交差点とスライム
あなたはスライムは好きですか?
交差点とスライム
あなたは知っていますか?
新月の夜に普段は存在しない交差点が存在するのを……。
ごくまれに街中であるはずのない交差点で神隠しがあるのを……。
草野球で聞いた噂話だった。
ある夜。飲み会で最終電車帰りになった私は。
千鳥足で駅から帰路につく途中だった。
いい感じに酔っぱらっていた私は深夜の通りをふらふらと歩いていた。
あれ? こんなところに交差点なんてあったっけ?と私は薄暗い通りをふらつきながら思考した。
辺りは不気味なほどの静けさに包まれていたのだ。
どこからもなく水滴の音がしたのだが、
ポタッ……ポタタッ……ポタッ……
ポタッ……ポタタッ……ポタッ……
辺りを見見渡すと真っ暗で何も音が聞こえないので、おかしく思って改めて周囲を見渡すと。
今まで来た道も先の道もなかったのだ……。
いや、なかったのではなく消失していたのだ。 交差点を残して……。
交差点から離れた先に街の明かりが遠くに見えていた。
交差点は巨大な半透明なスライムに包まれていたのだ……。
ふよふよと弾力のあるその体の中に取り込まれたと思われる人骨が見えたのが私がヒトとしての最後の記憶だった。
交差点ごと取り込まれたスライムは分裂し、
私は他の交差点で迷い込んだ人をスライムとして待っていたのだ……。