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転生先は小説の‥‥。  作者: 久喜 恵
第七章 それぞれの思惑

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口外法度の御前会議・アドルフ回想ー②

アドルフ回想です。

諜報員の工作活動を協力している者の捜査線上にとある貴族が浮上した。人身売買組織に依頼を行った貴族である。調査の結果この貴族の裏の顔は若い女や魔力保持者を他国へ斡旋し大金を手にする破落戸であった。この男、悍ましいことにレティエルを攫う計画を企て、あろうことか隣国への売買契約も結んでいたのだ。


調査報告書を読む手が怒りで震え、書類を破りたい衝動に駆られた。実際、切れ目が入ったのは致し方ない。それ程の怒りで冷静さに欠けたのだ。

余りの怒気に正気を失い公爵達の顰蹙を買った上に、陛下を呆れさせた。


『お前が動くと事態が悪化する。息子に託せ』そう命令されては諦めるしかないではないか。怒りの鉄槌を見舞う機会をランバードに譲った。アレには組織の壊滅と依頼主の殲滅を指示し、手段を任せたのは私だ。

好きにやれとは言ったが、好きにやり過ぎでは? 自由な義息子が羨ましいぞ。



その後の調査は難航、後手に回った感が拭えず痺れを切らした陛下が私に命じる

『餌を撒け』と。仕方なく特殊工作の任を賜った。あれだな、目には目を、やられたら倍返しか。要は同じ目に遭わせてやれだ。無論、我等四公に否はない。


序でに国内の膿を出し切ろうと、年寄り公爵が嬉々として戦略を練り出したが、誰か止めろ、実害を被るのは間違いなく若手の私だ。貴公らこの時ばかりと結託するではない!

我等公爵はお互い反目し合う間柄、信用は有って無い様なものだ。だが陛下を中心に我らは動く。ある意味信用の置ける同胞となるのだ。




四公の中には、あの子倅の父親もいる。

子供の名はニコルソン。トァヴイトヘルマン公爵の次男だった子倅だ。今は平民か。まさか四公爵の血筋からあのような愚か者が出るとは正直我が耳を疑った。

嫡男は優秀な男で王妃に仕える文官だ。あの事件後、王妃に解任されたと聞いたが愚弟の尻拭いとは気の毒な男だ。公爵も肩身が狭かろうに。同情はしないが同じ親だ、子を思う気持ちは理解できる。


『息子を捨て駒として使って貰えないか』

意を決した公爵がそう進言する。この男の詫びの入れ方か。

幾ら次男で罪を犯したと言えど息子だ、その命を差し出すとは。親として辛かろう。

…‥愚息を持つ気苦労は計り知れぬな。その責任を取らせるか。


私なら娘の失態をその命で償わすことはさせない。辛い目に遭わされたのなら相手と刺し違えても報復するぞ。死なば諸共、地獄へ道連れだ。

公にしていないがトヴァイトヘルマン公爵から謝罪は受けている。貸し一つだ。

私の望んだ時に貸しを返してもらうぞ。





調査の結果、陛下に牙剥く不届き者は意外に近い場にいたと判明した。

だが一枚岩ではないであろう。


我等四公の活動は極秘裏。全て口外法度。この御前会議も決して議事録に残せない会議である。作戦を漏らさぬ理由もあろうが我等四公、表立って牽制し合う素振りも、会議内で見せる恭順も、協力し合う姿勢も、本心は別にある。誰一人胸の内は明かせず気取らせない。それが我等の処世術だ。



さて会議も終盤。策も出来たようだ。

嫌な予感しかしないこの公爵達を横目に私も特殊工作の算段を頭の中で詰める。ランバートをちょっと国外に送り出すか。アレなら首尾よく済ますだろう。


‥‥‥今度は好き放題しないよう釘を刺すか。


お読み下さりありがとうございます。


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