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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領

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まだまだ

実際触れた魔力は極僅か。

視覚からの情報を遮断され、いわば触診をしたわけだ。しかも魔力で。


これって一種の魔力感知能力らしい。

よくある感知型と違うのは、自分の魔力に触れさせないと感知できない点だ。

一般的な感知能力は訓練次第で取得可能とライオネルが教えてくれた。


『魔力量を増やす目的で行った訓練で、魔力感知能力が上がったのです。魔力量は増えませんでしたが』と遠い目で語ったその顔は哀愁が漂っていた。


‥‥あれかな、触れてはいけない悲しい過去か、そっとしておこう。





これから先の話は禁忌に抵触の可能性があると危惧した義兄は俺とジェフリーを含めた三人に結界と盗聴防止の魔道具を敢えて使用した。


用心に越したことはないけど、ジェフリーは良いんだ‥‥ふぅん。



胡散臭いイケメン笑みを止めた真顔の義兄はいいとして、クリスフォードの面を眺めながらは、正直言って‥‥むかつく。

中身がジェフリーでも‥‥どちらにしろむかつく。


仕方が無いのでジェフリーの姿に戻ってもらい、小箱の魔道具で幻影術を作動させた。邸内ではクリスフォードの擬態を続けないといけないのだ。負担を強いるがこればっかりはねぇ。人払いさせていても用心に越したことない。


‥‥この邸、で思い出した。義兄がここを拠点にと決めた理由が、生存がバレたレティエルの逃亡先が帝国と思われている…‥えっと誰に?

待ち伏せの可能性が高い今‥‥えっマジで誰に? 迂闊に動きたくない。情報収集もある。そう言われれば計画の変更は仕方ない。


まさか悠長に王国内で、しかも仇敵?のクリスフォードが統治する領地‥‥奴の邸に不法占拠するとは思いつかないよね? 何があっても迷惑をかけるのはクリスフォードだし。目晦ましになるし。情報規制さえ気を付ければ当分はいける。

‥‥はず?









「お嬢様は魔法陣を覚えていますか?」


‥‥無理。一つも覚えていない。


俺のどよんとした雰囲気を感じ取った義兄が賺さず、


「レティ、覚えなくていいからね? そもそも魔法陣は書き慣れていないと初見で陣形を覚えるのは無理だから。それよりも他に気になった点はない?」


おおう。義兄がめっちゃ労わりの眼差しだよ~。

無学なのだ、わからなくて当たり前だと優しい声で話を促してくれる。感じ取ったまま話せばいいのだと。えらく甘やかしてくれる。



気になる点‥‥か。そう言われて思い返す。


脳裏に浮かんだ複数の魔法陣。

例えるなら…‥多色の糸で織り成す織物かな?

的確な表現が出来ないのが口惜しいが、敢えて例えればだ。

表地は単独の象徴図だが裏地は糸が繋がっている。魔力の繋がりが途切れていなかった。その様は『各色の糸で一枚の図形を描いた』だ。辿れば間違いなく一つに集約される。


俺の拙い説明で理解したのだろうか。

義兄とジェフリーの意見は連陣の一つを崩せば機能は停止すると一致。


‥‥頭の良い義兄が言うのはまだわかる、だがジェフリーの意見も? こいつってノリの軽いお調子者じゃないの? 頭の中に『?』マークが浮かんだ。


納得いかない顔をしていたのだろう。にた~と笑うジェフリーは義兄の魔道具作製の際、調合の助手も兼ねると自慢気に教えられた。そうかよ。



二人は魔力で練り上げられた魔法陣はより強固だろうと見ている。

そんな堅牢な魔力膜、どう対処すればと二人は額を突き合わせ苦悩している。


‥‥うん、全く分らないわ。これ、説明されても理解できないね。


俺の心情を読み取ったのか、説明の時間がないからか、しても無駄と思われたのか。多分、後者だろう。詳細の説明を省かれた。




「魔力だけで体内の該当箇所に魔法陣を刻む‥‥ですか。流石は禁術ですね‥‥ふむ、どうしましょう」


義兄は誰に言うわけでもなく零した後は、口元に手を当て静かだ。ソファの背もたれに背をどっしりと預け、嫌味なほど長ったらしい足を組んだ様はカッコイイな、おい。


いつもとは違う口調。どうやら思考の海に沈んだようだ。今の義兄に俺達は見えていない。

そう言えば‥‥もう随分と前、『丁寧な言葉遣いだと距離を感じるから嫌だ』と駄々を捏ねたことがあった。それ以降、態々砕けた言葉で接してくれている。あれも断罪を回避するための『義兄と仲良くなる作戦』だった。何だか懐かしい。




「お嬢様、若は長考に入られましたね。休憩にしましょうか?」



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