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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲
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サロンにて

誤字報告ありがとうございます。

「お義兄様、説明してくださるのでしょ?」


穏やかな日差しの昼下がり、俺は義兄にサロンに招かれた。


約束の厳守だと強請れば、何故か説明の場は優雅なティータイムの場に。

昨夜の顔ぶれに、用心深さを表す結界と盗聴防止の魔道具。サロン内では護衛のハイデさんとライオネルが扉近くで待機している。


‥‥この光景、見慣れちゃったね。



「ふふ、元気だねレティ。その様子だと昨夜はよく眠れたみたいだね?」

「うっ、はぁい‥‥おかげさまでぐっすりと眠れましたわ」


うう、そうなのだ。昨夜のショッキングな話を知ってもベットに入れば即寝落ち…‥秒でした。『ハイデさん一服盛り?』の懸念はハズレ。単なる寝つきの良い健康優良児でした。


それよりも、義兄やハイデさんにジェフリーの三人。疲労した顔のわりにスッキリしてない? ライオネルは目の下くまちゃんだけど‥‥。







さて、話を始める前に。


邸の侍女ちゃん達がお茶の準備をするのはいいんだけど。

ちょろちょろ義兄やライオネルをチラ見して、手が遅い。

侯爵家のくせに侍女ちゃん達の質が悪いよね?! 

義兄に色目を向けた侍女ちゃんをジェフリーの凄みのある睨みで撃沈か。侍女ちゃん震えてるよ? 序でに俺も怖くて震えるよ?




ここでお茶菓子として出されたのは帝国と王都で人気のお菓子たち。

実はこれ、元はお家で作らせたお菓子。帝国で商品化させ販売しているのだ。


この世界、砂糖や蜂蜜は高額で、甘味に手が出せるのはお貴族様だけ。

美味しいお菓子を研究したくても高額材料をばかばか使う馬鹿はいない。

精々、飲み物に入れたりお菓子にまぶしたり。その程度だった。

そもそも料理人が砂糖を使ったお菓子を知らず、作れるわけがない。


そんな夢も希望もないこの世界に俺はデザート革命を起したのだ。なあんてね。

まあ、食べたいスイーツを『こんな感じの、作ってね♪』って丸投げして。

昼夜を問わず試行錯誤の末、俺の甘ちゃん舌を唸らせる品々を完成させたのは料理長を筆頭に奮闘した料理人達。俺が満足するまで厨房は死屍累々だったねぇ‥‥(遠い目)


お金も砂糖もじゃんじゃん使って料理人達の舌を肥えさせたおかげで王室に献上できるレベルまで腕を上げたのは‥‥怪我の功名?



王国の甘味事情は壊滅で、マシだったのは帝国。

砂糖の使い方を知った料理人がいてレシピも多少はあった。商品開発も帝国の方が下地があるだけに任せやすい。経緯はもう忘れちゃったが気が付けば帝国の伯父さんが商会を立ち上げて流通も整えてくれた。



…‥そう言えば、義兄が養子として公爵家に来た時、とにかく仲良くならなきゃってテンパって。打ち解けるには共同作業がいいかな? って。一緒にお菓子を作ろうと提案したんだっけ。結果は初めてのお菓子作りに関わらず義兄は上手に仕上げていたね。手先の器用さがお菓子作りに発揮されてたわけだ。

‥‥レティエルは食べ専だからね? 上手じゃなくてもいいの。


その後も何度か一緒に挑戦したのに。俺だけ料理長のガチ泣きに負けてアイデア提供者のポジに納まった。

『危ないから止めて下さい。俺を殺す気ですか』って縋りつかれちゃったら、ねぇ。ホント、マジ男泣きしてたっけ。


義兄は偶に作ってたわ。『レティは何が食べたい?』って。まぁ作ってくれるのならと、お嬢様の我儘を発揮して無茶ぶりしたね。


‥‥そうだ、あの頃から義兄って厨房に立ってたわ。‥‥公爵令息なのに。何かごめん。



義兄に無茶ぶりしたら親父は俺に無茶ぶりしたな。

ラインナップを増やせとか、市場に受け入れやすい商品化にしろとか。子供に対する要求高くない? それなのに、商会は帝国の伯父さん任せ。

これってもしかして、レティエルの悪目立ちを避けるため?

今だ理由はわからない。

まぁ、面倒なことは伯父さんが取り仕切ってくれて助かるし、売り上げの一部がレティエルに入ってくるので何の問題もない。寧ろありがたいぐらいだ。


俺がぼや~と思い出している間に漸く準備を終えたか。

やけに時間が掛かったのはイケメンな義兄にポォ~としたからだろう。

イラつきを隠さない(見た目クリスフォードの)ジェフリーが邪魔者(侍女達)をサロンから追い出した。容赦ないね。




‥‥うわぁ~~~これはまた!!


目の前の光景にソワソワと心が躍って落ち着かない。

卓上に目を向け、義兄をちろり。再び卓上をグッと見入って、義兄をちょろ。

得意技の上目遣いで訴えてみた。


「ふふ、いいよ、レティ。どうぞ?」

「お義兄様いいの?」


義兄のお許しが出たのだ。もう、遠慮はいらないよね?

卓上に所狭しと並べられたお気に入りのスイーツたち。ガッチリ目と心と胃袋を掴まれた今、口に頬張ることしか浮かばない。


「ふふふ~、さっそく♪」







この世界に馴染みのないお菓子をプレゼントに、って発想が受けた。ちょっとした贈り物に、お土産に、可愛らしくラッピングされた小振りなお菓子。

先ずは視覚に訴えた。食べちゃたら病みつきになるのはわかりきってたし。

だって、砂糖とバターだよ? 油ものだよ? もう脳みそ狂喜乱舞だよね?

俺は調子に乗って小麦と油と砂糖で思いつく食べ物を提供したのである。


因みに、母さんが王国の社交で人気があったのは帝国貴族で商会の一族ってアドバンテージのおかげもある。魅力的に見えたんだろうね、母さんの手土産。

人心掌握が胃袋掌握だったけど。


とまあ、話は逸れたが、要は目の前のお菓子は前世の記憶からのパクリ。

転生者が他にいれば何か言われそうだけど。今のところ誰も何も言って来ない。

転生者いそうなのにねぇ。知ってるお菓子世に出して欲しいなぁ。出してくれたら商会でレシピ買うよ? 買っちゃうよ?



余計な事を考えちゃった。

先ずは大好物のバウムクーヘンを頂きましょう!

あ~このバウムクーヘン作り出すの大変だったんだ~俺以外が。結局、専用魔道具を開発してもらったっけ。特殊過ぎて、焼き上げが大変でしょ?

ああ感慨深い。



お目目キラキラ輝かせて、一口ぱくり。


‥‥ふぁ~、これ、これ、この味! 美味しー!!



「ふふ、レティが満足で嬉しいよ。食べながらでいいから話をしようか」

「ふぁ~い、モグモグ、ごっくん」


淑女ならぬ態度にしかめっ面なクリスフォードモドキめ。お前相手だからいいんだよ。

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