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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十二章 分水嶺

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⑬・密命ー2


「あの(エリック)はダシじゃ。いや、餌じゃのう。餌として獲物を釣ればよいだけじゃ」


突如の餌発言。いやまったくもって皇子が裏切った場合の、想定に繋がらないんだけど。単なる王女の婚約相手ってだけで接点はなかったはず。それがどう関わってくるのかまともな説明が欲しい。


これでは更なる困惑を招くだけだよ。そう感じたのは俺だけじゃない、はず。義兄がスンとした顔でお祖父ちゃんに向き合った。


「…‥説明を求めたいところですが、先ずは確認させてください」


どうやらタダでは口を割らないケチ(お祖父ちゃん)に対抗して、憶測をぶつけて揺さぶる気だな。お得意の推理しちゃう? しちゃうよね? 勿体ぶってるお祖父ちゃんの気を削ぐんでしょ? この場を支配したいんでしょ? 


今、義兄は何かしら考えがあって藻掻いてる。そんな気がする。それだけに珍しくなんやかんやとお祖父ちゃんの言葉を躱す姿を見ると、おいそれと差し出口はたたけないわ。


普段の義兄って親父もだけどお祖父ちゃんや叔父さんに逆らったりせず弁えた人なんだよね。

親父に対しては絶対服従らしい。意外だけど実はアレでも忠犬タイプでした。


で、その義兄が何か知らないけど、頑張ってる。

俺でもわかるぐらいだから、勿論、お祖父ちゃんは気が付いた上で愉しんでるわけ。もう性質が悪い。まぁ、真っ向から否を唱えていないから許容範囲だと思うよ。


お祖父ちゃんが気分を害しなくて良かったー。


「おう、構わんぞ、ラムや。どんな話でも良いで好きに話せい」


ニヤニヤと余裕ぶっこくお祖父ちゃん。愉しそうに嗤って頷いた。

でもね、でもね、その余裕も今だけな気がする。好きに喋らせるの? 早まってない? 情報の価値があるうちに交渉した方が良いと思うなー、お祖父ちゃん。

ほらっ、ニヤリって、今、ニヤリって嫌な感じに口角を上げたから、義兄。



どうでもいいけど君達似てるよね?  

似た者同士仲良く腹割って素直に話し合いすればいいのに。時間は有限なんだからね、まったく。俺が半眼で呆れていたら、ボソッと「孫と戯れるお館様の図」と呟く爺。やだね、面白がってるよ。



「エリックは伯爵家の養子となり今や王国貴族。恐らく王女を娶るに相応しい爵位を叙爵されることでしょう。そしてその男を餌に誘き出されたのが皇族」


何だろう、朗らかな感じで解説を始めたけど‥‥顔、顔、何その物騒な顔?!

普段は隠してる嗜虐性と忍ばせた悪意が、ひょっこりどころかコンニチワーしてるよ?!

やばい? この人ってやばい? 得体の知れない恐怖が、地味に精神をえぐりにきたわ。



「お義祖父様の主導で」


今度はお祖父ちゃんの精神をえぐりに懸かった?! 

名を出された一瞬、ホンの僅かに右手がピクっと。感情を揺らしたのがわかる。


‥‥まさかビビってないよね? 

お祖父ちゃんの表情からは恐怖、ではなく、驚嘆に近い感情が見て取れた。


「帝国が王国に賠償を求める事件がこれから起きるのですね。エリックの手で」


義兄はお祖父ちゃんの表情から正解を引き出していく。限られた情報から正解に辿る就こうとする洞察力と畏れも知らない胆力にただただ、慄いた。


義兄が味方でホント良かったともう何度思ったことか。


「ですがあの男は何も知らない、下手をすれば一切の関りもなく罪人となる。後ろ盾である狡猾爺が足掻く間もなくですね。漸く手にした栄誉を奪われるのです。これは間違いなく一族郎党死罪は免れないでしょう。これならば溜飲も下がるかと。ふふ、成程、これはお義祖父様もお人が悪い」

「は??」


ええ?! な、なんて?!


なんのこっちゃ?! なんのこっちゃか餌認定されたエリックは家族親戚皆さんこぞって、地獄めぐりの旅にご招待されたらしい。


うーわー、地獄! 地獄を見るね! 地獄をめぐるツアーだよ! 

鬼だよ鬼。渡る世間は鬼だらけだ。


「憶測ですが」の言葉を遮ったのは余裕の笑みを失くしたお祖父ちゃん。正解だと小さく頷く。


既に罠は仕込まれてたらしい。


「獲物はもう釣れました。釣った獲物は、新たな餌となり大物(王国)を釣り上げる。今回の使節団が組まれたのも、協力者の根回しが終わり準備が整ったからですね」

「‥‥ぬう」

「え?」


今度は何?!


むにゃむにゃと奇妙な音を口から出すお祖父ちゃん、ちょ、壊れた?

そんなお祖父ちゃんを気にすることなく義兄の口は止まらない。




序でとばかり疑念を述べますと新たな爆弾を投下する気だ。鬼だな。


「タッカーソンの件です。事件を知った当初は世間知らずのお坊ちゃんが唆されただけかと思っていました。ですが齎された情報では同僚の嫉妬心が引き起こした事件と一旦は、思考誘導されました。ふふ、一旦はですが。‥‥そうですね、可笑しな点は幾つかあったのです。見落としたのは私未熟さ故ですのでそれは素直に甘んじます。‥‥軍は潜入捜査上未然の犯罪情報も耳にするでしょう」


義兄の視線がピタリと再びお祖父ちゃんを捕らえた。


「お義祖父様、いつからでした?」

「ぐぬ…‥」

「タッカーソンの子息が狙われたのは、偶然‥‥‥ではありませんね。それも仕込みでしたか」

「え?」


は?! どういうこと?!


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