盾
「次は聖なる盾があると言われている山に行きます」
ギルティアの質問に答えたのはアレンだった。
「そうよ。盾は山にある教会におさめられているという話だわ」
アレンの言葉に補足する形でリリーは説明した。リリーが言うにはその山はここから馬車で2日ほど行った所にあるらしい、馬車は既にヴァルヴィンの王様が好意で用意してくれたらしくもう行く準備は既に出来ているとの事だった。
「では、行こうか」
「えっ!もう行くの?」
ギルティアの言葉にリリーは驚き言ったがやがて諦めた様子で、
「分かったわ。本当はもうちょっと休みたかったけどあんたがそこまでやる気だしているんだったら我慢してあげる」
「ありがとう」
そう言ったリリーにギルティアは礼を言った。
それを合図に準備を始めたアレン達勇者一行は出発する事になった。
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出発する事5日まだ目的地にたどり着かないままでいた。
目的地の山まで送り届けてくれた使者を見送った後アレン達は山に入った。
周りは鬱蒼とした森林で目印らしき物はなく黙々と歩々を進めていた一行だが歩く事3日目でリリーが耐えきれず口を開いた。
「アレン様もしかして私達遭難していますか?」
いつも元気なリリーが不安げなまなざしでアレンを見るアレンは黙って頷く事しか出来なかった。
「えっそうだったのか?」
そう言ったのはギルティアでギルティア本人としては前に進むアレンについて行くばかりで迷っている事などに全く気づいていなかったようだった。
「ってギルティア気づいていなかったんですか?」
もう既に迷っている事に気づいていたのかジェインが信じられないと言った様子で言うがギルティアはその言葉に反論する。
「気づくわけないだろ。この3日間アレンは迷った様子なく進んでいたんだぞてっきり道を知っている物と思っていたぞ」
「いいですかギルティア。アレンは昔から迷子になっても知らせずみんなを困らせた事をあるのを忘れたのですか?」
「そうだったな。ふむ、ではちょっと待ってくれ道を聞くから。で教会は何処にある?」
ギルティアは何故か定位置になりつつある自分の頭と右肩に向かって声を掛けた。
「知らないわそんなの私達ずっと聖女様と一緒にいたんだから場所なんて分からないわ」
と右肩に乗っているビビが。
「僕も知らないですよぅ。そもそも僕たちは何も知らないですぅ」
とロロがギルティアははぁと一度深いため息を吐いた後口を開いた。
「こいつらが何か知っているみたいだ」
「知らないって言っているでしょ」
「僕も知らないですぅ」
二人の言葉を無視してギルティアは続ける。
「二人に詳しい話を聞いてくるからお前達はここに残って休んでいてくれ」
「何でよ私も一緒に行くわよ。てかなんで行く必要があるのよ」
リリーは抗議の声を上げたが。
「この子達に詳しく道を聞いて危険がないか見てくる。それにリリー正直この3日間歩きづめで疲れただろう休んでいておけ。すぐに戻る」
そう言うなりギルティアはその場を後にした正直な所体力の限界でヘトヘトになっていた所だったリリー達は言葉に甘えて休む事にした。
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「だから私達は知らないって言っているでしょ。もしかして私達の言葉分からなくなったの?」
とビビは叫んだが、
「分かっているそうギャンギャン叫ぶな」
「だったら何でそんな僕たちが知っているって嘘をつくのですぅ?」
ロロが不思議そうに小首を傾げていった。
「お前達に聞くつもりはないがあの場を抜け出すにはああいうしかなかっただろう…ちょっと待てよ」
とギルティアは言うやいなや歌いだした。
奇麗な音の調べ、聞いている者に幸福を与える歌声だった。
この奇麗な歌声にはこのビビとロロはうっとりと聞き惚れていたがそれと同時にビビやロロの目や耳を通して見たり聞いたりしている不特定多数の人々も魅了した。
ギルティアが歌い終わると同時に周りが騒がしくなる。
何かが近づく気配やガサガサと音がする。
ビビとロロは音に驚いて魔物が来たのではないかと不安になったがそれもすぐに杞憂となった。
「森の動物?」
「そうだ」
二人の同時の呟きにギルティアは答えた。
「みんなに集ってもらったのには理由があるんだ。私達は道に迷ってしまったんだ。ここの山にある筈の教会が何処にあるのか教えてくれないか?それとついでに食べ物もあると良い」
ギルティアは周りに集った動物達に話しかけるその様子を見て二人の妖精は心底驚いた。
「私達だけじゃなく…動物とまで喋れるだなんてまるで聖女様みたいだわ」