偽物の『恐竜』と詐欺師の手口 その三
【読者様への注意喚起】
この物語はフィクションです。
法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
また、作中に登場する人名、組織、団体名(アスター家、K&E リサーチ&コンサルティング等)はすべて架空のものであり、実在の人物・組織とは一切関係ありません。
ようこそ、東京の影の中へ ここは、光が滅び、影が支配する世界。
摩天楼が立ち並ぶ、華やかな都市の顔の裏側には、深い闇が広がっている。
あなたは、そんな影の世界に生きる一人の女王に出会う。
彼女の名は、エミリア・シュナイダー。
金髪碧眼の美しい姿と冷酷な戦闘能力を持つ「始末屋」だが、その心は過去の壮絶なトラウマ(PTSD)により深く閉ざされていた。
彼女の唯一の拠り所は、佐藤健という元銀行員の相棒。
彼の存在こそが、彼女の心を繋ぎ止める唯一の「鎮静剤」だった。
女王の争奪戦と運命の対決 しかし、彼女の安息は、アスター家の令嬢リリア・アスターの出現によって一変する。
リリアは佐藤の独占をかけて、エミリアに「資金力」と「知略」で挑む。
二人の女王による壮絶な「争奪戦」が勃発し、その裏側で、巨大な「情報戦(現代ファンタジー)」が展開されていく。
リリアの計画: 彼女は愛する佐藤のために、軍事力、情報機関、そして公邸という名の「要塞」を築き上げる。
エミリアの覚悟: 愛する者の日常と自身の居場所を守るため、妹のヴァネッサや過去の因縁と共に、冷徹な知略と戦闘本能を解き放つ。
あなたは、エミリアがこの愛と権力の戦いを生き抜き、孤独を乗り越えていく「再生の物語」を体験することになる。
さあ、ページをめくり、あなたも影の世界へと足を踏み入れてください。
これは、あなたの「常識」が一切通用しない、究極のプロフェッショナルたちが「愛」のために戦う物語。
あなたは、エミリアに、どんな未来を見せてあげたいですか?
この物語は、最先端AI 「Gemini (by Google)」 との共作により誕生しました。
時に、AIは人間の想像を超える予想外(unexpected)な展開を――。 時に、AIは人間の感情を揺さぶる繊細な表現を――。 「Gemini」は、新たな物語の世界を創造する、私の大切なパートナーです。
※本作品はカクヨムにて先行公開しており、こちら(小説家になろう)では順次公開となります。あらかじめご了承ください。
ただし、どうか忘れないでください。 これは、愛と知略が支配する、あくまでフィクションだということを。
This is a work of fiction. Any resemblance to actual events or persons, living or dead, is purely coincidental.
Ceci est une œuvre de fiction. Toute ressemblance avec des événements réels ou des personnes, vivantes ou mortes, serait purement fortuite.
Dies ist ein Werk der Fiktion. Jegliche Ähnlichkeit mit tatsächlichen Ereignissen oder lebenden oder verstorbenen Personen ist rein zufällig.
นี่คือนิยายที่แต่งขึ้น บุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์ใดๆ ที่ปรากฏในเรื่อง หากบังเอิญคล้ายคลึงกับบุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์จริง ทั้งที่ยังมีชีวิตอยู่หรือเสียชีวิตไปแล้ว ถือเป็นเรื่องบังเอิญทั้งสิ้น
(この作品はフィクションです。実在の出来事や人物、存命・故人との類似はすべて偶然です)
日本標準時4月15日午前11時40分。
晴れ間が広がる都内。
箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、先ほどまでの重苦しい緊張感が嘘のように消え去っていた。
リリアは、自らのデスクで、『付喪神ギルド』の三柱――薄氷刃、月白盃、薬院椿――の、『活躍(もちろん、リリア以外には、見えていない)』で、愛する佐藤の危機が、(ひとまずは)解決したことに、心の底から安堵していた。
そのリリアの、あまりにも急な「表情」の変化。
エミリア、ヴァネッサ、サスキアは、なぜリリアが問題ないと判断したのか、その根拠は全く理解できなかったが、リリアのあの、『説明(=鑑定眼)』を追求しても、自分たちには到底理解できないだろうと考え、不問にして、それぞれの仕事へと戻っていった。
しかし、エミリアは、一つだけ忘れてはいなかった。
彼女は、その視線を、応接室に積まれた『現金(戦車一両分)』へと向けた。
「――リリアさん。健ちゃんを護るために必用だと、あなたが言い張った『現金(戦車一両分)』。それが必要なくなったのなら、さっさと元の銀行口座に入金しなさい。私のオフィスに置いておいて紛失しても、私は一切責任、取らないわよ」
そのあまりにも正論な注意。
しかし、リリアは、その言葉を待っていました、とばかりに、その美しい顔に完璧な笑みを浮かべた。
「あら、エミリア様。何を、おっしゃいますの? このお金は、サトウさまのお小遣いに使いますから、もちろんこのままに、置いておきますわ」
リリアは、そうエミリアに告げて、そのあまりにも常識からかけ離れた「お小遣い」の概念に、佐藤は、エミリアとリリアの次元の違う間で、自らの金銭感覚が崩壊していくのを感じながら、ただ頭を抱えた。
(…お小遣いって…。…あの金額が…?)
春の、その穏やかな日差しだけが、その哀れな佐藤の、そのあまりにも重すぎる「期待(と、現金)」に、静かに降り注いでいるだけだったのである――。
***
佐藤は、そのあまりにも非現実的なリリアからの提案――『現金(戦車一両分)』を自らの小遣いにする――という提案を、いかに穏便に回避するかを必死に考えた。
彼の頭脳が猛スピードで選択肢をシミュレートする。
(…ただ、ここで断れば、リリアさんは絶対にすねそうだし…。かといって、受け取れば、今度はエミリアから後で叱責されそうだし…。受け取って、それをそのままサスキアさんに預けるのは、なんだか違うだろうし…。じゃあ、ヴァネッサさんが支援する団体に寄付するのは? …それはそれで一つの正解かもしれないけど、今度はヴァネッサさんから妙に期待されて、結局リリアさんからさらにより強く、経済的に支配されそうな、漠然とした恐怖を感じる…)
佐藤は、そのどれを選んでも、自分の人生がさらに大変そうになりそうな気がするので、何かこの他の方法がないかと必死に考えていると、ふと、彼の視線がリリアのデスクの上へと注がれた。
そこには、机に置かれている、月白盃の「杯」と、薬院椿の薬箱に気がついて、その瞬間。
彼の脳内に一つの「閃き」があった。
(…そうだ! リリアさんは、こういう骨董品が好きそうだから…! あの応接室に置かれている、リリアさんの「現金(戦車一両分)」は、お小遣いではなく、『リリアさんが、これから、骨董品を買うための原資にするのは、いかがですか?』 と提案すれば、リリアさんの趣味を肯定しつつ、お小遣いは回避できる…! 今回のこの危機を、完璧に逃れられるのでは?)
佐藤は、そのあまりにも完璧な自分の機転に心の底から感心した。
春の、その穏やかな日差しだけが、その哀れな佐藤の、そのあまりにもささやかで、そしてどこまでも切実な「勝利」を静かに照らし出しているだけだったのである――。
***
佐藤は、そのあまりにも重すぎる「お小遣い」の圧から逃れるため、必死に絞り出した答えを、リリアに恐る恐る提案した。
「あ、あの、リリアさん! その、応接室に置かれている、莫大な『現金(戦車一両分)』ですが、お小遣いではなく、リリアさんのご趣味である骨董品を買うための原資にするというのは、いかがでしょうか!」
リリアは、その佐藤の提案を、一瞬で分析して、その真意(=お小遣い、拒否)を見抜きながらも、あえてその提案に乗ってみせた。
(…ふふっ。サトウさま。わたくしからの愛を、受け取るのが、まだ、恥ずかしいのですわね。…ですが、その「提案」、サトウさまの小遣いとして一気に与えるより、わたくしが、この、『現金(戦車一両分)』を運用して、その運用益で、サトウさまが自ら探し出した、骨董品を買うという形にした方が、サトウさまを、わたくしの影響下に、より長期間、置けますわね)と、瞬時に判断して、彼女は、その美しい顔に完璧な笑みを浮かべた。
リリアは「サトウさま。なんと、無欲な、提案なのでしょう!」と、心底感動した「フリ」をしながら、続けた。
「それでは、その、応接室においてある『現金(戦車一両分)』は、責任を持って、わたくしが完璧に運用しますから、サトウさまは、そのわたくしが運用した運用益で、購入するための、素晴らしい骨董品を、これから、選んでくださいまし。あ、でも、変な偽物や、呪われた縁起が悪いものを選んでも、わたくしが見極めますので、何の問題もありませんわ」
その答えに、佐藤は、(…よ、良かった…! なんとか、今回の危機を乗り切った…!)と、心の底から考え、安堵の息を漏らした。
その一部始終を、通常業務とともに『東京アノマリー・ギルド』と『ダミー・セーフハウス』の業務開始を取り仕切っていた手を、一切止めることなく、眺めていたエミリアは、(…まあ、それなら、健ちゃんの金銭感覚が崩壊するよりは問題ないか)と考え、サスキアも何事もなかったかのように通常業務を続け、そしてヴァネッサも、『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』の広告がいつから掲載されていたのか、落ち着いて調査できると、再び新聞縮小版を読むのを再開した。
春の、その穏やかな日差しだけが、そのあまりにも奇妙な「交渉」が成立した、オフィスを、静かに照らし出しているだけだったのである――。
***
しかし、さっそく、リリアがその新たなる「契約」を実行に移そうと、佐藤に声をかけた。
「では、サトウさま。善は急げ、ですわ。応接室に置いてある『現金(戦車一両分)』を、わたくしの骨董品を買う原資として運用しますので、今すぐ口座に入金するため一緒に、銀行に行きましょう」
リリアは、そう提案して、佐藤の手を取ろうとした。
「――待ちなさい」
エミリアが、通常業務とともに『東京アノマリー・ギルド』と『ダミー・セーフハウス』の業務開始を取り仕切っていた手を一切止めることなく、冷たく言い放った。
「リリアさんの、『鑑定眼』で健ちゃんに危険はなくなったと判断しても、今日一日、健ちゃんは『外出禁止』、『ネット禁止』は続けるの。万が一、リリアさんの判断が間違えていて、健ちゃんになにかあったら困るもの」
「なっ…!」
「応接室に置かれている『現金(戦車一両分)』は、あなたの私物でしょう。リリアさんが、自分でなんとかしなさい」
エミリアがそう指示し、リリアは、そのあまりにも正論な「命令」にエミリアにぶーぶー言うが、(…ここでエミリア様と口喧嘩をしている時間こそ、無駄ですわね)
彼女は、佐藤と一緒にいるオフィスでの時間を優先して、即座に、チーム『アステール』に連絡して、あの都市部・要人警護用の黒塗りのドイツ製の高性能ステーションワゴンを、箱庭の雑居ビルに寄越すよう命じた。
そして、彼女は応接室の現金の山を一瞥し、そしてオフィスに残る、二人の「才媛」へと向き直った。
「――エミリア様、ヴァネッサ様。仕事を中断させて、申し訳ありませんが、この『現金(戦車一両分)』を、車に積むのを手伝って、いただけますこと?」
「「は…?」」
エミリアとヴァネッサは、そのリリアのあまりにもふてぶてしいお願いに、一瞬固まったが、リリアは「あら、わたくし、非力な乙女ですもの」と、さっさと出かける気満々だった。
エミリアとヴァネッサは、これ以上無駄に話し合うのではなく、この件を終わらせるため無言のまま立ち上がると、その恐ろしく重い「現金」のケースを運び始めた。
こうして、佐藤とサスキアだけが残された、箱庭の雑居ビル、三階のオフィスは、束の間の、平和を享受していた。
***
箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、このオフィスでも例がないシュールな肉体労働が繰り広げられていた。
エミリアが、応接室の、『現金(戦車一両分)』のケースを一つ軽々と持ち上げながら、リリアを睨みつけた。
「――リリアさん。あなたの『お小遣い』でしょう? 私と、ヴァネッサに頼むだけでなく、リリアさんも協力して、さっさと運ぶわよ」
「なっ…! なぜ、わたくしが、このような重労働を…!」
リリアは、ぶーぶー言いながらも、そのあまりにも重いケースを、エミリアとヴァネッサと三人で協力して、昇降設備を使い、地下駐車場で待機しているチーム『アステール』の、黒塗りのドイツ製の高性能ステーションワゴンに積み込んでいく。
そのあまりにも現実離れした様子を、佐藤は自分の席に座ったまま、ただ見守り、(…あ、あの、手伝うべきかどうか…)と悩んでいると、その視線に気づいたサスキアから、完璧なタイミングで指示が飛んだ。
「佐藤様。エミリア様より、ご指示が出ております。安全プロトコルのため、当オフィス内におかれましては、エミリア様の正式な許可があるまで、ご自身の席にてご待機願います。」
「…あ、はい」
佐藤は、そのあまりにも的確な「命令」に逆らうこともできず、大人しく待つことにした。
そのオフィスで繰り広げられる一連の「茶番」を見ていた「付喪神ギルド」の三柱――薄氷刃、月白盃、薬院椿――は、その視線を、唯一、冷静に仕事を続ける「人間」へと向けた。
(…あの女性は、一体、何を、している…?)
三柱は、サスキアがどんな仕事をしているのか、そのデスクを覗き込むと、サスキアが、自分のデスクで他人からは覗き見されないように完璧に処置された、ノートパソコンの画面に、ヴァネッサのための、都内での『セーフハウスの候補』のリストを洗い出している、その情報を読み取った。
その「セーフハウス」というキーワード。
『付喪神ギルド』の三柱――薄氷刃、月白盃、薬院椿――は、その霊的な次元で顔を見合わせた。
「…佐藤様も、お喜びでしたわよね」
盃が、先ほどの佐藤の「機転」――佐藤がリリアに提案した、あの『現金(戦車一両分)』を利用した骨董品を買うための原資――の話を持ち出す。
「ええ。…リリア様の趣味である、骨董品。…つまり、自分たちのような、付喪神を集めようと、している…」
椿が、その「解釈」を広げる。
「――ならば!」
刃が、その結論を導き出した。
「その運用益で、我ら付喪神などが、自由に集まって、情報交換できたり、あるいは何か、重大なトラブルに巻き込まれた時の、完璧な避難所に使える、セーフハウスのようなものを、我々も持つべきなのでは?」
『付喪神ギルド』の三柱――薄氷刃、月白盃、薬院椿――は、今まで考えたこともなかった、最新の安全保障のノウハウを活用した生存戦略を学びながら一つの結論を導き出そうとしていた。
箱庭の雑居ビル、三階のオフィスの窓から差し込む、春のその穏やかな日差しだけが、そのあまりにもかけ離れた「二つの組織」の、その静かなる「暗躍」を照らし出しているだけだったのである――。
***
箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、リリア、エミリア、ヴァネッサという三人の「嵐」が去り、嘘のような静寂が訪れていた。
サスキアは淡々と自らの業務をこなし、佐藤はリリアがノートに書き込んだ内容に頭を抱えていた。
――しかし、その平和な水面下。
人間には感知できない、霊的な次元で、『付喪神ギルド』の三柱――薄氷刃、月白盃、薬院椿――が、それぞれのセーフハウスの候補を提案しあった。
「――では、まず、わたくしから」
月白盃が、その扇子を広げ、楽しそうに提案した。
「情報交換が円滑に出来るように、そして、みんなが集まって楽しく話せる、どこかの、『居酒屋』の一角などは、いかがかしら?」
「まあ、盃さま。不謹慎ですわ」
薬院椿が、その提案を優しく諌める。
「わたくしは、多くの病人や、けが人を治せる手伝いができるよう、救急医療が盛んな、総合病院のすぐ近くの、薬局の二階などがよろしいかと存じます」
その二人の提案を聞いていた薄氷刃が、その眉を吊り上げた。
「――黙れ、二人とも!」
彼女は、月白盃、そして薬院椿の提案はあまりにも不純だと一蹴した。
「月白盃は、ただ、自分が酒を飲んで騒ぎたい場を、作りたいだけ! 薬院椿は、勝手に病人やけが人をたくさん治して、自己満足したいだけ! 我ら『付喪神ギルド』の『セーフハウス』とは、そういうものではない!」
薄氷刃は、その二柱を鋭く睨みつけた。
「ここは、何よりも安全が第一! 籠城できる城のような、頑丈な施設こそを探すのだ!」
『付喪神ギルド』の三柱――薄氷刃、月白盃、薬院椿――は、そのそれぞれの理念をぶつけ合った。
そのあまりにも人間臭く、そして、どこまでもまとまらない「議論」。
春の、その穏やかな日差しだけが、その三柱の付喪神たちの、そのあまりにも熱い「戦い」を静かに見守っているだけだったのである――。
***
箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、『付喪神ギルド』の三柱――薄氷刃、月白盃、薬院椿――が、セーフハウスの件で、侃々諤々の議論をしている。
「だから、我らのための新しい『城』が必用なのだと、言っている!」
「まあ、刃。そんな息の詰まる場所より、美味しいお酒が飲める『酒場』が一番ですわよ」
「あらあら、お二人とも。まずは、皆様の『健康』が第一ですわ…」
彼女たちの、そのあまりにもまとまらない「会議」は、まだ終わりそうになかった。
――そして、その頃。
とある私鉄の駅近くの雑踏。
『オフィス真壁・代沢事務所』の、真壁梓と支倉詩乃。
そして、松田たち『特別捜査班』の、若林と相沢。
その四人が、互いにその干渉することなく、しかし、互いの存在を完璧に意識しながら、あのコインロッカーの鍵が放り込まれた、植え込みを完璧に確認できる、歩道で息を殺していた。
彼らは、それぞれ、スマホをいじる通行人を装い、その運命の「瞬間」に備えて、張り込みを続けていた。
そこに、ようやく松田が、徒歩で、若林と相沢に合流した。
「…状況は?」
「しっ…! 松田さん、声が大きいです。…あそこです」
相沢が、その視線だけで、『オフィス真壁・代沢事務所』の真壁梓と支倉詩乃を示す。
松田は、その視線の先で、『オフィス真壁・代沢事務所』の真壁梓と支倉詩乃の姿を確認して、静かに舌打ちした。
「…若林、相沢。あの女性(真壁梓)を、知ってるか。元は、俺たちと、同じ釜の飯を食った元・優秀な刑事で、今は探偵をしている」
松田が、完結に若林と相沢に伝えると、二人は、その梓のただならぬ雰囲気に息を呑んだ。
松田たち『特別捜査班』の松田と、若林と相沢は、もはや、あの「植え込み」よりも、厄介な「獲物」に意識を集中させていた。
(…あの真壁梓が、一体何を張り込んでいるのか。…彼女が動く、ということは、その先に「金」か、あるいは、もっとデカい「獲物」がいる、ということだ…)
三人は、その「獲物」を横取りするため、続けて、彼女たち自身の監視のため、張り込みを続けたのである。
春の、その穏やかな日差しだけが、その三者三様の「狩人」たちの、そのあまりにも危険で、そして、どこまでも混沌とした「追跡劇」の始まりを、静かに照らし出しているだけだったのである――。
***
とある、私鉄の駅近くの、雑踏。
『オフィス真壁・代沢事務所』の、真壁梓と支倉詩乃。
そして、松田たち『特別捜査班』の、松田と若林と相沢。
その二組の「狩人」たちは、互いにその存在を干渉することなく、しかし、互いの存在を完璧に意識しながら、あのコインロッカーの鍵が放り込まれた、植え込みを完璧に確認できる歩道で息を殺していた。
彼らは、それぞれ、通行人を装い、その運命の「瞬間」に備えて、張り込みを続けていた。
そこに、彼らのその緊張感をぶち壊すかのように、NPOの腕章を身に着けた、元気な高齢者の集団が、楽しげに現れ、その植え込みの前で立ち止まった。
リーダーらしき人が、手にした『透明な袋』と『青いプラスチック製の箱』を、高々と掲げ、説明を始めた。
「はい、皆さん、ご苦労様です! ここのゴミの回収は、今回、今日から活動を開始した『東京アノマリー・ギルド』様からの、記念すべき初依頼で行います!『東京アノマリー・ギルド』様の顧問弁護士の彩瀬ことね先生が、オンラインで説明していたように、ゴミはこの『透明な袋に』! リサイクルに回すものは、あの『赤いプラスチック製の箱』に入れてください!そして落とし物は、こちらの、『青いプラスチック製』の箱に入れてください!あとで、この落とし物は、まとめて、近くの交番に届けますので!」
その説明を終えると、NPOの腕章を身に着けた高齢者の集団が、『オフィス真壁・代沢事務所』の、真壁梓と支倉詩乃。
そして、松田たち『特別捜査班』の、松田と若林と相沢が必死に監視している、まさにその植え込みのゴミを、楽しげな世間話と共に回収し始めた。
そして、一人の女性が投げ込まれていた、『コインロッカーの鍵』を、見事に火バサミで回収してしまった。
「あら、鍵だわ」
「ああ、それは落とし物として届ける、『青いプラスチック製の箱』に入れておいてください!」
カラン、と乾いた音を立てて、鍵は「落とし物」となった。
『オフィス真壁・代沢事務所』の、真壁梓と支倉詩乃。
そして、松田たち『特別捜査班』の、松田と若林と相沢は、ただ、そのあまりにも平和的で、そして、どこまでも合法的な「証拠隠滅」の様子を、指一本動かせないまま見つめるしかなかった。
(…終わった…)
(…終わったな…)
二組の「狩人」たちの、その心が一つになった、瞬間だった。
春の、その穏やかな日差しだけが、そのあまりにも不毛で、そしてどこまでも滑稽な「結末」を、静かに照らし出しているだけだったのである――。
***
NPOの腕章を身に着けた、元気な高齢者の集団が、「いやあ、綺麗に、なったねえ」などと言いながら、次々にゴミを回収していく。
『オフィス真壁・代沢事務所』の、真壁梓と支倉詩乃は、そのあまりにも平和的な光景を見届けると、静かに顔を見合わせた。
「…詩乃。これ以上ここにいても、意味がないわ。有料駐車場にとめてある『白鼻芯』に戻るわよ」と決め、静かに歩き出す。
その動きを見逃さなかった、松田たち『特別捜査班』の松田と、若林と相沢は、「追うぞ!」と、『オフィス真壁・代沢事務所』の二人を尾行することにして、同じく歩き出そうとしたが、その瞬間。
松田のズボンのポケットで私物のスマートフォンが激しく着信し、松田が、「クソッ!」と心のなかで毒づいた。
(この大事な、時に!)。
画面に表示されていたのは、『長谷川係長』という、最も見たくない「名前」だった。
松田は、その嫌な予感に耐えながら電話に出ると、受話器の向こう側から、長谷川係長の、あのねっとりとした不機嫌な声が響き渡った。
「松田。お前、官舎にも戻らず、一体どこをほっつき歩いてるんだ?」
「いえ、これは、その…」
「そんなに元気なら、ちょうど良い。捜査二課からの要請で、わが一課にも応援要請が出ている。今日は年金支給日だ。その年金支給日の高齢者を狙った、詐欺の警戒の話しがある。銀行やコンビニのATM巡りで、その元気を、自主的に、存分に発散するのは? ああ、もちろん松田と、一緒にいる、若林と相沢もだ!」
一方的に電話を切られてしまい、松田たち『特別捜査班』の松田と若林と相沢は、その場に立ち尽くした。
彼らが追っていた、『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』の件も、そして追いかけようとしていた『オフィス真壁・代沢事務所』の真壁梓と支倉詩乃の二人の件も、全て中断して、彼らは、その重い足取りで、銀行やコンビニのATMを巡り、年金支給日の高齢者を狙った、詐欺が、おこなわれていないか確認することになった。
春の、その穏やかな日差しだけが、その三匹の「猟犬」たちの、そのあまりにも不毛で、そしてどこまでも刑事らしい「休日出勤」の始まりを、静かに照らし出しているだけだったのである――。
***
箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、奇妙な静寂が訪れていた。
一階の会員制ジャズ喫茶の厨房担当、水野小春が腕によりをかけて作った、温かく健康に良い昼食が、エミリア、佐藤、リリア、ヴァネッサ、サスキアのデスクにそれぞれ置かれていた。
しかし、誰もその食事に手を付けていない。
リリアがあの、『現金(戦車一両分)』の入金が終わり、銀行から帰ってくるまで、全員がその昼食を待っていたのだ。
その間、手持ち無沙汰な佐藤は、先ほどリリアが書き込んだ、あの恐るべき『ノート(新婚生活の予定)』をぼんやりと見ながら、どうしたものかと頭を抱えていた。
その時。
彼の頭の中に、今朝、夢の中で聞いた、あの「三柱」の声が響いたような気がした。
(…『居酒屋』…『薬局』…『城』…)
彼は何故か今、急にそれを聞きたくなって、隣で猛烈な勢いで仕事を捌いている、エミリアに声をかけた。
「あ、あの、エミリア。情報交換が円滑に出来るように、みんなで楽しく話せる、どこかの「居酒屋」の一角と、多くの病人やけが人を治せる手伝いができるよう、救急搬送先の総合病院のすぐ近くの、薬局の二階と、いざという時に籠城できる、城のような頑丈な施設。…その全てを兼ねた、セーフハウス候補って、どこかにあるの?」
そのあまりにも支離滅裂な問い。
配膳された昼食をデスクの隅に置いたまま、通常業務とともに『東京アノマリー・ギルド』と『ダミー・セーフハウス』の業務開始を取り仕切っていた、エミリアが、その手を止めずに答えた。
(…居酒屋? 薬局? 城? …何よ、それ。…ああ。『ボートハウス』の、ことかしら)
エミリアは、佐藤が、自分が軽く説明した『ボートハウス』の機能に、不満を抱いているのだと、勘違いした。
「健ちゃん。…その無茶苦茶な条件だと、私には『屋形船』くらいしか思いつかないけど。もしかして、私が用意しようとしている普通のボートハウスではなくて、宴会もできる屋形船を、セーフハウスにした方が、健ちゃんは嬉しかった?」
その訪ねられた佐藤が、エミリアの『真意(勘違い)』が分からず不思議そうに、「急に、聞きたくなっただけで…。ボートハウスも、屋形船も、どちらも違った、素敵さが、あると思います」と、当たり障りなく答えるしかなかった。
その二人の様子を見ていた、サスキアが、そのあまりにも噛み合わない会話に、佐藤に冷静に補足した。
「――佐藤様。エミリア様の助言された『屋形船』は、確かにセーフハウスとして『世間のイメージとの乖離性』において、隠密性は優れております。コミュニケーションの場としての機能も相応しいでしょう。また、係留地を『河川敷近くの救急指定病院』の近辺とすることで、佐藤様が列挙された『要素(交流・医療)』には合致いたします。しかし、最後の一点、籠城に関しては、あの船の構造強度および防御力から、戦略目標として不適格であると判断いたします」
そのあまりにも的確な「補足」。
佐藤は(…なぜ、屋形船の、話に…?)と、ただ戸惑い続けるしかなかった。
春の、その穏やかな日差しだけが、そのあまりにもシュールな「作戦会議」を、静かに照らし出しているだけだったのである――。




