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「百一」 大事なだいじな先生
[ 百 一 ]
わたしには先生がふたりいる。
特別な先生だ。
八歳から十四歳になるまでの多感な時期を、わたしはこの先生方と過ごしてきた。
ひとりは優しくて、わたしの話しをよく聞いてくれる、四十代の先生だった。
この先生はいつも白衣姿で診察室に居る。わたしが、「来ちゃった」と訪れても、イヤな顔ひとつしないで話を聞いてくれる。
もうひとりの先生は、ぼさぼさの髪をして、ジーンズ姿で病室に来た。口が悪くて、わたし達は時々喧嘩になった。けれど彼の指先は魔法のように、わたしの躯を解放してくれた。
ふたりとも、大事なだいじな先生だった。
ふたりとも、とってもおかしな先生だった。