歌
森の動物達と話し終わったギルティアはビビとロロに話しかけた。
「道が分かったぞ。案外近くまで来ていたみたいだあの大きな木を目指して真っすぐに行けば良いらしい」
そう言ったギルティアの腕にいっぱいの果物があった。
「それは?」
ビビは指をさして聞いた。
「見て分からんか果物だ。動物達がくれたまだまだあるぞ」
そう嬉しそうに言うギルティアにビビは
「別に良いわよ。それに私達は食べれないし」
「そうなのか?」
「そうなのですぅ。僕たちは聖女様に聖力を込めて貰った食べ物しか口に出来ないのですぅ」
そうロロは答えた。
正確にはこのロロの言葉には語弊があった。
決してロロ達妖精の一族は聖力を込めた食べ物だけしか食べられない事はない。
ビビやロロは特別に力を使っているから聖力を込めた物しか口に出来なかったのだ。
特別に使っている力とは見たもの聞いたものを水晶や聖なる泉に映し出す為にヴァルヴィンの魔導具に送っている力。
その為膨大な魔力が必要となり聖力の込められた食べ物でも食べない限り魔力を補充する事が出来ないからだった。
「そうそれがこの食べ物あんた達の旅が終わるまでの食料はこの通りよ」
そう言うとビビは自慢げパンパンにふくれあがっ大きな袋を取り出した。
袋のサイズはビビ5人分のサイズだろうか何処にどうやってしまっていたのかは謎だ。
「この中には聖力が込められた豆があるの。一日一粒だとして二人分で2年分くらいあるわそれまでに旅は終わると思うからこれで十分よ」
と胸を張って言ったその時だった。
猿がいきなりその袋をひったくった。かと思いきや袋の中身を全部口の中にいれ食べ始めたのだ。あまりの突然な出来事にギルティア達は何もできずに見ている事しか出来なかった。
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「うわ〜んどうしよう食料がなければ私達死んじゃうよ〜」
ギルティアは慌てて猿から袋を取り戻したが全て食べた後でありもう後お祭り状態だった。
「聖力が込められてなければだめなんだよな。もう一度戻って聖力を込めてもらう事は出来ないのか?」
ギルティアの言葉にビビは首を振って泣くだけで答えない。
ギルティアは困った様にロロに視線を向けると遠慮がちに口を開いた。
「聖女様は忙しい方で元々僕たちでさえあんまり会う事は出来なかったのですぅ。それに聖女様の力はみんなのものですぅ僕たちに余計に使う事は許されないですぅ聖女様の依頼が果たせないですぅ」
「でもそれだとご飯食べれなくて死んでしまうのだろ…ん?待てよ」
そう言うやギルティアは袋の中に残っている豆の欠片を見つめた匂いをかぎ舐めてみた。
「うん何とかなるかもしれんぞ」
「……ぐす。本当に?」
「本当なのですぅ?」
「その代わりこの事は誰にもいうなよ。っと言っても誰もお前達の言葉は分からないか…」
そう言うとギルティアは再び歌い始めた。
先ほどとは違ってアップテンポで聞いている人を楽しくさせる歌だった。
「えっ?」
とビビとロロは驚き同時に言ってしまう。
ギルティアはいきなり自分の身に纏っている鎧を脱ぎ始めた。
剣や盾などの防具なども脱いでいる。
脱ぎ終わったギルティアの格好は普段とは違った。
後ろで一つ結びしている髪はおろされ鎧や盾、腕あてや臑あてをとったギルティアは下に着ている薄い服のみの格好になった。
ギルティアが下に着ていたのは一枚の布に穴をあけただけの簡易なものだったが、ギルティアの容姿のせいかそれは高級な白いドレスの様に見えた。
ギルティアは歌いながらくるくると踊り続ける。
ギルティアの歌を聞いていた動物達は次々と飛び跳ね踊り歌い始める。
鳥達はギルティアの周りをくるくると飛び回り口にくわえていた木の実をギルティアに落とすギルティアは自分の太ももを軽く叩いた。
そこから翠と碧色の魔力のような物が放出された。その放出された物は木の実の中に入り入った途端鳥がその木の実を回収空っぽになった袋の中に入れた。
ギルティアの踊りと歌は袋がいっぱいになるまで続きいっぱいになった途端唐突に終わった。
動物達は残念そうにしながらもギルティアに鼻の頭をこすりつけたり擦りよったあと森に帰って行った。
ビビ達の食料を食べてしまった猿もビビ達に申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた後森の中に帰って行った。
「ふう…これでどうだこの木の実は食べれるか」
そう言ったギルティアは木の実でいっぱいになった袋をビビに渡す。
ビビは恐る恐る木の実を口に運んだ。
「こ・これは聖女様より強い聖力が込められているわ。でも何故なの?」
ビビは驚いた様子で言った。
「まあ良いか…これは私達だけの秘密だぞ」
ギルティアは二人が頷くのを待った後にいった。
「私も聖女だったりするのだ」