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戻ってきたわたし

 ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・






 ……規則的な電子音が聞こえる。


 身体が、心臓が、鉛のように重くて、腕が動かない。

 ベッドと身体がひとつになっていると感じるくらい、すごく重みを感じる。



 必死に力を込めて、瞼を動かす。

 ……瞼ひとつ動かすのに、とてつもない集中力が必要だ。

 


 ここはどこだろう?

 私、確か、フィラメンタスに感染して……研究所で薬を飲んで、それから……あれ? どうしたんだっけ?






 ようやく瞼が開いたようで、ぼんやりと白い光を感じる。視界の焦点は合わず、明るさしか感じることができない。



 霧がかかったような視界の右から、ぬっと黒いものが現れる。

 人っぽいシルエットのそれは、私の顔を覗き込んでいるようだ。




 少しずつ目の焦点が整ってくる。覗き込んでいる人の顔には見覚えがあった。



(おねえちゃん……?)



 声を出そうとしたが、口が動かない。ゴムっぽいチューブをかまされており、酸素マスクらしきものが付いていることに気づく。

 私と目が合った姉は、顔をくしゃくしゃにして笑った後、バタバタと音を立ててその場から去って行った。




 シュコー、シュコー……




 残された私は天井の蛍光灯を見つめる。



 これは酸素マスクの音なんだろうか。

 なんか、ダースベイダーみたいだ。





 ――――ああ、私は助かったんだな。


 研究対象だったスタフィロコッカス フィラメンタスに感染し、自ら開発した新薬を服用した。そのあとの記憶がないけれど、誰かが倒れている私に気づいて搬送してくれた、そんなところだろう。



 起き上がりたいけれど、まだ全身が重い。かなり病状は悪いのだろうと思う。






 ――――と、手のひらに何かが触れた。何かを握りこんでいるようだ。

 残念ながら腕もあがらない。ただそれは何か大切なもののような気がして、あとで確認するためマットレスとシーツの隙間にねじ込んでおく。




 シュコー、シュコー……


 シュコー、シュコー……




(ああ、眠い…………)






 気怠さに押し流されるように、私は目を閉じた。

第三章もよろしくお願いいたします。

そして、ファンアートを頂きました!


挿絵(By みてみん)


あしる様、ありがとうございました。

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本作が大幅改稿のうえ書籍化します! 2022/9/22 メディアワークス文庫から発売予定


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― 新着の感想 ―
[一言] この妖艶なデル様の眼差しがたまらんッッッッ!! そして手に持っていたモノは……やばい。メチャクチャ気になる。
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