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理想郷  作者: Zero_One
一章
6/35

風神雷神

 未だにフラフラと不安定に町中を歩きながら、露店を大声を張り上げながら果物を売っているおばちゃんに場所を聞くことにしよう。


「あのーすみませーん。」


「いらっしゃいお嬢ちゃん、何買っていくんだい!」


 斯々然々(かくかくしかじか)でと話すと、

「タダで情報が欲しいなんて虫が良いと思わないかい。何か買いな!」


 その声を聞いた別の人が後ろから声を発した。


「おばちゃん!初心者装備の子なんだから、殆ど金持ってる訳ねーだろ!聞きたい事があるなら俺が教えてやるよ。」

「商売の邪魔すんならアッチ行きな!」


 しかしランドにホイホイ付いて行くな用心しろと云われていたので、知らない人なので付いて行きませんと云うと男はカラカラと笑い出した。


「ランドさんの受け売りかな。間違っちゃいないがここにいても邪魔だ。だったら目の前に見えるベンチならいいだろう。」


 それくらいの距離なら問題ないと言う事で、先に移動するとすぐこちらに来た。



「不審がられてるから先に云おう。俺の名は風神=雷神だ。」


「は…?」


 このゲーム漢字名使えたんですねと云うと、ソコじゃねーだろと突っ込まれた。

 だが敢えて名前には触れなかった。


「私は…」


「ウィンス=キャビルソンだろ」


 何故知っているんだと勘ぐっていると、名前は人物を調べれば直ぐに分かる レベルやクラスは特殊なスキルがないと判別が出来ないと教えてくれた。


「これが分からない時点で、昨日今日始めた初心者だとバレちまう。あと悪い奴だったらギャビルソン君はただのカモだ。まあ俺は歩き方見て直ぐに分かったし危なっかしそうだったから声を掛けた。」


 そう云っている風神雷神をじーーーっと見ていると、更に話し出した。


「本当のところはランドさんからの突発クエストなんだけどな。ははははー。」


 どういう事だと考えていると、風神雷神曰く所属ギルドが初期町に交代で来て初心者をカモにしてる奴が居ないかの見回りをしているそうだ。そしてランドさんの所へ話を聞きに行ってみると今日新規さん来たぞと云われたがそこで突発クエストが発生したという。


「内容はこうだよ。稀な組み合わせのクラスだから苦労するはずだから助けてやって欲しい。そしてまた報酬が良かったのもある。まだ信用してないよななんならランドさんをここまで連れて来ても良いぞ。ちょっと待ってな。」


 そういって彼は走って行こうとしたので、引き留めた。


「いいからこれでも飲んで待ってな。」


 そう云って俺にリンゴジュース(イベント品)と云う、明らかに怪しくない飲み物を渡して走って行った。

 イベント品だから危険な飲み物じゃないと分からせる為だろう思い、口をつける。

(これは……)

 現実じゃ手に入れるのは困難な、ストレート果汁のリンゴジュースだ。

 困難というより高価だと云った方が良いか、高級店に行かなければ買えない。

 ゆっくりと味わいながらリンゴジュースを堪能していると、聞き覚えのある声が二つ聞こえてくる。


「ようウィンス、俺が云ったことちゃんと実践してるようで安心したぞ。」


「ランドさんがそんな事云ったから、俺全く信用して貰えませんでしたよ。」


「変なのに捕まるよりいいだろう。がっはっはっはっは。」


 ああ本当に世話を焼いてくれている人だったのか、現実で長年疑心暗鬼状態だったからゲームに来てまで癖付いてるのか…そう考えると(つくづ)く自分が嫌になった。


「気にすんなよ。最近新規減って来てるから、ゲーム仲間が一人でも増えるのは嬉しい事なんだよ。」


「風神雷神さん…。」


「あ、でも恥ずかしいからフルネームは止めて。」


「じゃあ風神さんですか。」


 それも恥ずかしいから(ふう)と呼んでくれれば良いと云う。


「じゃあ風さんですね。」



「んじゃ話を最初に戻そうか。クエストする為に掲示板探してるんだったよな。掲示板なら場所を教える。特に手は出さないが最初は危険な所に行かないか付いて行って、分からない事が有ればその都度聞いてくれれば答える範囲で答える。これが俺のランドさんからのクエストだ。それでいいよなランドさん。」


「十分だ助かる。」


「それとだ、フレンドとは別にサポーターと云うシステムがある。レベル50以上の者ならレベル25までの初心者をサポート出来るシステムで、危なくなった時に俺自身か手が離せない時には俺が前もって指定している人を即座に駆けつけさせることが出来る。これを申請するから許可して貰いたい。これはフレンドと違って居場所が見えないから安心して欲しい。」


 そう云う風さんの横でランドさんもウンウンと頷いている。

 判断基準が未だにNPCだと云うのが嫌になってしまうが、送られてきた申請に[はい]と押す。


「それとこれは完全に自由意志で良いんだが、ステータス開示はどうしようか。」


 それは何かと尋ねると、ステータス常時開示要求を許可すればその人は常に俺のステータスを確認出来る。

 ステータス一時開示要求は今一度だけ見れると云う。嫌なら拒否して欲しいと言われた。


 常時は嫌だがLv1の今なら良いかと思い一時開示要求だけ認めた。


 閲覧した風さんは困惑した表情を浮かべたまま。


「ちょっちょっちょっ、待った。ちゃんと話出来る所へ行こう。」


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