7.説明その4
「…魔力操作は置いといて、とりあえず魔法の練習してみようかな。」
「それがいいですね。」
さっきと同じように手のひらの上に火を出す。
「これを適当なとこにぶつけて…「待ってください。」
魔法を使おうとしたら女神(仮)に肩を掴まれ止められた。一体どうしたというのだ。
「貴女……馬鹿ですか?」
「は?」
「ここは森ですよ?火なんてぶつけたら火事になるじゃないですか!」
「ハッ!」
確かに火事になる…!失念していた。というか女神(仮)に気付かされるとか…しかも馬鹿にされたし…。
くそぅ、女神(仮)の分際で生意気だ。ぐすん。
少し落ち込みながら火を消した。
「火がダメなら水にしよう…。」
そう呟いて、手のひらの上に水の塊が出来るように想像する。野球ボールくらいの大きさだ。
えっと、これを木に当たるように念じれば…。
木に当たるように想像すると、水の塊は私の想像通り飛んでいき、木に当たり
木が倒れた。
「………え?」
「凄いですね~。まさか木を倒すほどとは思いませんでした。」
「いやいやいやいや、なんで!?どうして木が倒れたの!?」
楽しそうに笑っている女神(仮)に若干焦りながら質問する。
「貴女の魔力が強すぎるからですかねぇ…。」
「は?」
「多分そこまで意識せずに魔法を出したのでしょう?今の魔法に込められた魔力量が多かったため破壊力が増したんです。先程はゆっくりでしたけど、これを素早く撃てば山の一部くらいなら壊せたりしそうですね。試してみてはどうです?」
「遠慮シテオキマス。」
マジかよ…。これも気をつけなきゃいけないの?うわぁ…面倒くさい……。
というか山を破壊するのを勧めるな。お前一応女神だろ。環境破壊、ダメ、絶対。地球には優しくしましょう。あれ、ここ地球なのか?と、とりあえず自然には優しくしよう。
「まぁ、そのうち気にせずとも魔力量の調節など簡単にできますよ。そのための魔力操作ですから。」
ああ、魔力操作ってこのために合ったのか。……自分以外の魔力を操作しなくてもいいと思ったけど口にするのはやめておこう。まぁ、どうせ女神(仮)は心が読めるらしいからバレてるけどね。
「…他に聞きたいことはありますか?」
「うーん、特には思い浮かばないかなぁ。」
「そうですか。なら、私はここまでですね。」
「えっ?」
女神(仮)の言葉に首を傾げる。
「私の役目はもうこれ以上ありません。説明ばかりの上に少しの間でしたが貴女とお話できて楽しかったですよ。」
「そんな…。」
説明が終われば神様は姿を消す、それがテンプレ。
そうと分かってはいたけれど、やっぱり少しだけ寂しい。なんかぶつぶつ呟いてたり、可哀想という理由だけで人を異世界トリップさせたり、発想が物騒だったり、オヤジギャグが好きだったり、女神としてどうなんだと思うことが多かったけ「失礼な人ですね…。」
あ、ちょっと!折角いい感じにまとめようとしてるんだから紛れ込まないでよ!
「はぁ…。まぁいいです。消える前に貴女にこれを渡しておきましょう。」
そう言って女神(仮)に渡されたものは、鞄と仮面だった。
この仮面は…ジークの仮面だ!
「ふふ、これがないとジークさんには成りきれないのでしょう?貴女が死ぬ時、仮面を外していたので本来は持ってこれないのですが…特別です。」
「女神様…。」
「それと、この鞄は私からのプレゼントです。好きなものを好きなだけ入れられる…いわば四次元ポケットのようなものですね。ちなみに私はあの青い猫の妹が好きです。」
ドラ〇ちゃんか。最後の最後でいらない情報をぶっこんできたな…。
私は映画版のジャイ〇ンが好きかなぁ、男気が溢れてるもん。でも普段はし〇かちゃんが一番好きかも…いや、ミニド〇も捨てがたい………って、そんな話してる場合じゃない。
「女神様、ありがとうございました。」
女神(仮)にお礼を言って、お辞儀をした。
…いや、もう(仮)なんて必要ない。なんだかんだ言って慈悲深いし、綺麗だし、彼女は本物の女神様なんだろう。
「やっと女神と認めてくれましたね。嬉しいです。」
「……まぁ、最後ですから。」
女神様は美しく微笑み、そのせいでなんだか少し恥ずかしくなってぶっきらぼうに返事をしてしまった。
「最後じゃありません。私はいつでも貴女を見守っています。おはようからおやすみまで、いつでも見守っていますよ。」
「え、待って、それ私のプライバシーは?ねぇ、私のプライバシーはどうなってるの?」
「それでは、いつかまた会いましょう。」
「ちょ、女神様あああ!!カムバアアアック!!!!」
私の叫びも虚しく、女神様は消えていった。
私のプライバシーが……。