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第七十二話 その日の金沢
ノルウェイジャンフォレストキャット。
その中でも特に希少な純血種とされるヨーロピアンストレート、
『お箸』
『お玉』
と名付けられたオスネコ(去勢済み)二匹は、赤と白に染められた座布団の上でその腹部を晒しながら、蛍光灯の光を遮るように片方の前足を頭の上に乗せ、後ろ足を放り出して豊かな体毛を見せつけつつ食後の惰眠を満喫している。
二匹とも同じ座布団に寝転がっていた。
この純血種は米国系のそれと比較すると鼻筋が一直線に伸びている点が特徴で、ネコ好きの間では知る人ぞ知る垂涎の品種の一つとして数えられている。
その詳細は省こう。
この二匹が夢見るところ、人間には分からない。
主人である姉妹、美紀と佐紀か。
単に伸びてきた体毛か。
それとも神話の世界で女神を導いたご先祖様か。
二匹は辰夫と幸枝に腹部を向けたまま、静かにその部分を上下させ、瞳を閉じて鼻での呼吸を繰り返している。
「あなた。美紀と佐紀の首尾はどうなっているかしら」
「……わしにも分からんの」
金沢には雪が降っている。




