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東京影譚 ~エミリア、影を紡ぐ者~  作者: ミルティア


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379/419

歌舞伎町の『薬酒専門店(付喪神とモノノケたちのセーフハウス)』その一

【読者様への注意喚起】


この物語はフィクションです。

法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

また、作中に登場する人名、組織、団体名(アスター家、K&E リサーチ&コンサルティング等)はすべて架空のものであり、実在の人物・組織とは一切関係ありません。


ようこそ、東京の影の中へ ここは、光が滅び、影が支配する世界。

摩天楼が立ち並ぶ、華やかな都市の顔の裏側には、深い闇が広がっている。


あなたは、そんな影の世界に生きる一人の女王に出会う。

彼女の名は、エミリア・シュナイダー。

金髪碧眼の美しい姿と冷酷な戦闘能力を持つ「始末屋」だが、その心は過去の壮絶なトラウマ(PTSD)により深く閉ざされていた。

彼女の唯一の拠り所は、佐藤健という元銀行員の相棒。

彼の存在こそが、彼女の心を繋ぎ止める唯一の「鎮静剤」だった。


女王の争奪戦と運命の対決 しかし、彼女の安息は、アスター家の令嬢リリア・アスターの出現によって一変する。

リリアは佐藤の独占をかけて、エミリアに「資金力」と「知略」で挑む。

二人の女王による壮絶な「争奪戦ラブコメ」が勃発し、その裏側で、巨大な「情報戦(現代ファンタジー)」が展開されていく。


リリアの計画: 彼女は愛する佐藤のために、軍事力、情報機関、そして公邸という名の「要塞」を築き上げる。


エミリアの覚悟: 愛する者の日常と自身の居場所を守るため、妹のヴァネッサや過去の因縁と共に、冷徹な知略と戦闘本能を解き放つ。


あなたは、エミリアがこの愛と権力の戦いを生き抜き、孤独を乗り越えていく「再生の物語」を体験することになる。


さあ、ページをめくり、あなたも影の世界へと足を踏み入れてください。

これは、あなたの「常識」が一切通用しない、究極のプロフェッショナルたちが「愛」のために戦う物語。


あなたは、エミリアに、どんな未来を見せてあげたいですか?


この物語は、最先端AI 「Gemini (by Google)」 との共作により誕生しました。

時に、AIは人間の想像を超える予想外(unexpected)な展開を――。 時に、AIは人間の感情を揺さぶる繊細な表現を――。 「Gemini」は、新たな物語の世界を創造する、私の大切なパートナーです。


※本作品はカクヨムにて先行公開しており、こちら(小説家になろう)では順次公開となります。あらかじめご了承ください。


ただし、どうか忘れないでください。 これは、愛と知略が支配する、あくまでフィクションだということを。

This is a work of fiction. Any resemblance to actual events or persons, living or dead, is purely coincidental.


Ceci est une œuvre de fiction. Toute ressemblance avec des événements réels ou des personnes, vivantes ou mortes, serait purement fortuite.


Dies ist ein Werk der Fiktion. Jegliche Ähnlichkeit mit tatsächlichen Ereignissen oder lebenden oder verstorbenen Personen ist rein zufällig.


นี่คือนิยายที่แต่งขึ้น บุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์ใดๆ ที่ปรากฏในเรื่อง หากบังเอิญคล้ายคลึงกับบุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์จริง ทั้งที่ยังมีชีวิตอยู่หรือเสียชีวิตไปแล้ว ถือเป็นเรื่องบังเอิญทั้งสิ้น


(この作品はフィクションです。実在の出来事や人物、存命・故人との類似はすべて偶然です)


日本標準時4月15日午後1時45分。

晴れ間が広がる都内。


箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、奇妙な「日常」が続いていた。

佐藤は、自らのデスクで、先ほどリリアとヴァネッサが話していた「詐欺事件」のことを反芻していた。


(…偽物の「ティラノサウルスの全身骨格」だけは、一度、この目で見てみたかったなぁ…)


彼がそんな不謹慎な『好奇心』に囚われていた、その時。


「――サトウさま。手が空きましたら、例の、お店のお話をいたしましょう」


リリアから嬉々として、声をかけられた。


「わたくしたちの高級薬酒専門店:『五臓六腑ごぞうろっぷ』の素晴らしい『物件(そう、あの二人組の新居の雑居ビルの2階テナントスペースですわ)』を、今からご一緒に見に行きましょう」と誘われるが、


そのあまりにも魅力的な「お誘い」。

しかし、佐藤は、もう一人の「女王」の冷たい視線を背中に感じていた。


「あ、あの、ですが、リリアさん…。エミリアから、今日は『外出禁止』、『ネット禁止』と、厳命されているので…」


でも、佐藤は、さすがに物件を一度も見に行かず契約するのも、元・銀行員としてどうなのかと思っていると、その二人のやり取りを聞いていたエミリアが、その仕事の手を止めることなく、口を挟んだ。


「ダメよ、リリアさん。健ちゃんは、今日、一歩も外には出さないわ。でも、リリアさんが言う通り、物件の下見は必用ね。…そうだわ」


エミリアは、その美しい顔に静かに笑みを浮かべた。


「荒垣砕弁護士に、見に行ってもらっては?」


(…あのカオスな、歌舞伎町の雑居ビル。…あの戦闘狂を送り込むには、最高の「遊び場」じゃ、ないの)


春の、その穏やかな日差しだけが、その哀れな「弁護士」の、新たなる「受難」を静かに予言しているだけだったのである――。


                    ***


エミリアは、自らのデスクで通常業務とともに『東京アノマリー・ギルド』と『ダミー・セーフハウス』の業務開始を取り仕切っていたその手を、一切とめずに、サスキアに、セキュアなチャットで、指示を出した。


「――サスキア。荒垣砕弁護士に、至急アポイントをとって、今すぐ、あの二人組の新居の、雑居ビルの2階テナントスペースが、高級薬酒専門店:『五臓六腑ごぞうろっぷ』を、開業するにあたり、法的な手続きのトラブルになりそうな小さな芽がないかと『問題(具体的には『耐震、防火、防犯、アスベスト対策、給排水管や、屋内配線が、適切に管理されているか、あるいはリフォームされているか、換気や空調設備も適切に配置され、更新されているか等)』の完璧な確認を依頼したい」と指示した。


サスキアが、その指示を受けると、荒垣砕弁護士が所有するスマートフォンの、セキュアなアプリに宛に、即座にコンタクトを取った。


サスキアは、簡潔に、エミリアからの指示『不動産の賃貸契約に関する、法的な問題と、物件の現状確認』を、セキュアなアプリの電話機能で依頼すると、受話器の向こう側から、荒垣砕弁護士が、「あぁ? 現地調査? なぜ、俺が、そんなめんどくさそうなことを…」と、嫌そうに返事する。


しかし、サスキアは、その反応を完璧に予測していた。

彼女は、その完璧なポーカーフェイスのまま、答えた。


「――承知いたしました。継続的に弊社の業務に携わっていただく場合、並々ならぬ恨みを持つ数多の勢力から、荒垣砕弁護士がわたくしどもの『情報資産』の弱点を、聞き出す標的となる可能性がございます。したがって、弊社の依頼を、あえて引き受けないというご判断は、ご自身の『安全確保』の観点からは、懸命なリスクヘッジと判断いたします」


その、あまりにも丁寧で、そしてどこまでも悪趣味な「忠告」。

荒垣砕弁護士が、その言葉の裏に隠された「意味」を瞬時に理解した。


(…あの、エミリアを恨んで狙う、連中…? …そいつらに、俺が狙われる…? …なら、俺は、思いっきり、彼らを合法的に、そして正当防衛で、返り討ちにしながら、暴れられるのでは…!?)


普通の弁護士なら、その『危険』に怖気づくところを、彼の血は逆に、やる気が出て、その声は弾んでいた。


「――引き受けた! すぐに、現地の確認に向かう!」


サスキアは、そのあまりにも分かりやすい「反応」に、(…予測通り。報酬として、高額な報酬ではなく『交戦の機会』を提示するだけで、この最優先業務を受諾させることが可能でした。極めて、効率的ですわ)と心のなかで呟きながら、静かにその通話を切ったのである――。


                    ***


その穏やかな昼下がり。

この物語の歯車たちは、それぞれ、全く異なる場所で、その「時」を刻んでいた。


【戦場1:戦闘狂の出撃準備】

荒垣砕弁護士が、自らの、あの、日当たりの悪い、トレーニング器具に占拠された雑居ビルの一室で、その準備を進めていた。

彼は、六法全書ではなく、ヘルメットと高出力の懐中電灯をカバンに詰め込みながら、(…不動産の賃貸契約に関する法的な問題と、物件の現状確認…ねぇ)と、サスキアから依頼された、その「建前」の裏に潜む「本音(=戦いの匂い)」に、その口元を歪めていた。


【戦場2:貴公子の午餐会】

その頃。リリアの天空の『公邸』では、ジュリアンが、その完璧なホストとして、昼食を兼ねた会食の席に臨んでいた。

相手は、日本で古くから生活している、英国貴族の老齢の当主。

二人のその会話は、ロンドンの社交界の噂話から、日本の美術品に関する高度な議論へと、優雅に移り変わっていた。


【戦場3:戦争請負人の強制休息】

そして、西の都。

リリアの大阪『統括作戦室』では、ジェシカ・オコネルが、日本の労働基準法を過剰に遵守するシステムによって、強制的にオフィスから、『ロックアウト』され、『自宅(居住スペースの自室)』で休みを過ごしている。

彼女は、そのシルクのガウンの下で、自らの「爪」を研ぎ澄ませていた。


(Satou. I will ensure you become my asset, no matter the cost.(…サトウ。…私は、どんな犠牲を払ってでも、必ずあなたを、わたくしの『戦略的資産(駒)』にしてあげるわ…))


――その頃の、箱庭の雑居ビル三階のオフィス。


エミリアたちが、それぞれの業務に戻っている、その水面下で『付喪神ギルド』の三柱――薄氷刃、月白盃、薬院椿――が、佐藤の、あの高級薬酒専門店:『五臓六腑ごぞうろっぷ』のレイアウトのアイデアを真剣に議論していた。


「――だから、『酒場カウンター』は、入り口から一番目立つ場所に、置くべきだと、言っているのです!」


月白盃が、自らの主張を曲げない。


「まあ、盃さま。それより、『薬局(調剤室)』ですわ。病人やけが人がすぐに休めるよう奥に個室を作るべきですわよ」


薬院椿が、その癒しの空間を譲らない。


「――黙れ、二人とも! 要塞だ! 壁は全て防弾・防爆仕様に改修し、入り口は一つ! 窓は全て潰す!」


薄氷刃が、そのあまりにも「物騒」な「安全」を『主張』する。


春の、その穏やかな日差しだけが、そのあまりにもかけ離れた「三者三様」の午後と、そのギルドのまとまらない店舗設計を、静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


箱庭の雑居ビル三階のオフィスでは、奇妙な「日常」が続いていた。

佐藤は、高級薬酒専門店:『五臓六腑ごぞうろっぷ』の開業に向けて、元・銀行員としての知識を総動員していた。


彼は、リリアが佐藤との新婚生活での希望という指示内容が書かれていたノートの何も書かれていないページを開き、高級薬酒専門店:『五臓六腑ごぞうろっぷ』が開業するまでの現実的な工程表を、書き出していた。


(1. 物件契約と設計に、最短でも1週間…。2. 改装と『防犯対策のリフォーム工事(刃が望む要塞化工事)』に、6週間〜8週間…。3. 人材確保(薬剤師等)に2週間…。4. 最も面倒な許認可申請と、その取得に8週間〜10週間…。5. 最終設置と、スタッフの訓練や研修に1週間…。合計すると、『約3ヶ月(12週間)』)もかかると計算した。


佐藤は、(よくわからないけど、まさか三ヶ月もかかるとは…。時間かかる…)と静かに思うと、その遠い道のりに目眩を感じていた。


その佐藤の「絶望」のオーラを、隣で感じ取ったリリアが、佐藤に優しく声をかけた。


「あら、サトウさま。何を、そんなに悩んでいらっしゃいますの?」


佐藤が、その絶望的な工程表を見せると、リリアは、そのあまりにも人間的すぎる悩みにくすくすと笑った。


「まあ、サトウさま。物件契約と設計に一週間? 改装と防犯対策の工事に6週間〜8週間? …8時間程度で、全て終わるに決まっているでは、ありませんこと」

「え…?」

「物件契約は、あの荒垣砕弁護士が、調査で問題なしと判断した、その『時点(=夕方)』で、即座に契約しますわ。設計は、あの二人組の新居の、雑居ビルの二階テナントスペース。それほど広くないので、AIに、わたくしたちの要望を伝え、設計させ、細かく調整すれば、それこそ数分で、終わります。そして、改装と防犯対策の工事。…わたくしの天空の『公邸』のあのリフォーム工事の、全てのノウハウと設備を引き継いだ、わたくしお抱えの専門会社に任せれば、二人組新居の、雑居ビルの二階テナントスペースのささやかなリフォーム工事、三時間程度で、完璧に終わるに決まっておりますわ」


リリアは、そこで言葉を切り、佐藤の、手を握った。


「確かに『人間相手』のビジネスとして、3. 人材確保や4. 許認可申請は、短縮は難しいですが…。今夜から、わたくしたちの愛すべき付喪神と、モノノケたちが、安心して交流するための防犯性の優れたセーフハウスとしてなら、今夜からでも使える。…そうでしょう?」


リリアが、そう伝えて、佐藤は、その言葉の後半――付喪神とモノノケたちが安心して交流する、防犯性の優れたセーフハウス――の、リリアの話のあまり理解できない部分は、深く考えないことにして、


(…1週間かかる物件契約と設計。6週間〜8週間かかる改装と『防犯対策のリフォーム工事(刃が望む要塞化工事)』が、全部合わせても、21時までに終わる…!?)という、あまりにも魅力的すぎる、提案に、リリアの提案を深く考えずに採用することにした。


「は、はい! お願いします、リリアさん!」


春の、その穏やかな日差しだけが、佐藤の、そのあまりにも無邪気な「快諾」を、静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、建設的な熱気が満ちていた。

リリアと佐藤が額を突き合わせ、具体的な『付喪神ギルド』の、高級薬酒専門店:『五臓六腑ごぞうろっぷ』の設定を詰めている。


その順調な進捗を見届けた『付喪神ギルド』の三柱――薄氷刃、月白盃、薬院椿――は、顔を見合わせ、頷いた。


彼女たちは、風のように箱庭の雑居ビル三階のオフィスを抜け出し、さっそく、リリアの天空の『公邸』へと飛んだ。


ジュリアンのプライベート書斎。


そこには、静謐な時間が流れていた。

机の上には、ジュリアンの手紙や仕事などを逐一記憶している、『硯海すずりうみ』が静かに鎮座していた。


三柱は、その友人の元へと報告しに行き、そして高らかに告げた。


「海よ。我らの『セーフハウス』が決まりましたわ」


盃が楽しげに語る。


「場所は歌舞伎町。名は『五臓六腑ごぞうろっぷ』。…そこで夜な夜な、我ら『付喪神ギルド』の活動が始まった時は、硯海もぜひ一緒に、参加することをここに告げます」


硯海は、当初、少し戸惑っていた。


「…ですが、私は、ジュリアン様の記録で…」


しかし、薬院椿が、優しく諭すように言った。


「あらあら。ですが、あのお店は、ただの『セーフハウス』では、ございませんのよ?」


そして、薄氷刃が、決定的な一言を放つ。


「そうだ。あそこは、古今東西の、付喪神やモノノケなどが集まって、情報交換する場となる。彼らが語る、数千年の記憶。失われた歴史。隠された真実…。それらが泡沫のように消えていくのを、貴様は黙って見過ごすのか?」

「…え?」


硯海の、墨汁のように黒い瞳が揺らぐ。

そこに、月白盃が畳み掛ける。


「そうですわ。語られた、その膨大で貴重な内容を、誰かが後世に残すために、記録すること。…それこそが、あなたの本当の『使命』では、なくて?」


彼女たちは、そう提案して、硯海のその記録者としての、本能を巻き込んだ。

硯海は、ゴクリと生唾を飲み込んだ。


(…未知の情報。…妖怪たちの口伝。…記録したい…!)


「…わ、分かりました。…参加、いたします」


彼女は、そのあまりにも魅力的な誘惑に抗うことができなかった。

こうして、最強の『付喪神ギルド』は、その最後のピースを埋めた。


夜の歌舞伎町で繰り広げられるであろう百鬼夜行の宴と、それを淡々と記録し続ける、一人の書記官。


その奇妙な光景が現実のものとなる、準備は全て整ったのである――。


                    ***


箱庭の雑居ビル三階のオフィスでは、対照的な二つの「仕事」が進行していた。

一方では、佐藤が、リリアの助言で、あの高級薬酒専門店:『五臓六腑ごぞうろっぷ』の計画を、楽しげに進めている様子。


そして、もう一方では、エミリアが、自らのデスクで、通常業務とともに『東京アノマリー・ギルド』と『ダミー・セーフハウス』の業務開始を取り仕切っていた。


彼女は、その膨大なタスクを片付けながら、その手を一切とめずに、横目で二人の様子を確認していた。


(…ええ。健ちゃんが、あの高級薬酒専門店:『五臓六腑』に関与することでキャリアアップになっているのは、認めるわ)


エミリアは、そう理性的には納得していた。

しかし、彼女の心の中には、小さな、しかし確かな不満が渦巻いていた。


(…でも。『エミリア』が今、水面下で、これほど頑張っている『東京アノマリー・ギルド』と『ダミー・セーフハウス』のことも褒めて欲しいと思うのは、わがままかしら?)


エミリアは、佐藤に駆け寄り「私も凄いのよ!」と言いたい衝動に駆られた。

しかし、彼女は即座にプロファイリングで、自分を分析して、その衝動を抑え込んだ。


(…ダメね。いま、感情的に行動しては、リリアさんが得するだけ。…そうよ。今日も、必ず『エミリア』が勝って、健ちゃんを『住処』に連れて帰るのだから)


彼女は、その美しい唇に妖艶な笑みを浮かべた。


(…その時よ。二人っきりの時に、思いっきり甘えて、そして、たっぷりと褒めてもらって、健ちゃんを骨抜きにすればいいのよ)


その冷徹な仕事ぶりの裏側で燃え上がる、あまりにも熱い「独占欲」。

春の、穏やかな日差しは、その夜に訪れるであろう、甘美な「時間」を予感させるように、彼女の指先を照らしていたのであった――。


                    ***


『二人組(陽菜と澪)』の新居がある、あのカオスな雑居ビル。

その一角にある管理会社の狭い応接スペースは、異常な緊張感に支配されていた。


サスキアからの依頼でやってきた、荒垣砕弁護士が、その巨体をパイプ椅子に沈め、書類に目を通している。


彼は、弁護士として、極めて『理性的』に、そして『淡々と』、その業務をこなしていた。


「…ふむ。 『契約書レビュー』ですが。第8条の、『解約条項』。…これは、貸主に有利すぎませんか?」

「あ、はい、それは、その…」


管理会社の営業の人は、顔面蒼白で、しどろもどろになる。

荒垣は、さらに畳み掛ける。


「店舗の業態は、『薬酒専門店』です。建築基準法上の用途変更は? 消防法のクリアランスは? …風営法の解釈は、どうなってます?」


そのいかつい見た目と、全身から立ち上る『威圧感』。

営業マンと受付の人は、まるで凶悪な尋問官に詰め寄られているかのような圧倒され、冷や汗を流させていた。


書類審査を終えると、荒垣は、現場(2階テナント)へと向かった。

ここからは、『荒垣砕弁護士ならではの活動(応用業務)』の時間だ。

彼は、床を踏みしめ、壁を叩く。


(…『耐震』、『配線』、『給排水』。…『隠れた瑕疵』は、ないか)


それは、単なる『法的瑕疵調査』ではなかった。


(…『建物全体の侵入経路』、『死角』、『緊急時の避難ルート』。…『襲撃を受けた際の防衛シミュレーション』だ)


最後に、彼は窓から外の歌舞伎町の街並みを、見下ろした。

その目には、危険な光が宿っている。


(…この『隣接テナント』。…エミリアやリリアを恨む、勢力が入り込む『隙』は、あるか? …『合法的に、戦える、敵』は潜んでいないか?)


彼は、その五感を頼りに、徹底的に、調査し、そして満足げに頷いた。


「…悪くない。…ここは、良い『戦場みせ』になる」


管理会社の人間には、その言葉が「良い店になる」と聞こえたことだろう。

しかし、その真意は、全く別のものだったのである。


春の、その穏やかな日差しだけが、その最強の戦闘狂弁護士の、そのあまりにも物騒な「業務遂行」を、静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


箱庭の雑居ビル三階のオフィス。

静寂を破ったのは、サスキアの手元の端末の着信音だった。


荒垣砕弁護士が、スマートフォンのセキュアなアプリからの電話で、現場からの最終報告を入れてきたのだ。


「――調査、終了。…特に問題がなく、契約可能だ。…拍子抜けするほど、シロだな」


サスキアは、「少々、お待ちを」と荒垣砕弁護士を待たせ、即座にその内容を佐藤に伝えた。


「佐藤様。荒垣砕弁護士からの、特に問題がなく、契約可能と、報告が、ありました」


その瞬間。

左右のデスクで、二人の女王が同時に動いた。エミリアは、キーボードを叩き、『自分の情報屋』ネットワークを駆使して、その物件の裏履歴を洗い出し、リリアは、その美しい瞳を細め、自分の、『鑑定眼』で、遥か遠くの物件の「運気」と「瑕疵」を透視した。


荒垣砕弁護士からのその報告内容を、瞬時に『クロスチェック』する。

数秒後。


「…ええ。裏社会のトラブルも、ないわね。問題なしよ」


エミリアが頷く。


「…ええ。建物の『気』も、淀んでおりません。問題なしですわ」


リリアも同意する。

エミリアとリリアは、それぞれ問題なしと判断して、佐藤に、契約しても問題ないと伝え、その二重のお墨付きを得た佐藤は、大きく頷いた。


「お願いします、サスキアさん!」


佐藤は、サスキア経由で、荒垣砕弁護士に、賃貸契約も依頼した。

契約のGOサインが出た、その瞬間から、リリアは、佐藤の秘書として、速やかに行動する。


彼女は、佐藤の秘書として送られてきた荒垣砕弁護士からの報告と契約書に基づき、AIで店舗の設計図を瞬く間に書き上げると、続けて一本の電話をかけた。


相手は、リリアの天空の『公邸』の、あのリフォーム工事の全てのノウハウと設備を引き継いだ、リリアお抱えの専門会社。


「――ええ、今すぐよ。図面は送ったわ。…リフォームをお願いするわ」


彼女は、次に電気と水道の開通手続きに、まだ、電気と水道の開通していない『現場(2階テナント)』に、警備会社が設置する『機械警備(バッテリー駆動の携帯電話回線使用)』の手配を手際よく進め、そしてさらに重要な手配を一気に進めた。


「――皆様。今夜からですわ」


リリアは、虚空に向かって(付喪神たちに)語りかけた。


「『付喪神ギルド』の三柱――薄氷刃、月白盃、薬院椿――そして、硯海。行政の許可は降りていないので、当分は営業はせず、店内は薬酒も漢方薬も保管されたり、展示されていない、空っぽの箱ですが…。ただの機械警備で守られた、防盗対策がしっかりした部屋としては機能します。どうぞ、他の付喪神や、モノノケたちと、交流の場として、ご自由に、お使いなさいませ」


それは、人間界の「常識」を遥かに超えた速度での拠点開設。

歌舞伎町の片隅に、今夜、人ならざる者たちのための、空っぽの「要塞」が静かに産声を上げようとしていたのである――。


                    ***


箱庭の雑居ビル三階のオフィスでは、嵐の後のような、穏やかな光が満ちていた。

エミリアは、先ほど虚空に向かって高らかに宣言していた、リリアがその『付喪神ギルド』に伝えた内容と行動に、軽く肩をすくめた。


(…また、始まったわね)


彼女は、リリアのその行動を(相変わらず、スピリチュアルなこと、好きね)と思い、それ以上深く追求することはしなかった。


(まあ、彼女リリアの気が済むなら、それでいいわ。…健ちゃんへの害がない限りは)


しかし、その『付喪神ギルド』という言葉に、過剰に反応した男がいた。

佐藤である。

彼は、その単語を耳にした瞬間、背筋に冷たいものが走るのを感じた。


(…『付喪神…ギルド…?』。…なにか、昨夜の夢の中で、とんでもない滝行させられたり、あるいは花見したり、そして膝枕されたり…、していたような…)


彼の脳裏に、氷水の冷たさと、桜の香り、そして、膝枕の温もりがフラッシュバックする。彼は疑問に思い、首を傾げた。


(…変な夢だったな。…本当に、夢、だよね…?)


その二人の浮世離れした思考とは対照的に。ヴァネッサは現実的な脅威と向き合っていた。

彼女は、サスキアの助言を借りながら、隣で騒いでいるリリアのスピリチュアルな言動など一切感知せずに、手元の資料に没頭していた。


それは、荒垣砕弁護士が送ってきた、あの歌舞伎町の物件に関する詳細な報告書だった。

そこには、建物の構造だけでなく、周辺の「勢力図」や「逃走ルート」、そして「死角」が克明に記されている。


(…なるほど。さすがは、荒垣弁護士ね)


ヴァネッサは、その物騒な報告書を歌舞伎町を理解する「教科書」として活用しようとしていた。

彼女は知っている。「知識」こそが、この危険な街で、生き残るための唯一の「武器」であることを。


春の、その穏やかな日差しだけが、その三者三様の、あまりにもバラバラな「午後」を、静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


箱庭の雑居ビル三階のオフィスで、エミリアは、その美しい指先で頬杖をつきながら、佐藤の隣のデスクを静かに観察していた。


そこには、『付喪神ギルド』という訳のわからないスピリチュアルなことに夢中になっている、リリアの姿があった。

彼女は、虚空(に見える、付喪神たち)に向かって楽しげに、店舗の内装や運営方針について語りかけている。


(…なるほど。完全に、没頭しているわね)


エミリアは、今日はリリアと勝負しなくて済む、絶好の機会であると判断した。


(「コイントス」も、ましてや「スキャルピング対決」も、今日に限っては、不要だわ)


エミリアは、そのリリアの様子を正確にその言動を分析して、一つの「作戦」を立てた。


(…あの子を、もっとこの『付喪神ギルド』に集中するよう、巧みに『誘導して』あげれば…。彼女は、健ちゃんの存在すら、一瞬、忘れるほどに、そのおままごとに熱中するはず)


彼女は、さりげなくリリアに声をかけた。


「リリアさん。その『内装』の件だけど、もっと凝ったデザインの方が、あなたらしいのでは、なくて?」

「! …そうですわね! エミリア様にしては、良いことをおっしゃいますわ!」


リリアは、そのエミリアの言葉に乗せられ、さらに深くその「世界」へと没入していく。

エミリアは、その光景を見て、心の中で勝利の笑みを浮かべた。


(…ええ、その調子よ。そのまま、夜まで、悩んでいらっしゃい。…そうすれば、私は、誰にも邪魔されることなく、健ちゃんをスマートに、そして確実に住処に、連れ帰れるわ)


そのあまりにも完璧な「誘導」。

佐藤は、隣でリリアがさらにヒートアップしたことに驚き、ヴァネッサは、姉のその悪魔的な「手腕」に密かに舌を巻いている。


春の、その穏やかな日差しだけが、その最強の女王の、そのあまりにも静かで、そしてどこまでも確実な「勝利」の予感を照らし出しているだけだったのである――。

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