聖女と浮気した夫と離婚し損ねた話
「クラウディア、聖女ミレイユと結婚するから離婚してくれ」
夫のエドガルド王が王妃の私に言った。
横には異世界“日本”から転移してきた聖女がいた。
私は日本から転生してきたから知っているが、そいつは見た目ほどいい女じゃないぞ。
この世界では黒髪と黒い瞳が珍しく“守ってあげたい”みたいになるらしいが、異世界に来て速攻で最高権力者と体の関係を持つような女は守ってやる必要がない。
この世界の貴族令嬢として育ってしまった私は見習いたいくらい逞しい。
日本だったら聖女に慰謝料請求できるけど、この世界にはそんな制度はないんだった。
ただし、王に言われたからって、妻の同意が無ければ離婚できない決まりがある。
それなのに離婚できると私の返答を期待して待ってる王と聖女。
私は呆れて息をつく。
「離婚はしません。王妃の地位を降りるなんて嫌ですから。エドガルド、あなたが王を辞めるならいいけど」
エドガルドは青くなっている。
聖女のために王を降りる気は無いらしい。
「強欲ね」
聖女の小さな声が聞こえた。
じゃあ、お前は、王じゃなくなったエドガルドの面倒見るのかよ!
絶対に捨てるだろうに、どっちが強欲だっての。
「エドガルドよりもハイスペックな男を紹介してくれたら、離婚してもいいですわ」
「わ、わかった……」
唇を噛んで、震える声で夫が言った。
エドガルドは、よっぽど私と離婚したいらしい。
どんな男を連れてくるか、楽しみだわ。
◆◇◆
ハイスペック男が来た。
カイン・ヴォルグラム、隣国を救った英雄公爵だ。
一体どんな手を使って連れてきた!?
「クラウディア様、あなたに会えるのを楽しみにしていました」
カインを招いての夜会で、私をずっと見つめている。
これは全然、離婚してもいい!
離婚の決意を固めて起きた翌朝。
隣国の英雄公爵カインと聖女ミレイユが逃げた。
聖女は速攻でエドガルドよりもハイスペックな男に乗り換えてた。
エドガルドが私の足元に縋って朝から「捨てないで」と泣いてる。
王妃から公爵夫人になれると思ったのに……。
捨てたいのに、捨てられない。
タイミングを間違って、聖女に捨てられた夫が離してくれなくなった。
聖女ってとんでもない女でした。
◆◇◆
「クラウディア様が離婚されなくて良かった」
側近のユージーンが紅茶を置いてキスして言う。
宰相のヴィクトル・シュタインも、
「有能なクラウディアがこの国を支えているのです。エドガルド様より、あなたが大事だ」
と、私の頬にキスする。
ローレンス、アルベルト、ハロルド、セドリック、イザーク……。
見目麗しい男たちが次々に私を称賛して、キスをする。
エドガルドに離婚を切り出されてから、私もハメを外してみたら、いつの間にか逆ハーレムが出来てしまった。
だから、いくらハイスペックな男を紹介されても、離婚するのは惜しかったのよね。
夜中に部屋の窓が叩かれる。
聖女ミレイユと駆け落ちした、隣国の英雄公爵カイン・ヴォルグラムが立っていた。
「あなたのためにならない、あの国を荒らす無能聖女は遠くの森に捨ててきました」
「ええ!?」
とんでもない事をやる人だ。
「あなただけをずっと愛していました。私と結婚してください」
うーん……。
悩む。
……悩む。
私はたくさんの男に言い寄られて、迷っているうちに夫と離婚し損ねてしまった。
「クラウディア様、今夜は誰にしますか? 俺ですよね」
「待て! ユージーン、今日は私だ!」
「捨てないで〜」
逆ハーレムでカイン・ヴォルグラムがまだ返事を待ってる。




