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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲

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お祖父ちゃんの部下ー①

強張った表情が、張り詰めた空気が、義兄の緊張を教えてくれる。

いつもの嘘くさい笑みも、感情を読み取らせない彫刻のような微笑みも、対峙した相手が震撼する悪魔の笑みも、今は鳴りを潜め大人しい。それほど言い難い話なのか。聞かされる俺も身構えて余計に力が籠る。


『この事件の背景は未だ調査中』と俺に断りを入れるも、話を切り出す前にジェフリーがガザと共に戻って来た。ここで義兄の話は終わりらしい。


ここから先の報告はガザが請け負う。聞けば、義兄も知らされていない内容。ガザは二人同時に伝えるようお祖父ちゃんから命令されたそうだ。あっ、この時点でジェフリーはお払い箱ね。ごくろーさん。


その前にお茶を入れ直し(もち、義兄が)ガザにもお茶を進める。

これから、話の主導権はガザに移るのだ、お茶ぐらい飲ませてあげるよ?

だって、喉乾くでしょ?




コクリとお茶を味わうガザは、昨夜までの影の薄さが嘘のように今は存在感を全面に出している。どうみても下働きの男に見えない。威厳のある風情は一介の武人だ。今までの姿は偽装なわけね。


…‥凄いな、まるっきし別人だよね? ここまで変わるのか。


俺は諜報員の演技力を舐めてた。これじゃあ、騙されても仕方ないよね…。








ガザはお祖父ちゃんの文書を俺達に見せる。この書がガザの証明となるらしい。食い入るように見つめる義兄の様子で、本物だと実感できた。


『私の話の後でギルガを召喚なされば話に深みがでますよ?』サラリとバラされたギルガの立場。こいつも寄越された側だったか。


まぁね、ギルガとヴォグルフは兄弟と聞かされた時点で薄々気づいてたよ?

だけど、一言ぐらい教えてくれても良かったんじゃない? 事情が事情でもね。

ちょっと複雑な心境‥‥。






「軍部にリークされた情報がオルレアン様の逆鱗に触れたことで事態が‥‥」


‥‥うわぁぁぁぁぁぁ、聞きたくない話きたーーーーー!!


衝動的に耳を塞ぎたくなる。やると怒られそうだからしないけど。取り合ず神妙な面持ちで誤魔化せばいいか。あ~ヤッカイゴトな匂いしかしない。






激オコなお祖父ちゃんが間抜けな軍部に任せられるかと、捜査は儂がやるから主導権を寄越せと暴れたらしい。

だが、如何せん容疑者の縁戚。表立っての介入は叶わず荒れ狂う。それをどう交渉したのか不明だけど、皇帝から許可を捥ぎ取ったそうだ。


‥‥えぇぇ?! 皇帝、何許可出してんの?! 国のトップの緩さに驚愕だ。

だがそこは狡猾な皇帝、裏がある。義兄は警戒心露に呟く。



「若君の仰る通り、オルレアン様は皇帝陛下より課題を出されたと聞き及んでおります」


ガザの表情に変化はない。が、どことなく楽しんでいるのがわかる。性根が悪いからなのか、肝心の課題を教えない気だ。

義兄はグッと口をへの字に曲げ憤懣やるかたない様子。だが、敵対心を抱けない相手だ、多分精一杯の意志表示? 珍しい。



はぁ、そこはかとなくお祖父ちゃんの…皇帝の罠に嵌った気が。

脳裏に沸いた嫌な予感を追い払うように、俺は頭を軽く左右に振る。嫌な予感ほど当たり易い‥‥とまた不吉な予想をしてしまった。


…‥何となくだけど、詰んでない? 俺達。




義兄は仏頂面全開。一方ガザは領主の身内相手に気にした様子もない。それが俺達に一線を引いた態度なのだろう。不躾に向けられる鋭い視線が、俺達は自分の主ではないと言外に語っている。

対峙した今ならわかる。これがこの男のあるべき姿なのだと。

幾ら義兄が部下の采配を許された立場であっても、こいつは違う。主はお祖父ちゃんであってそれ以外はない。外されない視線からこいつの強い意志を感じる。


…‥ああ、監視対象は‥‥俺達だったのか。そう悟った。





俺は鉛を吞まされた(飲んだことないよ?)ような重苦しさを誤魔化すために美味しいマカロンを口に入れ咀嚼するも、口内で淡く蕩ける旨味がまったくしない。パサつきもたつく喉を潤すため紅茶を一口含む。…‥うえぇ、味がしない。


どうやら緊張で喉が渇いてたのか。口ん中、カラッカラ。


義兄が空いたお皿に追加のマカロンを乗せてくれた。でもね、でもね、気分はマカロンじゃないよ? 違うお菓子がいいかな? 俺の欲するものを読み間違えた義兄も、意外と緊張してたっぽい。おお珍し。




ふぅぅぅーーーーーー、よし! 切り替え切り替え!


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