小枝の様なバスタードソード
手早く零落草を集め道を戻り別の道に入り、アイテムを使いつつ休憩所まで一気に走り抜けた。
道すがら出会う人もおらず、休憩所には八名の行商人が休憩しているだけだった。
特に用事もないのでその脇を通り抜けて西側の脇道へ入ろうとすると。
「おいアンタ砦へいくのか。」
その通りだと肯定する。
「だったら間違ってもあそこに居る奴とは戦うなよ。どんな事をしてでも戦闘は回避するんだ。忠告じゃない警告だ。間違っても戦うな。生きたきゃ逃げろ。生きてりゃまた逢う事もあるだろう、餞別代りだこれをやる…またな。」
<透明化ポーション> 効果時間:一分
これを使って生き延びろと言う事か。さっきのおっちゃんもクエストに関係あるのか、本当の偶然かは分からない。駄目で元々、デスペナルティも特にないし一回行ってみよう。
山道で登りだった為走らず歩いたので、大凡一時間程かかった。
外観はいつの戦争痕かも分からないくらい、古い傷跡が生々しく残っていた。
それにまだ昼過ぎだと云うのに急に霧がかかったかのように思える。
しかも白い霧ではない。赤黒さが混ざった様な異様な雰囲気の霧だ。
何が居るわけでもないが、ヤバさだけはビンビン伝わってくる。
いや、さっきの行商人のおっちゃんの話通りなら何かが居るんだろう。
ゆっくりと身構えながら自分自身に音毒魔法を掛け足音すらも消して進む。
地図を拡大するとある部分が光っている。恐らくここに[リラのタリスマンの欠片]があるのだろう。
砦内部へ足を踏み入れていく。
いつ崩れるか分からない古い壁、狭い通路に低い天井、風化した白骨や何かが焼け焦げた痕。
不気味な砦の中は迷路の様に複雑となっており、目的地へ中々辿り着けない。
結局二時間ほど歩き回り地下へ入る隠し階段を見付けた。
途中で淡く光るものがあり拾うと[錆びた六角盾の持ち手]だった。
まさか特殊クエストの一つがここにあるとは思っても見なかった。
そして階段を降り先通路を曲がった先に少し広い部屋があり床の上光っているものがある。
それが[リラのタリスマンの欠片]だった。
[リラのタリスマンの欠片]を手に取り、インベントリにしまうとそいつは姿を現した。
<ドレイド=マール=シュッツバーン> [リッチ]
「我が…宿敵、…憎き…リラ…。漸く…我…が…倒せる…のか。逃が…さぬ…ぞおおぉ…ぉぉぉ!!!」
駄目だ、これは駄目な奴だ。戦闘中となってしまった為、地図の移動機能は使えなくなった。
貰ったポーションの使いどころを間違えると、一発でやられそうだ。
まずは自分に音毒魔法、そして効果があるか分からないが聖時間魔法と時間空間を掛けてみる。
やはり効果がない。一瞬で距離を詰めて来たので、風空間魔法で部屋の入口へ逃げMPポーションを使っておく。
「逃げ…るな。…戦…え。」
どう見ても普通のリッチじゃない。バスタードソードの様な武器を小枝を振るが如く振り回すバケモノを、相手にする訳がない。
「風重力魔法」
相殺しようと咄嗟に風時間魔法を使う。効果四倍がやや上回り少し効果が残っていた。
道順は覚えていたので、階段まで戻り一気に駆け上がり隠し扉を閉め毒空間魔法を使い周辺に毒を撒き散らせておく。
そしてタダ只管外へ出る様に走って逃げる・逃げる・逃げる。
『ドガァァーン!!!』
今の音で扉が壊されたと分かる。その間に俺は外に出る事が出来た。
途中で効果が切れる事の方が怖いので、先に風時間魔法を掛けなおしておく。
恐らくあと十秒ほどは余裕がある筈だ。
10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…<透明化ポーション>使用
すぐさま自分に音毒魔法を使用し、振り返らずに全速力で休憩所を目指す。
「ど…こに…行っ…たの…だ!!!姿…を…見…せろぉ…ぉぉぉ!!!」
『ズガーン!』『ドッゴーン!』『ガリバリバリ…ゴゴゴゴゴゴ…!!』
手当たり次第に攻撃をするリッチ、周囲の色々なものが破壊されていく。
見たいけど振り返っちゃ駄目だ。1mでも2mでも先に進め俺。
すると(ポーン)と音がする。
<ドレイド=マール=シュッツバーンとの戦闘から離脱しました。>
『お…おお…おおおおおおお…おおおおおおおお!!!!!!!』
遠くで奴の咆哮だろうか声が聞こえる。要らない事を考えず地図を開き、ガートンを選択して直ぐに移動する。




