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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領
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ちょっと一息

「お義兄様、どうしてわたくしなら術が解けると思われたのですか?」


質問が唐突過ぎた? でもねでもね、仕方ないじゃん。知りたいんだし。


『おや?』な顔の義兄に、『はぁ?』と小馬鹿な顔のジェフリー。

ジェフリーはクリスフォードモドキになってるから余計に癇に障る。

‥‥クリスフォードに馬鹿にされた気がする。ちっ。



案の定と言うのか、らしいと言うのか。義兄は答えない。




地下室からクリスフォードモドキ・ジェフリーが控える私室に案内され、俺達はこの場で仲良くティータイムである。俺の不用心な発言の所為で。

時間を惜しむ俺にとって不本意だが『術の分析』と請われれば仕方ない。


「流石はお嬢様ですね~、余計な事ばかりやっちゃいますね。ははっ」


ちっ、クリスフォードの顔で言うなや、シバイタロカ。

こいつの失言はまるっと無視だ、ムシムシ。




義兄もまさか禁術の内容が知れるとは思わなかったのだろう。俺もだ。

術の魔力を吸い取るだけでいいと思っていたからね。あんな場所に魔法陣があるなんて誰が気付くかって。






‥‥ところで、ティータイムってサロンとかでしないの?


私室など寝室に次ぐプライベートエリア、自分の部屋だよ、ここ。

当主が客人を招く場所じゃないからね? 知ってる?

多分、執事も困ったと思うよ。‥‥あっ、でも慣れた感じだよね。もしかして、これが普通?! 親しい間柄なら当主でも私室OKなの?! 非常識じゃないの? 子供同士ならまだわかるけど当主がだよ? 

‥‥これは俺の知らない大人な貴族ってやつか。


「あ~お嬢様、何か勘違いしてますねぇ、その顔」

「‥‥レティ、この当主は礼儀に欠けているからね。非常識者だよ」


あっ、やっぱ非常識か。そうだよね、親しくても私室に呼ばれることはないよね。ほっ。


‥‥二人の何とも言えない表情を見て俺は悟った。

これはあれだ。『お主も悪よのお』って悪巧みする場所か。なるほど。

‥‥そう言えば探し物してたの、この部屋だよ。まだ終えてないの? そうか、この場に呼ばれた理由が何となくわかった。


‥‥一体、クリスフォードは何をやらかしたの?


俺達ノリで不法侵入・占拠しちゃったけど。これ、何かしら事件性が色濃いよね? まんまと首を突っ込んじゃって‥‥ってか俺の所為か?!


‥‥まぁ、気にしたところで今更だよね。








出されたお茶を一口。まろやかな味わいがホッとする。コクリと喉の渇きを潤し、茶葉とミルクの甘い香りを堪能する。はぁ~美味しぃ。



「‥‥レティ、体調はどう? 魔力を流していたんだ疲れていない?」

「ありがとうございますお義兄様。ご心配には及びませんわ。ふふ、あれぐらい何とも。大丈夫です…‥」

「ふっ、流石はレティ。頼もしいね‥‥‥」


殊更優しい顔で労いの言葉を掛けてくれるのは良いのだが、肝心の返事はない。


‥‥はぐらかす? 単に言葉を選んでる? どっち?


恐ろしく整った顔をまじまじ見つめること数秒間。微かに上がった口角は口を開く意志の表れだと思いたい。


ちっ、美形ってどんな顔しても美形だな。





義兄が答えたくないのなら、答えたくなるまで聞いてやる。と意気込む。


「わたくしなら問題ないと見越していらっしゃるのでしょう? ふふ、お義兄様に認められて嬉しく思いますが‥‥そのように信頼を得るに至った理由を聞かせて下さいな。…‥もしかしてお義兄様はわたくしの能力をご存じで?」


魔法関連に明るい義兄ならではの気付きか。それともコソコソ嗅ぎ回ったのか。

暗躍が趣味の義兄のことだ色んなノウハウをお持ちだ。遺憾なく発揮したであろうと想像は容易い。きっと本人以上にレティエルを知っているはずだ。



「ふふ、レティは出来る子だから少々難易度が高くても遣り遂げれると信じているよ? 君は能力の高い素晴らしい子だからね。初めにも関わらず禁術を見破った実力者だ。大変優秀だよ」


はへっ?! ‥‥えっとぉ面と向かって褒められると悪い気はしない…どころかめちゃくちゃ嬉しい。ちょっと気になる言葉が聞こえたけど、まあ、いいや。それより、もっと褒めてよね、俺は褒められるとグングン伸びる子なのだ。


はっ! 違う違う、そうじゃないでしょ! 危うく誤魔化されるところだった。

私室でティータイム。勿論、人払いも盗聴防止の魔道具も。抜かりなくです。

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