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新世界  作者: 五月
4/4

地下の神様

どこにいるの?

貴方はどこにいるの?

私はずっと探しているの。

そして連れていってくれる。

私を、こんな世界じゃなくて

新しい新世界へ。


ずっとまってる。







「神。」

「なーに、銀。」

「これは、一体どういうことなんだ。」

「どうもこうも、ショッピングだよ」


人間となった神様(今は神と名乗っている)は、

随分人間を楽しんでいた。

あれから3日、神はとことん

人間がすることを成し遂げ

人間より人間していた。

銀は目に見えて疲れていたが、

神が楽しんでいるのを見たら、

そんな顔もしていられなかった。


「ふーむ、そろそろかな」

「…?なにが」

「あのねぇ、銀。

僕がただ人間楽しみたいから人間に

なったと思っているでしょ」

「…………違うのか!?!?」


違ったのならば本当に驚きだ。


「まったく、これだから銀はさー。

僕はね待ってるんだよ。

僕以外の神が目覚めるのを。」


神は空を仰いでいつもみたいに

目をつぶる。

そして手を広げて全身で

風を受け入れた。


「5人の王が揃い

風軌くんが神権を使い

世界が回り始めるとき、

あの子が目覚める。」

「誰だ?」

「……祈ちゃん」

「いのり…?」


神はそれ以上言葉を

口にはしなかった。

さっきみたいにふらっと

足を動かして店をまわる。

銀は大量の紙袋を持ち直して

神の後ろを一生懸命ついていった。






「風軌、お前神権を使ったな。」

「ええ。存分に使わせてもらっています。」


学校ではもちろん、

池袋の風紀のため、

風軌はさっそく神権を

うまく使いこなしていた。

使うべきところに使い、

それ以外ではきちんと心の奥にしまう。

こんな扱いができるのはおそらく

風軌ぐらいなのだろう。

火周にはとても真似ができないので

風軌に感心した。


「お前がもって正解だったな。」

「当然の結果です。ところで火周、あなたは

池袋中央の地下にあるものをご存知ですか。」

「地下?」


池袋の中央。

そこは唯一王のいない区域だ。

誰も中央を管理していないため、

謎が多い場所として有名である。


「どうやら最近、

その付近で妙なことが

起こっているそうです。そして

その地下には、「神」がいるとか。」

「あいつじゃねぇのか」

「恐らく違う神です」


チッと火周は舌打ちをする。

神様が関わってくるとロクなことが

ないからだ。

現に1ヶ月前から火周の

日常はおかしくなりはじめた。


「どうやらその異変がその神の仕業、

らしいのです。明日、私が行ってみますが

貴方のお仲間にあそこには近づかないよう

警告していただきたい。」

「……わかった。お前一人でいくつもりか?」

「いえ、一応5人で行こうと

思っています。何かあっても

5人なら対処できるでしょう。」

「そうだな。

まぁ、俺は今日は帰るぜ」


風軌は息を吐いて

「絶対にすっぽかすのはやめろ」

と、念を押すような目で火周を見つめた。

正直すっぽかす気満々であった火周は

つられてため息をはく。


「……明日な」

「待っています。」


行くしかなくなったことが面倒だと

火周は全力で思った。





「ここか。」

「……ここに来るのは何年かぶりだ」

「私もいつも空にいるから

あまり来ないわ」

「ここって図書館あるだけで

なんもないもんね~」


中央図書館と呼ばれる大きな建物が

そびえ立っているここ、中央という

場所には王が存在しなく、

開放的な場所となっている。

しかし今日はそこに5人の王が

揃って来ているのだから、

周りの人々はひどく驚いた。


「この中央図書館の地下に

いるらしいです。」


言いながら風軌は迷わず

図書館の扉を開ける。

図書館自体は普通だ。

特に異変は感じない。

地下への階段を見つけると

またもや風軌はズカズカと

降りていく。

神権を、持っている風軌は

きっと何も怖いことなどないのだろう。

なにかあっても自分で「願って」

どうにかすればいいのだから。

この世界を手にとっているようなものだ。


「これは…」


そこには誰にも開けられないような

大きな鎖で縛られた大きな扉が

そびえ立っていた。

恐らく何かの封印なのだろう。


「神様がすんでるっぽいね~」

「明らかに怪しいわね。

今までこれに気づかなかったなんて」

「……開けられるのか」


普通なら、ムリだろう。

だが今は、ここに世界の神がいる。


火周が目で合図をおくると、

風軌は理解したという合図を

返してくる。

そして目を閉じて「願う」。


ギィと古めかしい音を立てて

扉は自然と開いた。

まるで、開くことを心待ちにしていたかの

ように。


「では、行きましょう」


中は本当に真っ暗で何も見えない。

火周は指をパチンとならして

指に火を灯した。

すると、辺りがあらわになりはじめる。


「誰か、いるの」


かすれた少女の声が、

長い廊下の向こうで響いた。

心に直接語りかけてくるような

この感覚は、以前にも体験したことの

あるものだった。


これは、神に話しかけられた時と、

同じもの。


「ずっとまってた。貴方が来るのを。」


その小さな少女は、全身を鎖で

巻かれていて無残な姿だった。

髪は伸びっぱなしでこの少女もまた

例の髪のように色素の薄い

透明と言ってもいいような

髪の色をしていた。

透けて向こうが見えそうだ。


「ようやく新世界の時が、

来たんだね。

だから私を迎えに来たんでしょう?」


少女はジッと火周を見つめて言った。


「ここはまだ、新世界ではありません」


少女の言葉を完全に否定するように

風軌は口を開いた。

だが、少女は気にせず


「私にはわかる。

もうすぐ、もうすぐっていってるの。」


少女はそういったあと

火周の服を掴んで

身軽に立ち上がった。

鎖の音がジャラジャラと

廊下に響く。


「貴方が火周…。思ったより、綺麗。」

「あ?」

「貴方は神、なんですか?」

「…そう。でも、今の私は不完全なの。

新世界ができれば完璧になる。」


神様は二人とも新世界を望む。

それは、力を欲しているからなのか。


「私、祈。」


祈は消えてしまいそうな笑みをこぼした。

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