契約魔法ってー②
「契約魔法って両者の合意の上、魔力で縛ります。勿論、違反すれば処罰されますが‥‥まあ命懸けな契約だと覚えて頂ければ間違いはないと思いますよ」
えっ、魔力で縛る? 命懸け? はぁ?
「契約内容や処罰の仕方はそれぞれですが、これってお金掛かるんですよ~。それに処罰も重め?ですからね~余程反故にさせたくない契約でしか使わないですよ。あっ、魔力が無くても問題なく結べます。魔力の籠った用紙や専用インクを使って署名欄に自分の血を押せば締結されますから」
はっ? 血? 血を使うの? それで契約になるの? 血判みたいな? うげ。
「あぁ~俺も詳しい事は。ですが血液って個人の識別が可能な媒体らしくて。定説ですが、魔力の無い者も血中に微量な魔力が含まれていて、それが作用するのだと言われています。全く魔力の無い者は存在しないですって」
なんと! 知らなんだ。
これって教育の弊害? 王国は魔力無しが前提だからね。魔力については無知になる。うわ~マジで早く魔法の勉強必要だよ~。
因みに帝国では魔力の有無は一定以上の魔力量を検知できるかどうかで決まるそうだ。まあ、魔力無しと判定されても魔力を行使できないだけで血に混じっているのだと。
だから義兄も自分の血液を使って魔道具や魔法陣を作製するのが可能らしい。ジェフリー曰く、義兄の技量は血中に含まれる魔力濃度の差ではないかと。ちょっと不思議生物の匂いを感じ取った俺は詳しく教えろと強請ったが、これ以上知りたいのなら義兄に直接聞いて下さいとやんわり拒否られた。
ちっ、ニマニマしやがって。
話が逸れたが引き続き、契約魔法の話に戻る。
「お嬢様に最大限の注意をお願いしたいのが、『詐欺魔法』と『隷属の契約』。いいですか、うっかりでもぼんやりでも、ぜっ~たいにしちゃダメですよ。隷属は奴隷の意味ですからね~生殺与奪の権利取られちゃいます。で、詐欺は一見まともな契約書です。ですが署名後、改竄できるのです。何とビックリですわ~」
はっ?! めっちゃ犯罪じゃん!
「ですです、犯罪に特化した契約魔法ですからね~。騙されちゃったら人生終わりですよ~。特に『隷属の契約』は禁術魔法です。知ろうとしないで下さい。違反者は罪人ですからね~。お嬢様ってうっかり使いそうで怖いですわ~」
おい待てよ。お前の中の俺は一体どういう人物だ。
ジロリと睨んでもこいつは飄々としてやがる。くそう。義兄にチクるぞ。
詐欺魔法の特徴は締結後の改竄。改竄なし場合はただの詐欺だって。あっそ。
これは交わした契約書が全く別物になるらしい。よくあるのは金銭借り入れ証明書だって。商売の売買取引契約書が知らない間に多額の借金を負わされていたり、奴隷契約だったりとかなりの悪質。聞いていてゾッとする。
隷属の契約はもっと悪質らしく、一方的に禁術で縛られ拒否できない。身体の一部に魔力で刻印され、それが命を縛るのだと。…まんま魔力で心臓を握っているから質が悪い。契約主に絶対服従な上に、逆らう=死。下衆もゲスの契約だと。
うええ、聞いていて反吐が出そう。
この二つ、同じ奴隷でも全く質の違う契約になるらしく奴隷契約は金銭絡みが殆どなので要求額を支払えば解放される。ただしその金額がべらぼうだそうだ。
えええー、怖ー!
この世界、人権無視しすぎ! いやもうマジで勘弁して!
俺の心の涙目が通じたか、ジェフリーもレティエルは引っ掛かり易い子だと認定したのか、マジな顔つきで回避策を教えてくれる。
「王国は、一般的な契約に魔法を行使する習慣がありませんから馴染がないのは分かります。お嬢様の場合、決してご自身で契約を結ばないのが一番です。もし契約を求められたら、ご家族のお許しを得てからになさって下さいね。その場での即決は止めましょう。必ず一旦持ち帰ると先方に断りを入れれば良いのです。仮にゴリ押ししてくる輩がいれば十中八九、奴隷契約になると思いますので」
…‥おう、饒舌だな、ジェフリーよ。
えーと、要は一人で契約するなってことだよね。オケオケ。そう言えば今までレティエル個人で契約することって無かったね。大概、親父か義兄を通じてだし。
取り敢えず人権無視の犯罪契約はわかった。うん、絶対即決しない。
あと、処罰内容って? 一体どんなペナルティなんだろうか。
「あっ、普通に死にます。それほどの縛りがないと守らないですからね」
いや、そんなさらっと言われても、命かけないと契約出来ないって、本当、倫理観どうなってんの?