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「どうやら私は、とんでもない思い違いをしていたのかもしれない」


 ハンネマン学園長が言う。その目は少し前の憐れむものではなく、とんでもない発見をしたような興奮に満ちていた。


「学園長、これは……?」


 半ば救いを求めるように訊くミリー。自慢の赤毛も、爆撃されたようにボサボサになっている。


「おそらく、この子の中にある魔力は出力されない代わりに、武器として使えるってことよ」

「武器……ですか?」

「そう。さっき私が言ったでしょう? この子は排出方法の見つからない油田みたいなものだって」

「ええ、まあ言いましたね」

「その代わりにこの子は、自分の中でエネルギーを爆発させて、その破壊力を外部に出力出来るってことよ」

「えええ?」


 学園長の言う通り、マリアには膨大な魔力がこもっていながら、それを出力する機能が無かった。だが、出て行く方向の無い魔力は四肢の滞留し、攻撃力として変換されるようになっていた。その結果が大岩を砕き、大地に巨大なわだちを作るほどのパンチ力となって出ていた。大聖女の秘蹟はたしかに起こっていた。


「ちょ……いやですわああああ! こんなの、おしとやかな大聖女になって周りからチヤホヤされて、後世の白魔導士たちが憧れるようなスキルなんかじゃないですのおおおお!」

「諦めなさい、それがあなたの資質なのだから」


 ハンネマン学園長にピシャリと言われて、マリアは黙るしかなくなる。


「とにかく奇蹟はしっかり起きていた。大事なことはそれだけじゃない」

「でも、でも……」

「さあ、みんなのところに戻るわよ。あなたは確かに神から力を授かり受けたのだから」


 もう面倒くさいのか、学園長はマリアの手を引いて戻ろうとする。と、その時――


「大変です、学園長!」


 息を切らせて、エテルナ・ルクス学園の修道女見習いが走って来た。


「あら、どうしたのエルミナ?」


 エルミナと呼ばれた修道女は、かめはめ波の撃ち合いでも起こったかのようなわだちに一瞬だけ驚いてから報告を始める。


「大聖堂に、モンスターが……!」

「何ですって?」


 エルミナのもたらした報告は最悪だった。つい先ほど聖痕の儀で黒歴史を刻んだルミニス大聖堂に巨獣ベヒーモスが押し寄せて暴れているという。すでに勇者たちも討伐に向かっているが、現状歯が立たないとのことだった。


「とにかく、大聖堂に行きましょう」


 学園長がマリアの手を引いていく。言ったところであの凶悪なモンスターをどう出来るわけでもないが、聖遺物の保管場所であるルミニス大聖堂を破壊させるわけにはいかない。


 マリアも騒いでいるヒマが無くなったせいか、いつの間にか涙も羞恥の感情も引っ込んでいた。


 黒歴史を刻んだとはいえ、あの場所は修道女たちにとって大切な場所だ。絶対に破壊させるわけにはいかない。


「どうしてこんなことが……」


 該当するものが多過ぎて、我ながらどれについて言っているのかも分からない。それでもマリアは、大切な場所と仲間を守るために走った。

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