助かる道
「殺す、殺すころすころす殺すコロスコロスコロス」
ジェインは我を失った様子で呟く。
「とうとう正体を現したな化け物め」
そう言うとバロンは再び詠唱を初め攻撃を繰り出そうとしたが寸前のところで止められた。
「マリア…何を…」
マリアはバロンの手をキツく握り睨みつけると顔を思いっきりひっぱたいた。
「…本当は殺してやりたいですが今はその時間も惜しい」
マリアはそう言うとネイの元へ駆け寄った。
「良かった、まだ息はあります」
「本当ですか…ネイは助かるんでしょうか?」
ジュノーのその言葉にマリアは眉間にしわを寄せ首を振った。
「残念ながらこのままでは確実に死んでしまうでしょう。でも、ギルティア」
マリアは呆然と立ち尽くしているギルティアに声を掛けた。
「何でしょうかお母さん私に何か出来るのでしょうか?」
「貴方しか出来ない事よ。貴方の聖なる力を使って頂戴。もしかしたら助かるかもしれない」
早くと急かされたギルティアは直ぐに力を使う。
しかし、ギルティアの力はネイの表情こそ比較的柔らかな物に変る事が出来たがそれだけで命を救うに至らなかった。
「ごめんなさい。私の力が至らなくて」
ギルティアは泣き出しそうになるのを必死にこらえるが涙が一筋頬を伝う。
「無理だわ。この女死ぬわ、確実に」
ビビはギルティアの肩の上からポツリと呟く。
「ビビ。駄目だよぅ、そんな事言っちゃ」
ロロは慌てた様にビビを止めるが、
「でもこんな傷治そうと思ったらそれこそ魔王族の力が必要だわ。そうでしょロロ」
「そうだけど無理だよぉ。魔王族の力なんか借りれないよぉ」
「それは本当か?本当に魔王族の力を借りれればネイおばさんは助かるのか?」
ギルティアは必死になって二人の妖精に問う。
「そうだよぉ、でも魔王族の13番目の子供キャミの力じゃないと駄目なんだよぉ、だからどっちみち無理なんだよぉ」
(確かキャミはアーシェがこっち側に着く様に交渉中だったな。もしかしたらいけるかもしれない)
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「止めるんだジェイン」
アレンの必死の叫び声がジェインを止めようとするがその声はジェイン届かない。
「離せ、僕は僕はあいつを殺すんだ」
ジェインの力は強く、必死に止めるアレンを引きずりバロンの元へ近づく。
「ジェイン駄目よ。バロンを殺したら貴方は本当に…そんな事私はさせないわ」
リリーはジェインの前に立ちはだかり両手を広げ、通せんぼする。
「リリー貴方は…」
リリーのその姿を見てジェインは一瞬迷った表情を見せたが動きは止まらず今度は、リリーとアレンを引きずりながらバロンの元に近づいて行く。
「ちょっと、止まりなさいよ」
「ジェイン、止まるんだ。父さんを殺してもしかたないだろ」
アレン、リリーも制止の声は届かない。
「ジェイン!おばさんが助かるかもしれない手を貸せ」
そんなジェインを止めたのはギルティアだった。
「助かるのか…」
ジェインは信じられないと言いたげな表情で呟いた。
「ああ…まだ分からないが助かるかもしれない。アレンこいつ達を頼む」
「えっ!何を…」
ギルティアは妖精達をアレンに預け、ジェインとともに行った。
「えっ!ちょっと待つんだ」
「待ちなさいよ。どこに行くのよ」
普段から想像もつかないスピードで走る二人に追いつける筈も無く、アレンとリリーの叫びが空しく響いた。