ダルの情報ー①
『私の持つ情報を買って頂きたい』
ダルの軍法会議まっしぐら発言にこの場が凍る。予想外過ぎたかギルガや護衛は言葉を忘れたように口をパクつかせるだけで声になっていない。
肝心のダルと言うと平静を装ってはいるが内心かなりの焦りで悪手を選ぼうとしてるんじゃないか。そう思ってしまうほどダルの全身から強張りを感じる。
ちらりと一人の護衛に目を向けると案の定「胃、胃が」ってお腹を押さえていたよ、胃痛か? ストレスか? わかるわかるよ! そうだよね、胃がね、胃がシクシク痛むんだよねこの状況は。彼の胃を考えると早く話を切り上げて安心させてあげなきゃ。
そんな俺と護衛の内情をまるっと無視してくれたダルが母さんに交渉を始めた。
『‥‥あら、面白い事を。いいわ話を続けなさいな』
やはりと言うかそうだろうな、母さんは殊の外嬉しそう、きっと腹ン中で舌なめずりしてんだろな。
『お母様‥‥よろしいのですか?』
『いいのよティ。彼等は一応わたくし達の窮地を救ってくれたのですから。そうよね貴方? 公爵家の者の窮地を救ったのよねぇ』
ああ、さいですか。恩人扱いにするってことですね。ラジャ!
最高権力者に逆らいません!!
でも母さん恩人さんに対する態度じゃないですね。
うわ‥‥ギルガめっちゃ顔引き攣ってる、ダルもちょっとビビったな。
護衛は‥‥達観してね?
『‥‥ありがとうございます。公爵夫人のご温情厚く御礼申し上げます』
ちょっと強張りが取れたダルさん、本当にそれでいいの?!
『情報を売るのは私が聞き及んだ話になりますのでギルガは一切関係ございません。…仮に処罰を受けることになれば私だけに。どうかお願い致します』
『おい! ダル!』
ここで堪らずって感じのギルガがダルと母さんの会話の中に割って入った。なんちゅう無謀な、おおーい、母さん怒らすなよ‥…勇気と無謀は違うんだぞぉ。
『公爵夫人、申し訳ございませんがこの話は聞かなかったことにして頂けないでしょうか。今なら何事も無かったこととして皆様をご領地に送り届けます。どうかこいつの話は無かったことに』
『なりません。一度願い出た以上勝手に撤回は許しません。お前にその権限はないのですよ』
『‥‥くっ! で、では私の褒賞を! 頂ける褒賞はダルの話を取り扱わないでお願い致します!』
うわーーーーーおまっ! 逆らうなんて!
わぁ、空気、めっちゃ重ぉくなったじゃねーか!
‥‥あれ? 心なしか蒸し暑く感じるんだけど‥…まさか。
ひぃっ、母さん魔力漏れてる?!
内心焦りまくってた俺の横で護衛がまたお腹擦ってた、ごめんよ~無事に帰れたらお休み取っていいから今は耐えてぇぇぇ
『公爵夫人、誠に、誠に申し訳ございません! ギルガは皆様を案じての発言なのです。咎は私が受けますので、どうかお許し下さい。早くギルガも謝罪を!』
言葉を向けられたギルガは可哀想な程、目を剥いて汗だくだ。そりゃ、イライラ溜めてた母さんを怒らすからだよ。母さんから高圧的なモノを感じる。
上位者の会話を遮ったり逆らうって死にたいのかよ、お前。ダルを思っての言動だろうが今の対高位貴族の態度じゃねえよ。このままだと俺達も巻き添え確定だな。こうなりゃ仕方ない手を貸そう。
『お母様! お怒りはごもっともですが今は話を聞くのを優先しませんか。このまま徒に時間を過ごしてはこの場で夜を迎えなくてはならなくなります』
そうなんだ。このままだと非常に不味い状況を迎えてしまう。こんな廃村で夜を迎えるって無理! 何か出そうでヤダ! ってかここじゃなくてよくね? どっか移動しようよ! んん、それより俺達どこに向かってんの?
護衛は何かに気付いたっぽいけど俺は全く分からん! ちょっとは俺を安心させようよ!
ううん、安心させてくださーーーい。




