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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十二章 分水嶺
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⑧・密命ー1

「‥‥話は分かった。で、ティはどうするのじゃ?」


‥‥え? 本当にわかってる?! で、ってなによ?!


その返答は如何なものかと。事の重大さを軽くあしらわれたと落胆する。

せめて協力者とコネのある人に繋いでくれたらと落胆が失望に変わった。


「お義祖父様それでは」


明かに呆れた口調で。


「事態を重くみたレティに説明が無いのは酷です。お義祖父様に無下にされたと()()()()()()()()()ますが宜しいのですね」


「誤解され疎遠になってもよいのであれば言葉が足りなくても宜しいかと」追い打ちを忘れないのがらしいよね。


だよねーだよねー。流石、義兄わかってるー。

横でうんうんと頷く俺の後頭部に鼻息と共にボソッと小声が『でないとお嬢様、勘違いで暴走しますからね』‥‥ほぉぉ、背後霊かな?


「のおおおーーー」


お祖父ちゃん、近所迷惑! 

どうやら孫に無視される姿を想像したみたい。だからって叫ばないでよ。






疲れた表情なのは、年寄りの冷や水ではなかろうか。


「まぁ、そう心配せんでよい。手順があるんじゃて。儂の作戦の成否次第で先ずはそこからじゃ。おお、そうじゃぞ、儂がこん作戦の要じゃて。フォフォフォ」


でたな宇宙怪獣。‥‥じゃなくて、どういうこと?!


「その前にもう一度尋ねるが命を取られるのは当主だけじゃな? 奥方や子に影響はないで間違いないな? 情報提供者は信用に足る相手か? 騙され偽情報を掴まされたりはしておらんか?」


入手経路を怪しみ信憑性を疑うのは仕方ないけど、とにかくウザい。

でも、母さんやレティエルに義兄の身?を案じてだと思うと嬉しい気持ちが。心配させて不謹慎なこと言っちゃてても、愛情を感じる俺は嬉しさが勝る。できれば親父も仲間に入れてくれたら尚嬉しい。





情報源の説明は『契約に関わった故人の懺悔』よりも『一服(自白剤)盛りました』で納得された。自白剤最強(最凶)


でもね、でもね。


「もし、まやかしの術が施されていたらと思うと不安になります。国王は姑息な手を好みますので油断できません」


悪い顔して余計な情報を足さないでよー! ほら、ほらあ! 

見てよ見てよと心ん中で指を差して義兄に視線で訴える。


「うぐぐ、うぐ、ぐぐぐぅ」


室内に響く汚い唸り声。大魔神がね、切羽詰まらせてるの。

暫く頭を抱え唸ってたけど、ガバッと顔を上げ俺達を凝視する。その血走った目が…怖いです。


「ぬはは、ラムよ、儂を騙そうとしてもそうはいかんわい。ティを脅かすものをお主が容認しておるはずがなかろうて。さては策を持っておろじゃろ? 言うて‥‥い、いや、その前に確認じゃ、ラムお主、皇帝陛下に忠誠を誓っておるじゃろ?」 

「…‥‥」


にっこり貴族の仮面で笑うだけ。


えー、とうとう忠誠心まで持ち出したよお祖父ちゃん。そりゃ隙あらば交渉してくるお腹ん中真っ黒クロスケな義兄だもの。契約魔法の話自体、嘘だと思ったの? まぁ確認したくなるのも無理はないけど、この人自国の王様でも王子でも、忠義は適宜にって宣う人だよ? 適宜に忠誠誓いそうだよね? 皇帝陛下に。

聞くだけ無駄だと思うわー。



ぐりゅんと顔だけ俺に向けたお祖父ちゃんは、


「ティはもちろん忠誠を誓っておるじゃろ?」


え? それ聞く? 

特に思うこともない俺は義兄に倣う。


「…‥」

「お、お主ら‥‥そ、そんな‥‥」


電池切れみたいにガックリと項垂れ、背もたれにドサッと身体を預けたお祖父ちゃん。

あ、燃え尽きて真っ白。


「こりゃこりゃ若人方。年寄りをそう虐めてはいけませんぞい。爺は優しく労わるもんですぞい。戯れるのもほどほどになされい。ほれほれお館様が燃えカスですぞい」


わーホントだ。








「良き隣人として帝国に誠意を見せたいと思います」

「あ、(義兄)に倣えですわ」


左隣が義兄だからね。

前述のお祖父ちゃんの指示に従わなければ処分の(くだり)を撤回させた義兄の交渉力。ただただえげつない人だと再確認したよ。うん、交渉は義兄に任せよう。



「うぐぅ‥‥ この際じゃ全て吐け。儂も密命を教えよう」


血反吐はきそうな形相で言われてもねぇ。






「儂の役目はシア(カレンシア)と魔力を持つ者らを連れ帰ることじゃ。まぁ有能な者であれば魔量が足らんでも引き取るがのう。シアの替え玉も側におるからいつでも確保に動けるんじゃが‥‥その契約魔法はちいと困る。アドルフと共におるんじゃ替わればわかるじゃろう。しかしアドルフに知られんよう動くとなれば難易度が上がるわい」



俺と義兄はお互い目を合わせ頷き合う。


「お義祖父様、それについて考えがあります。義父上だけではなく三公爵も上手くいけばこちらに引き込めるかも知れません」

「ええ、お祖父様」


戦わずして王城を開城させるために俺の能力を使うのは吝かではない。目指すは十五代将軍みたいな江戸開城な展開。それに親父を助けるついでだし。これで恩が売れるなら売りたい。大売りで。

勿論、売りつけ時の交渉は義兄。営業トークで煙に巻いちゃえ。



でもね、その前に聞きたい。




「お祖父様、どうしても王国を従わせたいの? それしかないの? 国王陛下を退位させ第二王子殿下を即位させて同盟を強化すれば…‥」


お祖父ちゃん、どうしてそんな辛そうな顔するの? 

何だか泣きそうな顔。

ザクワン爺ちゃんも目を伏せてるけど悔しさが滲んでる。

二人にそんな顔をさせる理由がわからない俺は縋るように義兄を見る。


‥‥え、義兄も辛そう、え、なんで?


意味がわかんなくて落ち着かない。どうしたのかと口を開く前に義兄が。



「お義祖父様、レティに、いいえ、ザックバイヤーグラヤス公爵家に恥を雪ぐ機会をお与えください」


畏まった義兄の口からとんでも発言が飛び出した。




は?! 恥を? 雪ぐ? な、何のこと?!


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