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人と魔族

「母さん、どうして村のみんなはこんな事をするんだ。ジェインが何をしたって言うんだ」


アレンは怒りに拳を震わせる。


「それは…言いにくいけどジェインが半魔族だからよ。どうやって知ったのか知らないけど、ジェインが半魔族だとバロンが触れ回っていたのは知ってたわ。私は信じていなかったから無視していたのだけど。まさかそれが本当でしかも村人が信じるなんて思っても見なかったわ…ネイとジュノーは逃げれたみたいだけど本当にごめんなさい」


マリアは悲痛な面持ちで俯く。


「マリアおばさんのせいではありませんよ。僕が半魔族という事実には変わりありませんし、それにマリアおばさんは僕や母さんが魔族だと知っても他の村の人たちみたいに変わらなかったそれだけで良いですから…」


ジェインは泣き出しそうな表情で言ったその様子にたまらなくなったのかリリーがジェインに抱きつく。


「大丈夫よ!あんたが何者であろうと仲間には変わりないからそれにネイおばさん達はきっと大丈夫よ」


よしよしとジェインをリリーは幼子をあやすかのように撫でた。その行動にジェインは嬉しいのが半分辛いのが半分と何とも言えない表情になり、


「リリー、見てる。止めてください」


その声に自分が何をしていたのか気づいたのかリリーは顔を真っ赤にさせてジェインから離れた。


「ごめんなさいつい」


その場に一気に甘い空気が漂うがそれを無視してギルティアは話を進めた。


「お前達いちゃつくのは構わないが場所と状況を考えてくれないか?」


_________


ギルティアのその言葉にリリーが激怒したのは言わずもがなだ。


いつまでも家の前で騒ぐのも時間の無駄だと判断したギルティア達は早速家の中に踏み入ろうとした。


「ちょっと待ちなさい。私が先に入って様子を見て来るわ」


「何故ですかマリアおばさんみんなで行けば良いじゃないですか、 別に魔物の巣に行く訳ではないですし…」


アレンは不思議そうに首を傾げる。


「あの馬鹿何か隠しているそれを問いただすのよ。アレンなら分かるでしょ、あの人はこうと決めたらよくも悪くも突き進む口を簡単に割るとは思えないわ」


「でも、いくら昔の仲間だからと言ってマリアおばさんに口を割るのですかそうは思えませんが、だから別の方法を…」


「大丈夫よ。あのバカは昔から私に惚れているみたいだから。私には言うでしょ」


そう舌をぺろりと出した姿は年齢を感じさせない程可愛らしい物でこの場いた全員が何も言えなくなった。


母マリアはバロンの家に先に入り様子を見てくると良いギルティア達より先に家の中に入って行ったが中々出てこない。予定では15分程でマリアからの合図がありその合図があれば踏み入る予定だった。


「母さんはどうしたのだろうか、もしかしたらバロンさんになにかされているのだろうか…」


「まさか、父さんは確かにクズだけど昔は勇者をしていた人だよそんな人が変な事する訳ないよ…多分」



アレンは最初こそは勢いよく言っていたが自信がなくなったか言葉が尻窄まりした。


「自信無いの ?信じられないおばさんに何かあったらどうするのよ」


リリーはそう言うなり扉を蹴破る勢いで開けた。

築数十年は経っているであろう家の扉は脆くなっていたようでリリーの勢いでギィーと音を立てたかと思うとけたたましい音を立てて扉はそのまま倒れた。



「あ〜!!」


アレンは焦った様子で、壊れて木片となって倒れている元扉に駆け寄りしばらく様子を見ていたが立ち上がりリリーの元に近寄った。


アレンの身体が小刻みに揺れている、来るなとギルティアは思い耳を塞いだ。



「リリー!!」


アレンは怒りの叫び声を上げたが、


「ごめんなさいアレン様、でもこんな事している場合ではありませんわ。早く行きましょ」


リリーはアレンの叫びを物ともせずそう言うなり先に家の中に入っていた。



_____



アレンはリリーのそんな様子に驚きながらも少し嬉しそうな表情をしてリリーの後に着いて行く、その様子を見てギルティアは胸の中にざわめきが起こったがそれを無視してアレンの後に着いて行く。


そんなギルティアの様子を見かねたのかジェインが助け舟を出した。



「アレン、嬉しそうですね。リリーに惚れましたか ?駄目ですよリリーはぼ「何を言っているそんな訳ないだろう」


アレンはジェインのからかいの言葉をきっぱりと否定した。


「僕が誰が好きなのかジェインはもう知っているだろう。僕はただリリーが素で僕に接してくれる様になった事を喜んでいるだけ……ってなんでも無い僕は何も言っていないよ」


アレンは話の途中でアレンの方をじっと見ているギルティアの視線に気づき慌てて先ほど自分自身が言った好きな人がいるという言葉を否定したがもう遅い。



「アレン好きな人が居たんだな…」


ちょっと落ち込んだ様子で呟くギルティア、そのギルティアの様子に気づかず慌てているアレンを見て


(余計な事をしちゃったかな。でも二人ともお互いの気持ちを早く打ち明けてくっつけば良いのに…何故魔族と人は仲良く出来ないのかな)


リリーは思ったがそんな事を言える筈も無く変わりに深いため息を一つ吐いた。


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