薬
「これで残る聖なる武器は盾と兜だけだね」
嬉しそうに言うアレンにギルティアは内心穏やかではなかった。確かに聖なる武器は集めるつもりだったし早く集まって欲しかったがそれ何も知らなかった時の話だ。
今でも聖なる武器を集めるという事には変わりがないが何の準備もなしに集めてしまえばそれこそ命を無駄にするだけ、これ以上命を喰われ続けていたらゼムを殺す前に自分が死んでしまう。
「メスゴリラちょっと話があるのだけど良い?」
長らく思考停止状態に陥っていたギルティアを助けたのはリリーだった。
「話とはなんだ?」
吐き気を抑えギルティアは呟く。
「良いから来なさい」
ギルティアは不思議に思いながらもリリーについて行く事にした。
ジェインの様子が気になったが顔色は悪いが今の所大丈夫みたいだった。
「ここなら大丈夫ね」
リリーに連れてこられた場所は空いている客室だった。
「あんた死にかけているでしょ」
「なんで…」
「だってジェインなんかよりきつそうだったんだもの。本当はアレン様と一緒に城の病院に行ってもらいたかったけどねその方がアレン様嬉しそうだし」
リリーは恥ずかしそうにうつむきながら言う。
「で、何故具合が悪くなったのかわからなかったのだけど城に着いて分かったの。その聖なる武器って魔の一族の命を喰らうのでしょ。最悪死ぬって聞いたわ」
リリーの言葉にギルティアは誤摩化さずに頷いた。
「やっぱりそうなのね…気づいてあげれなくてごめん。でももう安心して薬の作り方を教えてもらってきたから」
「何だと!それは本当なのか」
ギルティアは驚き叫ぶそんなギルテリアにリリーは不機嫌を隠さない様子で言った。
「なによ、私を疑うつもりなの酷いわね。でも本当よ城には半魔族の衛兵とかがいてどうやって喰われるのを防いでいるのか聞いてきたら薬の作り方を教えてもらったの」
「リリー本当にありがとう」
「別に…たいした事無いわそんな事よりあんたに死なれる方が困るもの」
ギルティアは何度も何度もリリーに礼を言った。リリーは照れた様子で、
「だから気にしないでって言ってるでしょ。恥ずかしいわね仲間だから当然の事よ。それにこの薬あげるからジェインにも渡しといてね」
そう言ったリリーはギルティアに薬を渡し部屋を出て行った。
「………ジェイン。ばれているではないか」
ギルティアは自分以外誰もいなくなった部屋で独りぽつんと呟いた。
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戻ったギルティアは早速ジェインに薬を渡した。リリー達はこの町に送り届けてくれた使者と話があるとかで出た言った。
「まさかバレているだなんて思いもしませんでした」
ジェインは深くため息を吐いた。
「しかしジェイン何故お前はみんなに半魔族だという事を隠しているのだ?城の衛兵にも半魔族は存在していると聞く。私はともかくお前はバレても問題ないと思うが…」
ギルティアの言葉にジェインは、
「それは…前にも言いましたが人間にとっては魔族も半魔族も変わりありません。勇者一行には加えて頂けていなかったと思います。何も知らない人達が僕たちの正体を知れば、いつ勇者の寝首をかくかもしれない敵でしかないわけですし」
苦虫を噛み潰した表情で言った。
「それに城の衛兵をしている半魔族に自由はありません。奴隷と同じ扱いだと聞きます」
「そうかわかった。もう何も聞かないそんな事より早く薬を飲まないか?聖武器が増えた成果以前よりつらい」
ギルティアは無理矢理話題を変えた。これ以上ジェインにこの話をさせる事は出来ないと判断したからだ。
「そうですね。では頂きましょう」
「そうだな」
二人はほぼ同時に薬を飲み込んだ。
コップ一杯の水を飲み干す、薬は即効性のある物だったのかすぐに効果が現れた。
「凄いです。もう全然つらく無いですこれなら聖武器の近くに居ても問題ありませんね」
ジェインは凄く喜んでいる様子で言った。
「そうだなこれで問題なく旅が続けられる。リリーに感謝だな」
ギルティアもジェインと同じ様に言ったが表情は若干曇っていたでもそんな事は喜んでいるジェインは気づく事が出来なかった。
(痛みは少なくなくなったがそれだけで効果は無し…半魔族用だからか…)
ギルティアはこれ以上リリーに薬が効いていない事を悟られない様によりいっそう気を引き締める事に決めた。