リリーとマリア
「ギルティア、本当に助かるのですか?」
先ほどまでとは違い理性を取り戻したジェインが走りながらギルティアに話しかけた。
「ああ、この先ずっと進めば湖が見える筈だそこで落ち合う事になっている」
ギルティアはジェインを探している間にアーシェと連絡をとっていた。幸運な事に、キャミは既にこちら側についているらしい。
アーシェに早急にキャミをこちらに向かわせる様に頼んだ。
「誰と待ち合わせしているのか聞いても…」
不安げな様子で聞くジェインにギルティアは
「会えば直ぐに分かる」
ギルティアはジェインの質問に軽くそう返すと黙り込んだ。その様子を見てジェインも口を噤み、それきり目的地に着くまで二人の足音だけが響いた。
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走り去る二人を見送ったアレンは
「ギルティア君は…一体何者なんだ」
と苦しそうに呟く、アレンはギルティアが普通ではないと言う事に気づき始めていた。いや、目をそらせなくなっていた。
今だって魔族化したジェインと共に人間では到底考えられないスピードで走り去っていたし、魔王の5番目の娘、アーシェを突然殺した事や妖精が見えたり、聖なる力を使えたりと謎が多い事から目を反らせなくなった。
アレン達は幼い頃から一緒に育った。物心がついた時にはギルティアの事が好きになった、ギルティアを守りたい一心で勇者になった。
ギルティアがアーシェの所に行った時は身が裂かれる思いだったし、いかにギルティアが自分にとって大切な人物なのか改めて身にしみた。
本当の事を言えばギルティアが何者であってもどうでも良いでも…
アレンの立場がそれを許さない
勇者
「もし君が魔族であっても構わない。でもそれ以上の存在だったら僕は…」
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「アレン様…」
「そっとしておきましょう、今の彼にかけられる言葉は無いわ」
リリーはマリアの言葉にコクンと頷いた。
「おばさま、ちょっと話があるのですがいいですか?」
改まった様子で訪ねるリリーに
「良いわよ、そろそろ貴方からくると思っていたから」
マリアのその言葉に不思議に思いつつ安心したリリーは口を開いた。
「単刀直入に申し上げます。ギルティアは何者ですか、何故、魔族………嫌、魔王族なのですか?」
「そう…もうそこまで気づかれていたのね。だったら私の知ってる事を全て話すわ」
マリアはリリーの言葉に初めこそは驚いた様子だったが、諦めたかの様に話始めた。
マリアの話が終わりリリーは話しかけた。
「ギルティアは魔王族…他に何かありませんか?」
リリーの言葉にマリアは首を横に振った。
「これで全てあの子の聖なる力だって何であるのかもさっぱりだわ」
「じゃあ最後に教えてください。ギルティアは私達の仲間ですか、敵ですか?」
そう言い終わったリリーの瞳から涙が溢れ出た。後から後から流れ出る涙を拭うこともせず真剣なまなざしでマリアを見つめる。
「それは貴方が決める事よ。違う?」
そう言うマリアは穏やかな笑みを浮かべていた。