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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第八章 出揃った駒
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ダルのヒーロー?

ちょっと疑問に思うことがある。

言論の自由はありそうで…‥微妙。

今も俺以外の皆さんが忌憚なく話している。

…‥俺、レティエルだけ口を噤んでいるわけだけど。


未婚女性が見知らぬ異性と自由に会話なんぞ許されない。

淑女にあるまじき行為だし家長の次位である母さんを差し置いて意見は出せない。

…‥はぁ面倒この上ない淑女の作法。

話し合いで席上の長が許せば発言は許されるんだけど、いろいろ制約は付く。

‥‥何でこんなこと言ってるかって?

 

今、除け者にされているレティエルの話題が目の前で繰り広げられているから。

レティエルを匿う場所について当事者の俺は口せずにいた。

親父がこの場に居れば俺の意見を聞いてくれるのだが、母さんは黙っていろと発言を許してくれない。

多分、何か考えがあってのことだと思うけど‥…仲間外れって悲しい。






先程まで二手に分かれて話し合っていたが今は今後の相談で面を合わせ、主題がレティエルの扱いについてになった。それで除け者にされちゃった‥‥はぁ



結局ダルの依頼は棚上げ、今はどうすることも出来ない。ダルも承知だが寂し気に「わかっております。ただ気持ちが抑えきれず馬鹿を申しました」と謝ってくる。


‥‥居た堪れない、めちゃくちゃ居た堪れない。ごめんねぇ~と泣いて謝りたくなる。しないけど。

ああ、湧き上がる罪悪感が半端ないわ。

聞かさられたダルの気持ちが俺のナイーブなハートにザクザク刺さる。




ダルは元々、人身売買組織の調査と売られた帝国人の奪還に動いていたと言う。三年前に王国の王族が関与していると情報を得て王国に潜入。捜査線上に上がったジオルドの事実確認と証拠集めで自ら奴隷として売られに行った。潜入捜査ってそこまでやるんだ、と妙に感心してしまった。


ダルは使命感や忠誠心よりももっと私的な事だと言う。

「家族を助けたかったんです」と。

実の姉が行方不明となって二十年。十も離れた姉を見つけ出す目的で捜査員になったとダルは告げる。その姉を三年前に見つけ救出できたのはジオルドの手腕らしい。

これには驚かされた。ジオルドの女好き、引き籠り公爵と不名誉な渾名や悪評を知っている俺達は耳を疑う。

現に護衛二人の疑いの眼が雄弁に物語る。

母さんもだ。でも女好きは本当だから貴女は気を付けなさいと忠告は忘れない。

容赦ないね。 

「実はそれはカモフラージュなんです」とダルは可笑し気に口にする。

ジオルドは態と悪評を流し犯罪組織と人脈を作り、不当に巻き込まれた人々を陰で救出していた‥…実はヒーローだった。

意外と言っちゃ失礼だけど、ジオルドは人道主義者ぽい。


人は見かけによらない‥‥違うか。彼の悪ぶりは人助けのため。

表立って犯罪組織の検挙が出来なかった彼の置かれた状況。

それと今回の冤罪。

ジオルドも薄氷の上を歩いていたのかと不意に思う。


そうそう。ダルの姉は犯罪に巻き込まれた経緯や長きに渡りどう生きて来たかは教えてくれないが救出された今は家族に見守られながら生活しているそうだ。

姉の件でダルはジオルドに並々ならぬ恩義を感じ、侍従の立場で恩返しの機会を伺っていたと心情を告げる。


帝国サイドのダルが心情を吐露したことに俺達は目を剥いた。

それは帝国への裏切りにならないのだろうか。ちょっと心配になる。

優しい微笑でダルは「大丈夫ですよ。上役は全て知っております。その上で私の任務は継続しております」と教えてくれた。


そう、ダルの潜入捜査は現在進行形。

これも軍部とダルの思惑が一致したので許されたらしい。

これはダルの憶測なので真実は知らないよ。





はぁ‥‥

毅然としている母さんは凄い。

多分、助けたくてしょうがないんだと思う。

それが出来ない現状を一番歯痒く口惜しく感じているのは母さんだ。

俺如きがどうこう言えないし言うつもりもない。

本当に辛い人達が呑み込んだ今、俺に出来ることなどない。


非力な俺が恨めしい。戦う術のない俺は守られる存在だと否が応でも認めさせられる。大人しく話し合いが終わるまで待つしかない。

 

お読み下さりありがとうございます。

本年も宜しくお願い致します。


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