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プロローグ

行き当たりばったりです。

続かないかも。

いきなりだが、俺は生き返った。

しかも異世界だ。

ほとんどの人が剣と魔法のファンタジーな世界といわれれば思い浮かぶような世界だと思う。


物語の中ではありふれた話だが、実際経験してみると奇妙な話だ。訳も分からないまま気づけば死んでいて、見知らぬ女性のお腹に宿り、生まれ、おそらく脳の発達とともに記憶が湧き上がってきたのだから。


不思議なこともあるもんだと、馬鹿丸出しな結論を出し、俺は思考を現実に戻す。

すると、視界に高い城壁を捉えた。


「お、見えてきたな。」


大きく息をして伸びをする。

俺は長い馬車での旅によって悲鳴を上げる体に、自動車を恋しく思うと同時に今使っている座布団に新入りを加えようと誓った。


俺は馬車に乗って、この国の首都であり、自宅があるマルベーナから数週間かけて小さな港町に行き、また数週間かけてマルベーナに帰る。

今は丁度マルベーナに帰っているところである。

何故そんなことをするかといえば塩や名産品を買っていたのだ。


ユーリ・ペタン、18歳。

商人をしている。


***



「お疲れさん。」

「ああ、ありがとう。」


住民証と免許証(国から商人としての活動を許可するもの)を兵士に掲示し、門をくぐる。


この世界にも随分馴れた。魔法や魔物なんてものこそあるが、そこに住まう人は、文化は違えど根底は変わらない。

稼いで、食って、寝て。金がないと嘆く奴、俺の女がと惚気る奴。


別に異世界だから戦えってわけじゃない。いや、憧れはあるよ?でも怖いじゃん?痛いじゃん?

だから俺は似合わないことせずに、こうして商いやってるってわけ。


お、商会本部が見えてきたな。


「それじゃあ、俺達の役目はここまでだな。」

「ああ、お疲れさん。」

「疲れたぁ、早くシャワー浴びたーい。」

「そうね、でも組合に報告してからよ?」

「分かってるよ~。」


今話し掛けてきたのは、護衛のエイト達だ。

彼らはうちの商会で活躍してくれてる冒険者で、最近知名度も上がっているパーティーだ。


因みに、組合というのは、冒険者組合のことだろう。

組合や、ギルドなどと呼ばれる、依頼の仲介人であり、冒険者のアシストをしてくれる組織だ。


「ありがとう、また頼むよ。」

「ああ、こちらこそ!」


握手を求めると、エイトがそれに答え、別れる。


さて、俺も早く馬車を置いて報告しないとなぁ。

俺は手早く馬車を収め、荷物を作業員に任せると、商会の中へと向かった。


「あ、ユーリさん。お帰りなさい。」

「ああ、ただいま。レイスさんいる?」

「レイスさんなら・・・きっと第二事務室にいると思いますよ?」

「そっか、ありがとう。」

「はい!」


受付の子は元気だねぇ、それが仕事なんだろうけど。

階段を上がり、二階の第二事務室に向かう。


「あ、レイスさん、帰りました。」

「ん?ああ、そうか、どうだった?」

「問題なかったです。道中もエイト達が活躍してくれましたし、今回は豊作らしくて、作物も予定より沢山仕入れられましたから。」

「そうか、マルベーナの作物は甘味があって人気だからな、買い手もつくだろう。ご苦労だった、今日はもう休むがいい。明日も休暇を取るか?」

「ありがとうございます。そうします。」


レイスさんは、余り褒めるようなことはしないが、部下をしっかり見てくれるので、非常にやりやすい。理想的な上司じゃね?と、個人的には思っている。

さて、さっさと寝よう。明日はゆっくり休めそうだ。


***


とまぁそんな感じで、俺は生活している。

異世界なんて不安だらけだったけど、この世界で親父や母さんに育てられて、就職も成功。

娯楽の少ないけれど、美味い飯やちょっとした運動をするだけでも、俺は随分満足だ。


完璧とは思わないが、客観的に見て非常に良い状態ではないだろうか?


まあ、それも今日までの事だ。

それが何故なのかは、まあ順を追って説明しよう。


まず俺は仕事が終わってグッスリ眠っていた。

そしていつもどうり・・・いや、今思えば音や布団の手触りなんかの感覚、五感が鈍いような感じはあったけど、それも朝のまどろみ程度のもので、さして違和感はなかった。

そして眠い目を擦って起き上がった訳だが・・・


「・・・・・んぁ?」


寝起きで間の抜けたものだが、これが俺の第1声だった。

だって俺の部屋にでかい穴があいてたんだ。最近は暑くなってきたから、これぐらい風通しが良くないとねぇ、とかそういう次元ではない。


・・・すまない、まだ少し混乱してるのかな?話がぶれたね。

とにかくまず強盗を疑ったね。

こんな乱暴な犯行があるのか!?と周りを見渡すと意外にも荒らされたような形跡はなかった。


ただ俺のベッドにベットリと付いた血液以外はね。あ、ベッドとベットリは掛けた訳じゃないぜ?流石に寒い。

それで自分の身体を調べたらなんと!首筋に傷跡があるじゃないか!!

どうやら俺の血であることは確かのようだ。


なんて思ってると、妙に臭いなと感じて思わず顔をしかめたんだが、どうやら煙と焦げたような臭いがしたんだ。

それがあんまりなもんだから見に行ったんだが・・・ひどかったよ。昨日まで新築だった宿屋も、隣のお姉さんの家もボロボロだったり、血が飛び散ってたり、燃えてたりで、そりゃあもうひどかった。


そして何よりひどいのが街を歩く死体達だ。

所謂ゾンビって奴だね。仕入れの時に一度見たことがあるからすぐわかったよ。

人の死体を特殊な環境下においたり、ある魔法を使用することで、人の魔核を汚染し、魔物として生き返ったもののこと。

あ、ちなみに魔核っていうのは、魔法を使う為の魔力を生成する器官のことだよ。


あの時はエイト達が手早く始末してくれたから問題なかったけど、戦うことの出来ない俺は大慌てだったよ。

取りあえず叫んだね、それで慌てて家に戻る。そんで「ママ~~~!?」と言わんばかりに(実際には言ってないよ?)母さんの部屋に入ったらホラー映画かと思うような顔の母さんが人の肉を貪っていたんだ。

どうやら、ゾンビになってたみたいだねぇ。


今だから言えるけど、あの時は死んだと思ったよ。

でも不思議なもので母さんのゾンビは俺に一度振り返っただけで、また足元の人を貪りはじめたんだ。

あ、ちなみにその足元の人が親父だよ。


うん、ここまで話しただけで相当ヤバい状況なのは察してくれたと思う。ついでに俺が平然と親の死を語ってる辺りもツッコんでたらグッド。


まあこれ以上だらだら語るのを止めて結論から言わせてもらうと、俺もゾンビになってました。


まあそうだよね。ベッドの血をみた感じ致死量ですわ。

医療に明るくない俺でも分かります、はい。


それで俺の倫理観についても少し話しておくと、基本一回死んだ時点で崩壊してます。まあ死ぬときは死ぬよな、みたいな?

命短し恋せよ乙女ってな。元ネタしらんけど。違うか?違うな。

まあそれでもここまで無関心になったのは恐らくゾンビになったせいだと思う。流石に親しい人の死で何も思わなかったのは今年一番の衝撃だったね。

ついでにいうとテンションも高くなりました、ブイ(^_^)v。


それで俺はめでたく人外デビューを果たし、取りあえずもう一度ベッドに潜った。


「あー・・・・・どうしよ。」


それで回想して、今ここ。

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