レティエルの憂い
断罪劇後~のレティエルサイドです。公爵家での話になります。
ーーー親父と義兄からのトンでも提案。
義兄が全くわからん。一体何があったんだ?
俺の心境は死刑執行を待つ囚人の気分だ。
そもそも、親父よ。何故に義兄? 俺を手元に置くとしても選択肢変だろ?
俺は昨夜から悶々と考えていたため睡眠不足だ。
目の下に薄らクマちゃんが‥‥。
起こしに来た侍女にそれはそれは心配された。
婚姻の解消がショックだったのだと勘違いしているようだ。
おっ?これは使えるかも
俺は昨日のショックから立ち直れない体であわよくば義兄との婚姻を考え直してもらおうと言い訳を考える。
だがしかし、親父が決めたのならもう決定だよな。早いか遅いかの違いだけか。親父は利益になると思えば耳を傾けてくれるけど‥‥。
‥…いつから決めてたんだ? どうりですんなり移住許可書の用意してくれたわけだ。義兄に嫁げば移住できないと踏んだか‥‥
他に手札ってあったっけ?
今回は王家との縁組と政敵の排除を秤にかけての賭けだったもんな。
親父にしてみればどっちに転んでも利なわけだ。損なし。
はぁ~溜息しか出ないわ。
心配顔の侍女から朝食はお部屋にお持ちしましょうかと聞かれたが、食欲がないと断った。
いや~あの二人とどんな顔して会えばいいんだよ。マジで勘弁!
部屋中、溜息だらけだよ。
自室で侍女に淹れてもらったお茶を味わっていると。
「レティエル! どうした具合が悪いのか? 大丈夫か。婚姻が解消されたのがそれほどショックだったか! やはりあの王子は即刻処分すべきだ。存在自体が許されぬ!! いや、子の責任は親にもある。陛下には速やかに退いていただかねば」
「義父上。直ぐに処分では味気ないですね。ここはゆっくりじっくりじわじわと産まれてきたことを後悔するまで‥‥‥それでは生温いですね。自ら死を懇願するほどの苦しみを与えるのは如何でしょう。ええ、懇願ですよ。跪いて‥‥いえ、頭を垂れ額に土着け殺して下さいと願い出るまで苦しみを味わえなくては。そうでなくては面白みに欠ける。フフフフ。如何でしょう義父上。進言なさいませんか」
扉が開くと同時に怒涛のように雪崩れ込んで来た二人に呆気にとられ。
話す内容に戦慄した。
か…母さん、母さーん!!ここ…ここに魔王と悪魔がいるよー!助けてぇー
震えが止まらない‥…。
「おお、おお、可哀想なレティエル! こんなに震えて。私が悪い男を一族共々成敗してやるから安心しなさい」
「ああ、ああ、なんて痛ましい! 我が愛しいレティ! 怯えていても愛らしい。君の憂いを私が根こそぎ払い切ってしまおう。証拠など残さず、一片の肉片も残さずに!」
ヒェェェェー! 震えの原因は二人だからな。親父、何気に国家転覆狙わないで! あと義兄、言葉のチョイスが変だよ、変! 怖いー
俺は普段と違う二人の言動に正直ついて行けずあわあわしまくる。
怒りを露に荒れ狂う魔王と悪魔に立ち向う勇気など俺にはない。
だっだれかー助けてー! この場を収めてぇー
「旦那様。ランバード様」
二人の後ろから威圧感たっぷりの言葉が聞こえてきた。
「そのように語気荒々しくお話をなされてはご体調の優れぬお嬢様にご負担がかかりましょう。今のお嬢様に負担を強いているのはお二方ですぞ。ご自重なさい」
物静かな物言いだが有無を言わさぬ圧力に荒々しかった二人は一瞬で大人しくなった。
す、すげえ、猛者だ! いや勇者だ。勇者が来た!
声の主は先代当主の頃から仕えているおじいちゃん家令だ。
俺はじいやと呼んでいる。
二人はシュンと落ち込みながらじいやに引っ立てられて行ったのだった。
じいや、ありがとう。俺の平和を守ってくれて! あとでおやつあげるー。
俺はじいやと言う勇者を味方に魔王と悪魔に立ち向かうことにした。