【別視点】ー②
―――概ね予想通り。
報告を聞き終えたランバードの感想だが、気分の良い話ではない。
(公爵家に関わります。レティの意向を確認しないといけませんね)
レティエルの心中を思えば気乗りしない。損な役割だとランバードは溜息を零す。
「それと、閣下の匿われ場所は、王家専用の神殿でしたね」
初めて耳にした王家専用。そんな神殿があったのかと不思議に思った。
それにしても・・・と。あの王家と神殿が考えそうなことは十中八九、禄でもない。人目を憚る神殿は犯罪の温床と化す、いや既に化したか。神殿嫌いのランバードの想像は、酷い。
(冤罪で有罪にした元王族を王家専用の神殿に匿うわけですか。それはどのような場所なのでしょう)
誰を神殿に送り込もうかと、部下の顔ぶれを思い浮かべる。
ジオルド絡み。
ダルが適任だが、彼を派遣すると、ジオルドの囚われ先が帝国軍に代わる。それはそれで困・・・らないと気付く。別にどうなってもいい相手だった。ランバードにとってジオルドの価値は、底辺だ。
(ダルを動かすのに、丁度いい餌ですね)
ジオルドの価値が、ちょっとだけ、上がった。
『判決は終身刑。心神耗弱のため刑が減軽。身柄は指定貴族の領地に護送したと偽装の上、王家専用の神殿に』・・・王家と神殿がグルになって、ジオルドを表舞台から引き摺り下ろした。
(王位継承権のない、悪評の絶えない元王族。閣下の価値はその能力と魔力といったところでしょうか)
疑念を募らすと嫌な予感がする。ランバードは早急に手を打とうと決めた。
一通りの報告が済み、漸く本題だ。
「ギウ、お前に見せたい物があります・・・これに見覚えは?」
ギウに手渡したのは『レティエルが魔力を流した契約書』である。受け取った彼は、驚きで目を見開いた。信じられない物を見たと、表情が雄弁に語っていた。
「・・・若君? 俺の居ない間に、こんな物を手に入れたのですか?」
「知っているのですね?」
「あ・・・いえ、俺の一族が使っていた文字に似ていますが・・・」
食い入るように文字を追う目。その姿を見てランバードは、この男を拾って正解だったとホッとする。
彼の特殊な生い立ちが、まさか役立つとは。世の中わからないものだと気を良くしていた。
(これで契約書の出処が掴めれば、後の仕事が楽になりますね)
この契約書に記された『ランチェスター・グスターファルバ―グ』を炙り出すと決めたランバードは、ギウの話に耳を傾ける。
―――この人物が、帝国の土産に相応しい人物であることを願って。
お読み下さってありがとうございます。
ブクマ、いいね、評価いただけると嬉しいです。