3.哀れみの目
「……それで?死んだはずの私が何故此処にいるんです?」
死んだという事実を受け入れるには時間がかかるが(というか死んだという実感がない)、騒いでも話が進まない。若干開き直りもあるけど、とりあえず話を続けるように促した。
「…貴女が、あまりにも可哀想でしたので気まぐれに手を差し伸べてみただけです。」
「可哀想?」
確かに突然死んだことは悲しいけど、流石に可哀想と思われるなんて思わなかったよ。
「ええ。子供の頃からの夢を叶えるため、高校に入学したらバイトに明け暮れ、成績を落とさないという約束で一人暮らしを手に入れ、ようやく夢が叶ったと思ったら満足に堪能する前に爆発に巻き込まれて死亡…。可哀想としか言いようがありません。」
女神(仮)にめっちゃ嘆かれてる…!や、やめろ!そんな哀れんだ目で私を見るんじゃない!!
ってか、女神(仮)私のことよく見てるね。さっきの言い方だと昔からずっと見てたみたいじゃん。やだ…ストーカー…?
そう思った瞬間、何故か女神(仮)に軽く睨まれた。な、何故睨まれたんだ。
「…私はこれでも神に属しますからね。考えていることくらいわかります。」
oh…まさかの心が読める神でしたか…。まぁ、むしろ読めて当たり前な気もするけどね。神様だし。というか、女神に(仮)って付けてるのもバレてるのか。ごめん。
「え、えーっと、『手を差し伸べる』って言ってましたけど具体的には何をしてくれるんですか?」
「何にしましょうかね…。」
まさかのノープラン。
「女神様、何事も計画が大事です。ノープランで話を進めてはいけませんよ。」
子供に言い聞かせるようにゆっくりと優しく諭すと、女神(仮)は少し不機嫌そうに唇を尖らせた。それやると更に子供っぽく見えるよ。
「仕方ありませんね。少し待っていてください。」
「あ、はい。」
そう言うと女神(仮)は後ろを向き、どこからかサイコロを取り出して振っていた。
「お待たせしました。貴女を異世界に連れていくことにします。」
女神(仮)はニッコリと笑い、私にそう告げた。待って今絶対サイコロで決めたでしょ。適当すぎない?
「異世界に行くにあたって、死なないように貴女のステータスを上げてさしあげましょう。」
「ステータス?」
「ええ。貴女が今から行く世界は、魔物がいますからね。折角連れていったのにすぐに死なれたら困ります。」
確かに、折角生き返らせたってのに魔物に襲われてすぐ亡くなりました、なんてことになったら生き返らせたのが無駄になる。ううむ、なんか少し不満があるけど連れていってもらえるだけ有り難く思うことにしよう。それに、チート大好きだから嬉しい。
「あー、ステータス上げるんなら魔力MAXにしてください。他はいいんで。」
「魔力だけでいいのですか?」
「はい。近接戦闘は怖いからやる気ないんですよ。それなら魔力を馬鹿みたいに上げといた方がいいかなぁ、って思って。」
剣なんて重いもの持ちたくないからね。私は杖だけで充分だよ…。出来れば戦闘しないのが最善だけどね。それに、ジークが魔導士だからね!魔法沢山使いたいんだ!そして魔法を使って楽に生きる!やったね!
「わかりました。しかし、魔力には上限がないのですよ。ですので使いきれないほどの魔力を貴女にさしあげます。」
女神(仮)は何が楽しいのか、ずっとニコニコと笑っている。…なんか裏があるように見えて少し怖い。
「魔法については色々と説明があるのですが…此処では分かりにくいですし、現地に行った方が分かりやすいでしょう。」
女神(仮)はそう言うと、指をパチンと慣らした。瞬間、ぐるりと景色が歪んだ。
ちょ、なんか気持ち悪いからやるなら先に言って……。