殺めるって何だっけ?
「若‥‥エリックをどうしますか‥…」
「どうとは、何が言いたい?」
「もしかしたら…操られていたのかも。それでも‥…若は許さないのですか?」
「ジェフ、お前は嫌な事を言うね。私が決めるのではないよ。全ては義父上だ」
「‥‥若」
えっえっ、待って待ってよ、サラッと義兄とんでもないこと言わなかった?!
誰が義兄を殺めたの? はっ、殺めるって何だっけ?
ちょっと待ってよ、ちゃんと説明してよーーーー
俺は学習した。
この面子、突っ込まないとサラリと話をスルーする人の集まりだってことを。
「お義兄様‥…殺めたとは? ちゃんと説明して下さい。それとエリックのお披露目? 一体何のお話をなさってるの」
「レティ、ああ、君は聞いていなかったのかい?」
「はい、お義兄様。あっ、もしかしてジオルド様が問われた罪って‥‥」
「ふ、そうだよレティ。どうしてか私が殺されて、その犯人に仕立て上げられたのが彼の御仁だよ」
はあ? 頭に入った情報が理解できない。何、当たり前の顔してんの? 義兄、生きてんじゃん! 冤罪じゃねーか! ダルが可哀想過ぎるー!
「お義兄様、ふざけないで下さいまし! 生きていらっしゃるではありませんか! どうしてそんな事になっているのですか?!」
「そうだね、ジェフ、君が目撃者だから答えなさい」
「はーい。任されました! お嬢様、本当に若、殺されちゃったんですよ。ぷっ、毒飲んで無様にですよ~」
「え?」
「ジェフ、お前ねぇ」
「わっ、若、冗談です~。お嬢様、収監されてたの実は俺なんです。若と入れ替わって囚人してたんですよ。そしたら見知らぬ男共がやって来て、若を暗殺しようとしたんで、俺、魔術展開して誤魔化したんです。偉いでしょ? 精神干渉得意なんですよ~、ちょこっとだけ幻覚見せたら仲間割れしたんで利用させてもらったんです。いや~あの時は驚きました~。だって公爵家次期当主の若に対して問答無用でしたからね~」
「そ、そんな! それで犯人は、貴方見たのでしょ? どうしてジオルド様が犯人にされちゃうのですか?! 冤罪じゃないの!」
「ですよね~もろ冤罪っす。実行犯はミキール・ギャティギルソンです。でも殺されちゃったんですよ、彼。その黒幕を公爵様に仕立て上げたわけです」
「ま、まさか‥‥ミキール・ギャティギルソンと言えばクリスフォードの元側近候補だった人よね。どうして彼が‥…」
「レティ、彼は捨て駒だ。零落れてはいたが平民となり真面目に働いていた。悪巧みが出来る程の頭も度胸もない男だ、監視を外した矢先に目を付けられた。良い様に利用され捨てられたのだろうね」
「そ、そんな‥‥一体誰が‥‥お義兄様は犯人をご存じでいらっしゃるの?」
「レティ、残念ながら」
義兄は知らないと首を横に振る。本当だろうか。
「お嬢様~、恐らく若の事を良く知らない奴が黒幕ですよ~。あんなボンクラを宛がうだなんて若の実力を知らないんです~。まあお陰で俺は楽出来ましたけど」
「えっ、それはどういうことですの? ちゃんと説明して下さいお義兄様」
「ジェフ、お前、口は禍の元と言う言葉を知っているかい? 知らないのならその身に叩きつけようか?」
「若様、その役目私にお任せくださいませ!」
意気揚々と名乗り挙げたハイデさん。
その手に持っているナイフは何する用? 怖いんだけど。
「ぎゃーハイデ止めれーーー、若、冗談ですって! お許しをーーー」
カオスだ。
こいつら本当、変な奴等。どうでもいいけどシリアスな話だったよね?
何で軽いノリなの? 呆れちゃうよ。




