精霊の目
【父:ダグサ視点】
娘が生まれてから半日が立った。ほとんど寝ていてたまに起きては控えめに感じる泣き声で空腹を訴える。
娘の泣き声が小さいのには何かわけがあるのだろうか?とても不安だ。
執務を放り出して娘の部屋で顔を眺めているが、やはりどれだけ眺めても飽きることがない。顔は母であるヘズドラの美しい顔にそっくりなのに目元だけは俺に似ている。将来は少し気が強い女の子になりそうだな。
髪の毛は俺の髪の毛と同じ赤色。ほんの少しだけ娘の方が赤が濃い気がする。火の素養が強いのだろうか。
そんなことを考えていると執事のウルウスがここだと言わんばかりの一直線で娘の部屋に来た。
「やはりここにいらっしゃいましたか、旦那様。ご息女様への愛情を爆発させるのはいいことだと私も思いますが、これ以上執務を投げるようでしたら奥方様に報告しなければなりませんな。」
「んなっ!ぐぅ...わかったわかったぞ 今すぐにやろう そうしよう。 ぬー...ジュナよ、父は頑張ってくるぞ!すぐに戻ってくる!」
ずっと世界で一番かわいい娘の前に座って顔を眺めていたいが、ヘズに報告されるとなっては致し方ない。 ウルウスのやつめ、最終手段をすぐに持ち出しおって・・
名残惜しさを前面に表しながら部屋を出ようとしたとき、ジュナがふと目を覚まし、こちらに目を向けた。
...む?娘の目に何やら模様が... あれは精霊印ではないか!しかも極彩色なんて聞いたことがないぞ!早くヘズに知らせてみてもらわねば
娘を生み、妻のヘズドラは出産時の疲労を回復するべく部屋で寝ているのだが、そろそろ起きてくる頃だと予想したダグサはウルウスを娘のそばにつけると妻の部屋に向かった。
と、ちょうどヘズドラが部屋から出てくるところであった。
「ヘズ!ジュナの目に精霊印が出たぞ!それも両目に極彩色のだ!あれは大丈夫なのか!?」
「極彩色の精霊印?聞いたことがないわね。とにかくジュナのもとへ行きましょう」
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「旦那様、奥方様。ご息女様は空腹を訴えておられるご様子でしたので侍女にミルクを作ってくるように指示したところでございます。
「精霊印は、印はまだあるのか?」
「はい。どうぞご確認を。 部屋に誰かが入ることがないように扉の前に行っております。何かあれば申し付け下さい。」
そういってウルウスは部屋を出て行った。
しかしこの精霊印、本当に大丈夫なのだろうか。本来精霊印はその身に宿った魔法の素質のうち、最高レベルに適性がある場合のみに目に現れるというものだ。その色はそのものが持つ適性属性の色を指し示すとされており、現にリム伯爵のところに生まれた子も左目に薄い緑色をした精霊印を持っている。
だが我が娘はどうだ。精霊印があるのは両目。それも色は極彩色に煌いている。まさかとは思うが全属性の魔法適性を最高レベルまで所持しているということなのか。
だとするならすさまじいことだ。だが、問題はそこではないのだがな。
短い時間のうちに精霊印のことについて知る限りのことを連想していると、隣でヘズドラが口を開いた。
「これは・・・両目に、それも極彩色・・・。本当にこんなことが起こりうるなんて。この子、これだけの魔法素質を抱えているなんて体の方は大丈夫なのかしら。」
そう、多大な魔法素質は精霊の力と呼ばれ、目に現れるのだが、その力があまりにも強いと体をうまく維持することができずに日常生活を正常に送ることができない場合があるのだ。
「旦那様、奥方様、ミルクが出来上がりましたが、ご息女様に飲ませいただきますか?」「ええ、ありがとう。下がっていいわ。」
短いやり取りのあとふたたびウルウスは部屋の外に出て行った。
ヘズの母乳を飲ませてもいいのだが、帝国での常識として、生まれた子は魔力のコントロールがうまくいかないので、魔力が少しでも混ざる母乳は2か月ほど飲ませるべきではない、というものがあるのでミルクを用意したのだ。
ジュナは勢いよくミルクを飲み干すとふたたび目を閉じて眠りに入った。
「体の異常に関しては今はまだわからんな・・・。なんにせよジュナの特異な体質について気が付けたのだ。今後サポートしていく以外あるまい。俺たちの娘だ。きっと乗り越えるだろうさ。」
「ええ、そうね。ジュナからはとても強い知性を感じるわ。きっと自分のことをすぐにでも理解するでしょうし、生きる上で大切なことをゆっくりと教えながら支えていきましょう。
・・・
それはそうとあなた?まさか、私が眠りについてから今の今までずっとこの部屋にいたわけではないでしょうね・・?」
「ぬっ!?...そ、そんなことはないぞ。しっかりと執務をこなしていt[あなた~?」ぐっ...すまない娘が可愛すぎてずっとここにいたのだ」
とてつもない笑顔でこっちを見るヘズドラに隠し通せるはずもなく、早々に両手を挙げて降参したダグサであった。
「では、お仕事に行きましょうね~。陛下にも公式に報告をしなければならないのでしょう?その日時ももうすぐ決まるでしょうし今のうちにやっておかなければならない仕事がたくさんあるはずよね? ウルウス?入ってきて」
「かしこまりました。ご用件は」「私はもう少し休むわ。この人が仕事をさぼることがないよう、しっかりと見張っていてくださいな」
「かしこまりました。では旦那様、行きましょうか」
ぬうう・・・仕方あるまい。ジュナを眺める時間は次までお預けとしよう。
目のことは娘に宿る精霊の力については今後色々と影響が出てくるだろう。あの子の側仕えとなるレイシスとマイアにも伝えておいたほうがよさそうだな。
ジュナが微睡み、眠りに入り、ダグサが書類との戦争に入るその日の夕方はなんとも光溢れる夕方であった。
2話です。名前のみ新登場のキャラクターが出てきました。今後物語の中にも登場します。
1話に引き続き父親、第三者視点で書いていますが、まだこのとき主人公のジュナは赤ん坊で、視点が出てきません。
次話よりジュナ視点になると思いますので、楽しみに待っていてください。
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読んでくださりありがとうございました。




