモノ言う形成加工。そう色調変化がキモ。


魔合石に光と闇を加算し、四系統の余分な魔力を差っ引いたら、ピッカーンっで、色が変わる。配合が良い感じになると色を変えて合図してくれる親切設計。で、好きな形にイメージして形成しちゃう。

ちなみに金緑から金紫色の色調変化は飛行を現す。



義兄オリジナルは製図(魔法陣)にあるって。

自分の血を使うことで他ではない変化を齎すとか。


うぇ、サイコパスかよ。


よくわかんないけど、用いることで魔力の消費を抑え魔道具の耐久性が上がり複数の効果を付与できるって。




は? もしかして、これって固有の能力?!



血を混ぜて作り上げるのは二つの意味があると、個人情報を晒してくれた。

隠さなくていいのかと思わなくもないが、レティエルの情報を知っているのでお相子だよとクスッと笑った。くぅぅ、いちいちイケメンめ。


義兄は光魔力を有している。・・・知りたがりの義兄は自分で鑑定魔道具作って調べたそうだ。凝り性?

折角、特殊魔力をも有してても、魔力量が少ない(魔力のない)ので自由に使えない。

だが、帝国では魔力のない人でも魔道具や魔石を使うことで魔力を持つ人と同じような働きができる。お陰で義兄は不自由なく魔道具を作れてるわけだけど。


にしても、光って。全く義兄のイメージにそぐわん。どう見たって闇だよ、闇に支配され・・・支配してる人だよね? もう摩訶不思議。これを聞いた時、世の不条理さを嘆いたわ。


俺の心情を知ってか知らないでか。魔力系統の特性を理解していれば可能性は広がると言葉を紡いでくれた。義兄曰く光魔力は治癒系だがそれが全てではない。その特性は亢進だという。ちなみに闇は抑制。



「得た知識の検証を望んでも光魔力の入手は難しい・・・普通ならね。とはいえ私も魔量不足で調合しきれない。それを補ったのがレティの魔力、光も闇も含まれた魔石でね。とても重宝したよ。ふふ、驚いた? レティは火、水、風、土に光と闇も有する全系統持ちだよ。それに吸引と再現の能力まで。これほど調合に向いている人はいないよ?」

「え?!」

「レティも微量だけれど光魔力はあるよ? でなければ摂取した毒や精神干渉を無効化できないでしょ?」

「・・・ですよね」


うわお、ありました光。持ってた光。何かどっかの回線みたいだけど。流れてたか光。レア度が更に上がりましたか。ははは。掠れた笑いがこぼれるわ。


暗黙の了解で皆からタブー視されていたレティエルの魔力。義兄も個人情報だから胸に秘めてたとかふざけたこと言ってるけど、それ本人の前で言う? 

とはいえスパイの存在で打ち明けなかったわけだけど、ちょっと呆れた俺がいる。




「私には自由に操れる魔力がない。でも血筋(光魔力)が特殊でね。偶々その利を享受できただけだよ。・・・光を有したといえど治癒の力が発揮されなくて助かった。ふふ、体に流れる光魔力を使えばこうも調合が上手くいくとはね。一度は呪われた血だと怨恨の念に苛まれたものの、今では甘んじて・・・ふふ、恩恵に浴していると言い直すね」


突っ込んでいい? 聞いていい? 

多分、出生のことを皮肉っての発言だよね。

義兄が養子になった経緯は聞かされてないし、前世の記憶にもない。ちょっと闇が深そうだったんでノータッチでした。いつかそのうち教えてくれたらって思う・・・よ?


義兄が養子になったのレティエル6歳、義兄が8歳だったか。どこか諦念した眼差しを能面のような無表情さで向けてきたときは、マジで闇堕ちを案じた。

多分、俺では想像できない苦労を舐めてたんだろう。傷口えぐりそうだから身の上は聞かなかったけど。


これは一つ赦せたのかな?















今回は俺もお手伝いした。

最終工程を任されました。ふふふ。好きな形に作っていいって!


すごーい! 十六年生きてて一番のファンタジー、いただきました! ひょー!



でもドローンは、凶悪な魔物(昆虫系・毒持ち)と間違われ即座に却下された。何故だ解せぬ。




特殊な調合方法へと考えに至った義兄は天才だと正直尊敬した。

ほら、義兄って製作品によっては自分の血を垂らすでしょ? 何でかなってキモ…サイコパ…じゃなくて不思議に思ってた。だから聞いたの。

昨日は、話が途中で終わったからね、気になる。

次いつ聞けるかわかんないなぁ。



お読みくださりありがとうございます。



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