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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十三章

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偵察組の報告


二手に分かれて様子を探りに行っていたジェフリー達が戻って来た。

城内と都内に分けたのだが、何となく頭使う派と筋肉使う派に二分した感じ。


‥‥え、誰この組み合わせ考えたの、バランス悪くない? 


重大発表を控えた陛下や貴族の動向と、使節団の様子を探ったのがジェフリーとライオネルの頭脳組。

都内に不審な仕掛けがないか、街の様子と噂の収集に頑張って貰ったのがミリアとマリアの脳筋組。


‥‥本当は両親の様子や隠された神殿の場所を知りたかったけど、リアルスパイが絶賛侵入中(護衛の中に)だからねー。情報を抜かれるのも邪魔されるのも嫌だから、頼めなかった。


スパイが必ずしも敵とは限らない。とはいえ敵か味方かわからない相手と寝食を共にするのってスリリングだけど、視線が気になって鬱陶しい。


‥‥ん? 仲間を疑うのかって? うん、疑うよ。クレアの件があったんだ普通は疑うでしょ? 疑わし気は泳がせて自滅させろってのが我が家のモットーだしねー。


とはいえ。

クレアの一件は義兄のプライドを酷く傷つけた。

両親から守れと任されたにも関わらず危険人物を近づけたことを今も悔いている。

無事だったから気にしないでと言いたいとこだが、あくまでもそれは結果論。義兄の慰めにならない。

それでも他のスパイの存在を嗅ぎ取った嗅覚の鋭さは失態をバネにしたんだと思う。



『改良を重ねた契約魔法を使う時が来るとは運が良いね。ふふ、罰則の結果が知れて丁度いい』


輝ける笑みでまたまた恐ろしいことを。

どうしよう、また一歩闇に沈んだよこの人。メガイッテル。


『大丈夫。別に命を取ったりしないよ。ただ、死にたくなるほどの絶望を味わうだけだから』


これほど大丈夫じゃない大丈夫ってあるだろうか。

死なないけど死にたくなる絶望ってどんなペナルティー?!

えげつないペナルティーを契約魔法に付与した義兄の執念にゾワゾワした。


まぁ、落ち込んで気を病んでるかと心配したけど、安定の悪辣さに、義兄ってこういう人だよねーと妙な安心感を抱いてしまった。

うん、日常感って大事だよねー。



と、護衛達を見ながらゾワゾワな記憶を振り返ってた。

「報告を」の言葉で、わわっ、と意識を戻す。




こんな夜遅くまで働かされてる彼等の姿を見て『ブラック企業』の言葉が浮かぶ。ご飯も食べてお風呂も済ませた俺は、ちょこっと小さな罪悪感で顔を背けた。

そんな俺の心を知ってか知らないでか。

満面の笑みを張り付けたハイデさんが回復薬を一本一本と彼等の手に乗せて行く。

ラベルに『超・劇的回復薬!』と記されていたのは見なかったことにしよう‥‥。ジェフリーの引き攣った顔は忘れないでおこう。


‥‥ハイデさん、ソレ、寝ずに働けって意味じゃないよね? そんな鬼畜じゃないよね?

 

キレイなお姉さんの瞳にキラリ。捕食者の鋭さを垣間見た。


‥‥うわっ、趣味と実益を兼ねる人がここにもいた!


同じく捕食者の目を彼等に向ける義兄をちろりと見て後悔した。


‥‥ひぇー、えげつないペナルティーを期待して待ってるよね、この人!








雁首並べた犠牲者(護衛)の報告会。

眼ランラン。確実に君ら今夜は眠れないね‥‥ごめん、レティエルはお肌のために君らをおいて寝ます。






「城内の様子は?」


いつもなら部下の報告時、ハブられる俺も今回はちゃんと席を用意してくれた。

まぁ、レティエル抜きで親父を助けるのは無理だからね。

俺が主役。



「王都に到着した貴族は陛下へのご挨拶で挙って登城していました。ですが面会は許可されず側近が対応に右往左往しておりました。頑なに拒む陛下に対し、健康上の問題点を指摘する貴族が少々騒いだようです。ですが多忙を理由にされれば大人しくなるしかありません。それでも納得できない者は側妃様に面会を求め情報を掴もうと躍起になった模様です」


耽々と事柄だけを述べるライオネル。

俺も口を挟まずお利口さんで聞いている。


「そうですか。では側妃達の様子は?」


「第一側妃様の下に第一王女殿下の祝言と称して派閥外の貴族達が挙って面会していました。自分の息子を宛がおうとしていた貴族にとって突然の婚約に憤った者もいましたが、お相手は()()()()()()()()()()の息子です。しかも行方知れずだった子息とあって、貴族達の耳目を充分集めたのは多数の面会者で伺えます。出自に関して憶測が飛び交っておりましたが側妃様のご生家である侯爵当主が間違いないと請け負ったことで憶測は鳴りを潜めました。‥‥表面的には。そのエリックも頻繁に登城しております。名目は第一王女殿下との交流ですが王族しか立ち入れない区域で数回目撃されてますので目的は別にあるのでしょう」


「その目撃した者は‥‥」


「はい。()()()()()()下位貴族出の男です。出自は確かですので目撃情報は正しいかと」


あー、我が家のスパイ!


「エリックの出自を側妃の父親が認めたのですね。…‥成程、取引をしましたか」


‥‥え? あれ? 父親ばかり気にしてたけど、エリックの母親って誰? あ、いやヴァンダイグフの先代当主を祖父と呼ぶならその娘が母親だよね…‥でもあの家には王妃と兄の現伯爵当主の二人しかいないよ。

ん、もしかして他にいたの? そういえば先代好色王のお相手さん達は皆いなくなってたっけ。じゃあエリックの母親も? んんん、どういうこと?



「第二側妃はどうです」


「使節団のメンバーに第二皇女殿下がいたのが追い風となりましたか、側妃様に面会が殺到していました。今まで王妃様と第一側妃様の後ろで控えていた方だとは思えないほど注目を浴び、貴族が集まっています。第三王子殿下がご留学とあって、実母であられる側妃様に集中したとも言えますが、帝国と縁付いたのがご子息。それで次の王妃と目した者も少なからず。まだ候補者の一人のお立場なのにです。‥‥それを助長させたのが第二皇女殿下の不用意な言動でした。浅慮な者は婚約者確定と誤認したようです。皇女殿下の意図は不明ですが空位の王妃位を意識した発言を繰り返されるので、王妃位は第一側妃様と有力視されていたのが、番狂わせとどちらにつけば勝ち越せるかと貴族も混乱しています。ひとつでも有力な情報を得ようと両側妃様の下に詰め寄る貴族が後を絶たないと評した方が良いでしょうか。…‥陛下は黙秘されていらっしゃいます」


「使節団は?」


「はい、王都に滞在している貴族は既にお茶会を通じて交流済みでした。第一側妃様と第二側妃様はそれぞれ主催者としてお茶会を開かれました。第二皇女殿下はどちらもご出席。ですが第四皇子殿下が第二側妃様のお茶会に突如お出ましになられまして。‥‥第二側妃様に肩入れなさったと受け取った貴族が勢いづいた様子です。その第四皇子殿下はお供の方々と若手貴族達の交流を積極的に行っていらして、その中にエリックもいたようです」


「え? 第四皇子殿下って招待されてないお茶会に参加したの? 馬鹿なの、馬鹿でしょ?!」


皇子の軽率さに思わず叫んじゃった。だってそれぐらい招待されていないお茶席に出るだなんて非常識も非常識だよ? 常識のなさを自らお披露目しちゃったじゃん!

ああ、馬鹿皇子ってどこでもいるんだねー、ちょっとお付きの人達が気の毒になるわー。

そんな常識の無い皇子を見て、その場にいた人はどう思ったんだろねー、いやいや勢いづくぐらいだから似た様なもの? 大丈夫か王国貴族。


因みにこの場に居る者は第四皇子は非常識の馬鹿者だと見解は一致してる。良かった常識が通じて。


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