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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十二章 分水嶺

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⑤・ジオルドはギルティ?

「流石はお義祖父様の部下ですね。王弟(ジオルド)の行方もご存じで?」


ガザを飼っていることでもわかるように、お祖父ちゃんの情報収集力は侮れない。覗き見スキルで楽々ゲットしちゃってそう。



「さてなあ。儂は軍部の者が欲しがっとるとしか聞いておらんからのう」


すっとぼけの演技が嘘臭い、お祖父ちゃんってば。

でも居場所を知ってたら隠すのも変だよね? やっぱ、お祖父ちゃんの情報網でも掴むのは難しいのか、残念。

ところで、お祖父ちゃんに教えた軍の人って、もしかしなくても上層部の人? お偉いさんじゃん。

そんなお偉いさんに『王様の弟君が欲しいんだけど、連れて来てよ』って他国の王族のスカウトを命令されたのかな諜報の人。上の無茶ぶりあるあるだよね。でも断られたらどうするんだろう。口止め料払うとか? 攫っちゃうとか? あ、流石にそれは不味いか。

軍がどうしてその能力(ジオルド)を求めたのか俺にはわからなかったが、義兄は便利な能力と評してたっけ。



お祖父ちゃんはジオルドの所在を聞いてきた真意を謀ろうと気負っているのが身を乗り出した姿勢から伺える。でもね、でもね。


「軍が王弟を取り込むのは()()()()()()が彼を邪魔者としたからですか、お義祖父様。それともまさか軍の諜報員が、十数年も前に卒業した()の方の能力を今頃掴んだなどと()()()()()()さが露呈するような戯言申しませんよね? それとも人身売買の咎で身請けし、飼い殺しを? ですがそれも手詰まりでは? こうもあっさり神殿に横取りされたとなれば、潜入させていた意味がありませんね。情けないではありませんか? ふふ、まぁ軍を出抜くのは魅力的で面白いでしょうが‥‥」


ホラホラ! 煽ってるよこの人!!

何考えてんの?! ちょっと見てよ、お祖父ちゃんの顔。半分大魔神だよ! 怖いって。


「うぬぬぬぬぬ、して、ラムよ何が言いたいのじゃ?」


うわー地を這うような重低音! おまけに怒気を孕んだお祖父ちゃんから熱気が?! 隣のザクワン爺ちゃんからさわさわーって冷気が。わっ、いい感じ。


「単に排斥を望まれるのでしたら、私にお任せ下さいませんか? ‥‥何も企んではいませんが、私に救援の嘆願をした者と一時的主従の契約を結びました。このまま静観では契約違反の誹りを受けるでしょう。ですが…」


あ、顔色を窺うフリしてるー。嘘っぽいー。


「私にお任せ下されば、この手で神殿から奪還致します。お義祖父様ご許可くださいませんか?」


プシューって音がしそうな勢いでお祖父ちゃんの熱気が引いてく。こういうノリ好きだよねお祖父ちゃん。


「フォフォフォ、ぬかしおったな?! フハッ! 好きにせい!」


どっかの宇宙怪獣みたいな鳴き声のお祖父ちゃん。よく義兄の提案を受け入れたよね。


「ではお義祖父様、双方の利益のため幾つか質問に応えて下さい」

「ぬ?」


涼しい顔で必要な情報を抜き出しにかかる義兄。

あ、主導権、義兄が握ったね。



それにしても、王城のどこかで監禁中のジオルドを奪還するってよく言い切ったね。最近守備が厳しくなったって言ってなかった? 果たして勝算はあるのだろうか。

‥‥大風呂敷を広げて大丈夫? と隣に視線を向けるとパチンとウインクされた。まつ毛なが-。


うん、大丈夫らしい。






ジオルドの悪評‥‥女好きで遊び人ってやつね。国政に興味も担う資格もありませんって態度で誤魔化していたけど目の上のタンコブ?だからか、人身売買の闇ルートを隠匿するためなのか、何にせよ目障りだったのだろうと。恐らく魔力込みで隠蔽目的?の神殿が先手を打って確保に動いたと義兄はみている。


そういえば神殿こそ魔力を必要としてるとかいってたね。ってことは?


「ジオルド様を嵌めた犯人って、まさか神殿なの?!」


俺の推理に義兄は肩を竦めて答えをはぐらかした。


「ふふ、属国に対して徹底抗戦をするのが()のお方です。国や陛下に対し理解し難い執念を抱いたお方ですからね。今の帝国にとっては邪魔な存在と言えるでしょう」

「おう、見目は優男じゃが好戦的な一面を持つ男じゃからのう。王弟でなければ‥‥」

「じゃあ、やっぱりジオルド様は邪魔だったのね。属国化を邪魔させないように、協力者と神殿が手を結んだのかしら?」

「それはちがうぞ、ティや。協力者の計画は人身売買の咎人に仕立て上げて軍に引き渡すことじゃて。それが、ティらを巻き込むことになるとはのう、儂も思わなんだわ」


ガックリと項垂れたお祖父ちゃんに俺は気にしないでと慰めた。あれは人を攫おうと依頼した者が悪い。お祖父ちゃんは悪くないよ。そう言うと目を真っ赤にして涙ぐんだ。あー年寄りって涙もろいよね。ごめん、メンドクサイや。


「あの場にギルガがいたのは人身売買の証拠を得る目的もあってね。実弟の件でかなり焦っていたとはいえ偶々居合わせただけのレティ達も仲間だと疑うのは‥‥万死に値する罪です。‥‥騎士達(実行犯)を軍に引き取らせ、自分はレティ達を探ろうと同行したと白状したよ。失礼極まりない男だが肉壁ぐらいの価値があるから生かしてはいるが本当に肉壁になると後始末が面倒。ふふ、肉片も残らず燃やせば済む話だったね」


ひゃーーーーーーー!

最後のセリフが物騒すぎーーー! 危うく恐怖で記憶を失くすとこだった。あー、あぶな。

うん、ギルガの(くだり)から話を忘れても問題ない。俺の精神状態を保つためだ綺麗さっぱり忘れよう。


それにしてもジオルドってオークションで買い取った子をひっそりと逃がしてたんだよね? 本人もダルもそう白状してた。だったら人道支援じゃないの?! それで咎人扱いは酷すぎない?


「いや、ジオルド殿が指示したのか部下が勝手にやったのか判断はつかぬがのう、確かに奴隷契約を解除されて自由になった者や邸の使用人になった者もおったが、転売されたのか行方不明になった者の方が多いんじゃよ。あやつは魔力保持専用のオークションの上客じゃった。同胞に対しての非道な行いをのう‥‥あやつを許せん輩が多いんじゃて」


あ‥‥もしかしてそれって軍の人なのかな? えっとぉ、まさかのギルティ? 軍のスカウト云々ってもしや…‥。サーと血の気が引いていく気持ちの悪さを存分に味わう。


公に罪人にして‥‥一体どうする気だったの?!


報復を望む心の病みを垣間見た気がして、更に血の気を失った。



‥‥ソファーに座っててよかったー。


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