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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第九章 王国の異変
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閃いたナイスな名案

…‥‥‥‥沈黙が重い。


室内に6人いるのに全員無言って、どうなの?

義兄が目を瞑って考え事を始めたから皆、黙っているのだけれど。

沈黙が落ち着かない。

ガザなんて、(こうべ)垂れ幕り。

あれ、首が痛くならないのかな。




ガザに関して思う事はある。気の毒だし今回は災難だったねって励ましたい。だって彼は仕事と言えど遥々王国までクレアを追いかけてきた人でしょ。


‥‥ん? 追っかけ? ん? 監視?

あっ、ストーカっぽいって思ってごめんなさい。




それより、この鬱々な感じ、打破したい。すっきり解消させたい。

う~頭捻って解決策を引っ張り出さなきゃ‥‥あっ! 

おお~ナイスな名案が閃いた!



皆さんお耳を拝借、朗報です。


「このままでは徒に時間だけが過ぎてしまいますわ。ですので行きましょう! クレア情報の不確かさは皆で確認すれば良いことです。己の目で確かめればガザの真実も判り納得できますでしょ? それに事実確認は当然のことですわね、お義兄様」

「はぁ? …ああ、迂闊にも呆けてしまった。すまないレティ。私の聞き間違いかな? 皆で見に行こうと誘われた様に聞こえたが‥…違うね?」


目は口ほどにモノを言ってますね義兄よ。

優し気な眼差しの中に『違うと言いなさい』の意志が籠っている。

何ともまあ、器用な。

でもね、今回だけは譲れない。悪いけど気付かないふりするから。



「お義兄様正解! 仮にクリスフォード様のお邸にクレアがいれば捕獲…あ、いえいえ、捕らえなくても陰から覗けば確認できますわ。それに万が一、クレアが抗っても複数人相手に精神干渉は出来ません…ですわね? まあ、例え出来たとしても、わたくしが相手ではクレアの魔力は効きませんから大丈夫ですわ。あっ、しまった。うっかり失念しておりましたが、わたくしとお義兄様、顔バレは厳禁でしたね。‥‥覆面? 仮面の方が淑女らしい?」


「‥…聞き間違いではなかったか。レティ、考えてくれてありがとう。事実確認の必要性を理解していたね。でもね、今回は相手が悪い。悪評の絶えない領主に犯罪者のクレア。君を不当な輩と会わせたくない私の気持ちは理解して欲しい。それから、考えてご覧レティ、もしクリスフォードに見つかれば嫌な気分を味わうのは君だよ。それでもいいの? 私は考えただけでも殺意が湧く‥‥かな。お願いだよレティ、私を元王子殿下殺害犯にさせないで」


「えええー?!」


聞き間違い? 聞き間違いに違いない! そうだ聞き間違いだ!

 


「危険性の高い場所に君を連れては行けないよ。私も気が気じゃなくて冷静さを失ってしまう。それにね、レティ、君の身分であれば指示を出せばいい。実行は仕える者が行う。それが彼等の仕事だからね。君が手を出してしまえば彼等の仕事を奪うことになる。わかるだろう‥‥レティ」



口調は穏やかだけど焦りが隠せていない。義兄にしては珍しい態度だ。

動揺しながらも俺に対する気遣いを忘れないのが義兄の良いとこだね。素直に嬉しい。でも子供を諭すような物言いはどうかと思うよ。




凡そやらないだろうご令嬢だったら。

それは重々承知の上で提案したのだと判って欲しい。

だって、だって、夜中に人ん家に忍び込むだなんて、前世で言えば犯罪行為だ。それがここでは出来ちゃう! あっ別に泥棒がしたいわけではないよ、スパイ気分を味わいたいだけなのだ。

相手は散々迷惑を被られたクリスフォードだ、俺の罪悪感は皆無! これ大事。

こんな好都合の相手はいない。まさに絶好のチャンス!

序でにクレアがいれば御の字だけど、二兎を追う者は一兎をも得ずだ。


…‥ん? あれ、何しに行くんだっけ? まっ、いっか!





「ねえ、レティの目的はクレアの存在確認だね? それも態々不法侵入を犯してまで。それでは割に合わないよ。ガザの真実究明もダルが来れば済む話だ。どの道、精神干渉の疑いを持たれた時点で謹慎処分になるから今慌てて動く必要性は感じないかな。ごめんねレティが折角考えてくれたのに、君の身を危険に晒してまで無理はしたくない」


ううむ‥…手強い。

義兄の中でダルさん召喚は決定だからね。一番安全で確実だもん。




義兄との穏やかな戦いの間、俺に聞こえない声で会話をしていた奴らがいた。



「ねぇねぇハイデ~、お嬢様って愉快な方だね~、道中、楽しくなりそー!」

「ジェフ、騒がない‥‥ですが同意見です。ふふ」

「ねぇねぇハイデ~、若が同行させちゃう方に俺、賭ける~。ハイデは?」

「ジェフ、ふざけないで。私も同行に一票」

「え~、それじゃあ賭けに成んないよぉ~、じゃあ、ギルガは?」

「はっ?! 君達は何を言っている? 主の間違いを正すのも護衛の役目だろう? 何故同行を止めないのか理解できん‥‥賭ける気はないが、同行させないのが正解だ!」

「「ほぉぉ~う。させない方に一票か」」

「…‥‥私は精神干渉…されていない‥‥くっ、だ、だがそれが証明できない。くっ、だが身の潔白が証明されれば…‥そうだ、見ればわかる。そうか私の証明に証人が必要なのか! 私が白だと判明されたのならオルレアン様に全てご報告だ。ははっ! 同行するに一票!」


「「「えっ?! お前もか?!」」」






俺と義兄の攻防戦は、皆の介入であっけなく終わった。

義兄の許可を捥ぎ取ることが出来たのだ。

これも皆のおかげ‥‥ギルガ以外ね。



「お嬢様がそこまで望むとは…理由を伺っても宜しいでしょうか」

「ハイデ、あのですね、‥‥ちょっと諜報活動を味わってみたいの」

「えっ?!」

「わ~、無茶苦茶どうでもいい理由だった~びっくりです~」



賛成派がジェフリーやハイデにガザまでも。義兄と共に行動するのが良いらしい。ギルガは護衛対象が危ない橋を渡るのは言語道断と鼻息荒く反対してた。


義兄攻略は、結局ジェフリーの一声。嬉しいのにモヤっとした。


「若がお嬢様の身を守れば、お株は急上昇。お嬢様の知らない若の姿を見せるチャンスですよ~」


が追い風となり


「お義兄様と一緒でないと安心できません」


お目目ウルウルのお強請りが効いたか、ころっと陥落とはチョロさに驚きである。


皆のサポートのおかげで無事に『スパイ大作戦』ん?『ミッション ポッシブル』だ。




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