怒り
「何故死にたいのですか?」
アレンはつい質問してしまった。
「何故?私は自分の一番大切な者を守れなかったからです」
「大切な者?」
アレンはまたも質問してしまった。
「はい、私の妹です。私は大切な可愛い妹を守れなかったのです私が少し目を離した隙に妹はアン姉様に殺されてしまったのです」
アーシェは悲しげな表情で呟くように言った。
「ばっかみたい、守れなかったなんてだから死にたいなんて甘えないでよ仇を討てばいいじゃない!あんたが死んだって妹が戻ってくるわけじゃないじゃない」
リリーはキツい言葉を投げかけた。
「わかっているわ!私が死んだってティアは戻ってこないってだったらどうすればいいのティアが死んだから争いが生まれた、ティアは私が守るってお母様に約束したのに、私のせいで・・・」
「争い?何故争いが生まれるのですか?」
ジェインは眼鏡の縁を上げながら言った。
「ティアは次期魔王だったのよ、だから殺された。次期魔王が死んだから次期魔王を決める争いが始まった」
「魔王を決める争い?次期魔王は2番目の子供に決まっていたはず」
アレンは呟く。
「そうよ、争いに勝ったのが2番目の子供ゼム、今までで最悪にして最凶の魔王よ。ゼム兄様は人間だけでなく自分に逆らう魔族達を嫌い、逆らう魔王族をも嫌いこの世界を自分の思いどうりにしようとしているわ」
アーシェは苦虫を噛みつぶした表情で続ける。
「ゼム兄様は容赦がない魔王になるために逆らう兄弟を躊躇無く殺した。今では12人いた兄弟は7人になった、最近ゼムのお気に入りの双子の弟たちが何者かに殺されたから今では5人しかいないわ」
「お気に入りが死んだ?」
リリーが訊ねた。
「噂じゃああなた達が殺したってきいたのだけど違った?」
アーシェは不思議そうに言った。
「僕たちは殺していません、魔族が殺していたのを見ましたが」
「魔族が?あり得ないわたかが魔族風情にあのくそガキどもがやられるはずが無いわ私でも殺せなかったのに・・・」
「そうですか、でも確かに僕たちは見たんです」
アレンは真剣な表情で言った。
「あなた達が殺していないことはよく分かったわでもゼム兄様はあなた達だと思っている、気をつけてね、あなた達をねらっているわ」