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憎しみ

アレンとギルティアは呆然となり立ち尽くしていた。アレンは自分の言ってしまった事が恥ずかしすぎて、ギルティアはアレンに好きな人がいるという事がジョックすぎてだ。


「ほらほら、何しているのですかリリーは先に行ってしまいましたよ」


ジェインのその言葉で我に帰った二人はお互い言葉を発する事無く歩き始めた。その様子を見たジェインが何か言いたげな表情をしていたが元はと言えばこの状況を作り出したのはジェインだったため何も言えずアレン達について行った。



バロンの家は普通の民家とは違って大きく広い、バロンの部屋は2階に上がってつきあたりにあるそこに向かえば良いのだがここの部屋の住人でもあるアレンはこの家の様子がおかしい事に気づいた。


「どうしてジョナサン達がいないんだろう」


ジョナサンとはアレンの家に使える執事である。初老の細身の男性で人の良い人物でバロンの忠実な(しもべ)で有名だ。


「ジョナサンがいないという事はもしかしたら父さんはここにいないのかもしれない」


アレンの読みは見事に当たった。バロンの部屋に着くとマリアとリリーが困った様子で立ち尽くしていた。


「リリーどうしたんだ?」


ギルティアがリリーに声をかけるとギルティアに気づいたリリーが不機嫌な様子で


「遅いですわ、アレン様。今マリアおばさんとバロンおじさんを捜しているのだけど見つからないのですわ」


「そうなのよ先ほどから探しててこの屋敷は全て見回ったのだけど見当たらなかったの、それどころかメイドさん達もいなかったわ」


リリーに続けてマリアも困った様子で言った。


「アレン、バロンおじさんが行きそうな所とか分からないか?」


ギルティアの言葉にアレンは


「もしかしてあそこかな。たしか…朝、父さんが行くって言ってたような…」


手掛かりはアレンだけ、アレンのおぼろげな記憶を頼りにその場所にギルティア達は向かった。


_____



「本当にこの場所で正しいのですか?」


そう言ったのはジェインでその顔の疲労の色は濃い、理由は明確で、この場所に来るまでに村の広間などを通りかかったのだが昔からの知り合いに石を投げつけられ出て行けと罵られたからであった。


「確かその筈だよ…ちょっと静かに声が聞こえる」


アレンのその声で一同は耳を澄ませると声が聞こえてきた。


「おい、この裏切り者めが早く抵抗をやめてその魔族を引き渡せ!」


「ふざけるな、放っておいたら妻に何をするつもりなんだ」


声は言い争いをしていた。攻める物言いをしている方はギルティア達が探していたバロンであったため、アレンの読みは正しかったが、予想外に誰かと言い争いをしているようだ。


「この声は父さんだ、バロンさんと言い争いをしているのは父さんです」


ジェインは慌てた様子で言った。


「本当か? だとしたら危ない急がなければ…」


そう言ったアレンに続き一同は歩を早めた。


「あなた!!もう良いです。私が悪いのです夫は何も悪くありません。バロンさん、そちらに私は行きます。ですからもう止めてください」


「バカを言うな。っく、バロンの所に行ったら処刑されるだけだぞ、そんな事は許さない」


声の方に駆けつけるとそこにはバロンから妻を守るため傷ついたジェインの父ジュノーがいた。

__


「父さん何をしているんだ」


アレンはそう叫ぶとジュノー達を守る様にバロンの前に立ち塞がった。


「アレン邪魔だどきなさい」


「嫌だ。どいたらネイおばさんをどうするつもりだ」


父バロンを真っ直ぐ見、言ったアレンに


「どうするつもりだと…もちろん殺すつもりだ」


バロンは冷たく言い放った。


「ちょっとバロンおじさん。ネイおばさんを殺すだなんて頭おかしいんじゃないの、ネイおばさんが何をしたの。まさか魔族ってだけで殺すつもり馬鹿じゃないの」


リリーはバロンをキッと睨みつけ言った。


「馬鹿だと、魔族は殺さないといけないのは分かっているだろう。国の為だ。お前達は勇者なのだぞその事を自覚しろ。それこの女は魔族である事を隠し我々を騙していたんだぞ。それだけで充分殺すに値する」


         地獄バーツルグズ 劫火ファイフェル


そう言うや否、バロンは攻撃魔法を繰り出した。

攻撃はアレンの前に到達するとカーブを描きアレンの後ろに隠れるようにいたネイにまともに当たった。


「母さん‼︎糞、バロンお前〜」


「ネイ、ネイネイ〜」


ジェインの叫びとジュノーの叫びがこだまする。


「ふっざけるな!何が元勇者だ。国の為だ村の為だ。こんな事をするお前達の為に旅をしてきたかと思うと反吐が出る」


ジェインは泣き叫び、人間の姿を替え魔族の姿に変わる。


「殺してやる、殺してやる」


「ジェイン止めなさい……憎しみに…とらわれては…いけません」


そんなジェインを止めたのは息も絶え絶えになっているネイだった。


「母さん」


ジェインはすぐにネイの元に駆け寄る。


「いけ…ません…」


ネイはそう言うと意識を手放した。


「かあさん、かあさん…うわぁぁぁぁぁああああああ」


ジェインは泣き叫びその叫びは辺り一面に鳴り響いた。

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